三人組アーバンポップグループUrban Drive Familyのメンバーで、そのキャッチーすぎるお名前とは裏腹に、淡く繊細な歌声と浮遊感のあるラップが特徴的な彼女。
例によってUROROSでも別のインタビューを上げております。
UROROSでは4月17日に配信リリースされたシングル曲「ハッピーアワー」についてのお話を伺いました。まだご覧になってない方はこちらともリンクする内容になっているので、ぜひそちらからご覧ください。
ez do dan子 インタビュー「これが私のスタンス!」。一度聴いたら忘れられないシンガー・ラッパー
その「ハッピーアワー」が本当に素敵な楽曲だったのでインタビューを申し込んだのですが、ちょうど6月14日に新たな配信シングル「ランナー、その後」がリリースされる絶好のタイミングだったので、こちらではそれについてのお話と、彼女の活動の元となるUrban Drive Familyの結成についてお話を伺っております。
ez do dan子(Urban Drive Family)
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Urban Drive Family
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—― Urban Drive Familyの結成についてお聞かせいただいてよろしいですか?
ez do dan子(以下、dan子) グループには「ハッピーアワー」のトラックを作ってくれた簾ンデゲオチェロともう一人、G.O.D.ファザ子っていう女性がいて。笑
—― みんな良い名前なんだよなぁ……。笑
dan子 ありがとうございます。笑
私とファザ子は高三のときに同じクラスになった友達で、好きな音楽を教え合う仲だったんです。地元は浜松なんですけどそれぞれ違う東京の大学にお互い受かって、一緒に東京に来たんです。
私は大学でコピバンサークルに入ったんですけど、その一つ下で入ってきたのが簾ンデゲオチェロで。
うちのサークルはジャンルがバラバラで、パンクもハードロックもクラムボンもB'zもモー娘。もコピーする人もいて。笑
—― えぇーすごい……!笑
dan子 だからいいなと思って入ったんです。
私はオリジナルをやる気もなかったし、サークルでもただ歌ってるだけの人で、しかもヴォーカルなのにハモりとか出来ないんで、「音楽のことが全く分からないカラオケがちょっと上手いだけの人」っていう。笑
そのまま何もわからないまま卒業して、そこから5、6年は何もしてなかったんです。
でも簾とファザ子とはそれぞれ仲良く続いてて、変わらず音楽を教え合ったりしてたんですけど、その二人の音楽の趣味が似てるなって思ってて、会わせたら絶対話合うだろうと思って会わせたんですよ。そしたらやっぱり盛り上がって、そこから三人で遊ぶようになったんです。
全員田舎者なので東京の夜景を車で流しながら好きな音楽を爆音で聴くやつをやりたい!って話になって。それでたまに深夜に集まってレンタカー借りて、みんなそれぞれその日のために一時間くらいのプレイリストを作って、流しながらドライブするっていうのをたまにやってたんです。
—― あっ、Urban Drive Familyってグループ名そのまんまなんですね!笑
dan子 そうなんですよ。笑
簾は当時自分のバンドをやっていたんですけど、それとは別に自分のやりたいこともしたいっていうことでトラックを作り始めたんです。
それをドライブで流してくれたんですけど、ファザ子が食いついて「ラップやってみたい!私たちラップやろうよ!」って言い出したんです。
ファザ子とはカラオケでRIPSLYMEの「FUNKASTIC」を二つに分けて完璧に歌いこなすっていうことを高校からよくやってて。笑
—― じゃあそういう意味では蓄積されているスキルがあって。笑
高校生のときのような初期衝動がこのタイミングで沸き上がって来たんですね。
dan子 そうそう、そうなんですよ!二十代後半にして。笑
簾がトラックを作って、それに対してファザ子が初めてラップを書いて、それが一曲目の「Sugar Danish Girl’s Diary」になって、二つ目に出来たトラックに私が初めてラップを書いて「Bootsy On Sunday」という曲ができたりして……。
ラップグループをやるぞって決めて、曲が出来た後に初めてラップを書くという体験をしたんです。笑
ラッパーってもともとフリースタイルやってたりとか、ラップをやりたくてある程度活動してから、自分のグループを作ったり曲を書いたりすると思うんですけど、私たちは何にもやってなかったところから始まって。
~自分の呪いみたいなものが解けた~
—― さっき聞いてて少し気になったんですけど、もともとサークルでもオリジナルを作る気がなかったという。
dan子 そうですね。音楽のことが全く分からないから無理だと思ってたんです。
歌もそんなに上手く歌えないし、バンドって上手くないと出来ないって思ってて……でもそう思い込んでただけかも知れないですね。
—― もともとスタートにはトラックがあったわけですもんね。
まずはリリックを書いてみるとか韻を踏んでみるってところから始めれば良かったから、階段を登っていくような感覚でスタート出来たんですかね。
dan子 ラップをやってみたことによって、歌っぽいものも出来るようになったっていうか、思いつけるようになりましたね。
「ハッピーアワー」は私の中では歌なのかラップなのか未だによく分からないですね……。
—― 大学卒業までオリジナルを作る気も無かった人が、それを音楽で表現しよう!っていうモチベーションになったところが面白くて。
それこそ言葉だけで表現するっていうことも可能性としてはあったと思うんです。
dan子 そうですね。私はもともと小学校の頃から小説家になりたいって言ってて。
文章を書く仕事をしたいと思って高校のときからブログを書いてたんですけど、文章を書くということがだんだんプレッシャーになってきちゃったんですよ。
—― 強迫観念のような。
dan子 そんな感じです。
文章を書かなきゃ書かなきゃって思ってたけど全然書けない。それが自分のすごいしたいことが故にプレッシャーになっちゃうっていうのがずっと続いていて。
だけど、ラップは文章より気軽に書けたんです。自分の呪いみたいなものが解けたというか、思いを言葉にするのが気負わず出来たんです。
—― 音楽だと全部言わなくてもいいですしね。それでも察することが出来るというか、いろんな解釈も出来ますし。
まっさらなノートにゼロから作り上げていくよりも、音楽の中だったらある程度のルールが存在するからこそ逆にのびのび出来たのかなって。
dan子 そうなんですよ!歌詞だから書けたっていうのはあります。
このトラックに合う言葉を……とか考えられたので、おっしゃる通り出しやすかったですね。
~「この後この人たちはどういう人生を送るんだろう?」~
—― 新曲の「ランナー、その後」も聞かせていただいたんですが、「ハッピーアワー」も含めて声の重なりがすごく良いですよね。声の武器になる部分が分かってるなって感じがして。
dan子 全部私の声ですからね。簾が重ねたがりなんですよ。笑
ハモりが分からないから、簾が鳴らしてくれた音を一生懸命耳コピして、それをちょっとずつ重ねて作りました。笑
—― リズムの遊びも効いてて、言葉の乗せ方なんかも「ハッピーアワー」とは全然違うアプローチで。
dan子 そうですね、それも面白いかなと思って。
この曲は簾と相談しながら作っていて。こういうリズムで歌ってって言われた部分もあったりしました。
—― 「ハッピーアワー」と作っていく過程が違うんですね。
dan子 そうですね。テーマも決まってたし、グループのときと同じような書きかたでしたね。
—― テーマについてはライブのMCでも話されてましたけど、「駅伝」とのことで。
dan子 お正月に駅伝を見たんですけど、ランナーを見たときに「この後この人たちはどういう人生を送るんだろう?」って考えたんです。
今輝いてる、全国から注目されている人たちって大学生だとその後大人になっていくわけで、その後のことを考えてみたんですよね。
—― やっぱり根本として人への興味が始まりになっていて。
dan子 はたからみたら、めちゃめちゃ持て囃されて、でも大人になって走るのを辞めちゃって、普通の社会人になって太りだしたりなんかしちゃって……でも私はどちらもなにかをしている状態だと思うんです。
世の中だと、まるでやってる方が光でその後転落人生のように言われることがあると思うんですけど、それは違うなと思っていて。
—― うんうん。これを聴いて、よくある ”夢破れて” って表現クソだなって思いました。
dan子 ほんとほんと!歌詞にもありますけど、いつ崩れるか分からない日々をみんな暮らしてるわけで。
東日本大震災がずっと心に残っていて。私は東京にいたし、直接的に被害を受けてはいないんですけど、日々って簡単に崩れちゃうものなんだってみんなショックを受けたと思うんです。
結局走らなくなったとしても、いつ崩れるか分からないところを走っているのは変わらないし、その日々を愛して生きているっていう曲にしたかったんです。
—― 確かに……日常ってすごい脆いものなんですよね。
この「ランナー、その後」でも生きているだけでいいっていうメッセージが強く光っていて。
dan子 そうそう!その日その人が生活や日々を愛してるだけで……もう優勝!笑
それで最後に笑ったら優勝でしょって感じです。
—― dan子さんの歌は登場人物が少なくて、パーソナルな感覚がします。
dan子 そうですよね。やっぱり孤独な人に向かってなにか……言いたいわけじゃないですけど、そうなっちゃいますね。
—― どこかご自身と同じような人に宛てている感じもあって。
dan子 そう!そうなんですよ!
外国のミュージシャンの言葉で、「自分が若いときに必要だった人になれ」って言葉があって。自分がなにかするとしたらそういうことをしたいなって。自分みたいな人とか、もはや昔の自分に向けて。
あのときこういうことを言ってほしかった、とかこういう大人がいたらいいのにとか。
自分もダメダメな人間だし。でもそれもダメっていうか……ダメじゃないんですよね。社会で生きてるとものすごくダメだと思わされるけど、もともと人ってそういう風にしか出来てないと思うんですよ。
—― ダメダメなところもその人にとっては必要なものかも知れないですし。
dan子 そうですね。私は、自分がこういう風に言ってほしかったなってことを歌いたいです。
—― 「ランナー、その後」にもやっぱりそのイメージが入ってますよね。
これも配信でリリースされるとなると、全く知らない人がきっと励まされたりすると思うんですよね。それって結局めちゃくちゃ面白いし。
dan子 面白いですよね。「ハッピーアワー」も「ランナー、その後」も曲調とか歌いかたとかが違うから、どっちかから入って両方聴いたらえっ?ってなると思うんです。それも楽しみですね!
私も簾も気に入ってる作品です。意外と曲自体も明るくてノれるし。スピーカーとかで聴くと良いと思います。
—― そうですね。ビート的にもすごい気持ち良くて……これはもうまずは聴いていただいてですよね。
人への興味という話に加えると曲ももちろん、このインタビューの感想も欲しいですよね。
dan子 欲しい!がんがんリツイートしてもらって、一人一人の意見が欲しいです。感想をくれ!笑
インタビューは以上です!ぜひ感想をください!笑
「ランナー、その後」に込められたメッセージってきっとある程度の経験を得ないと書けないものだと思うんです。
インタビュー中で言及されているような震災についてももちろん、社会人としての経験や所帯を持った友人もちらほら出てくるようなタイミングに差し掛かるからこそ、ただ生き延びることの尊さや、ダメな日でも日常を過ごせることの強さにフォーカスが当たるのではないでしょうか。
"ラップなら自らの思いを書けた" とお話しされているように、経験を積んだ大人が書ける歌詞に音楽への初期衝動が凝縮されているというバランス感覚がすごく面白いと思うんです。
UROROSの方で紹介させていただいた「ハッピーアワー」についても、インタビューをやらせてもらっている側からしたら心から頷きっぱなしの内容。
ぜひ合わせて聴いて、それぞれ違った魅力を発見していただければ!
ez do dan子「ランナー、その後(feat.SudareNdegeochello)」
発売日:2019年6月14日
収録曲
1.ランナー、その後(feat.SudareNdegeochello)
Spotify / Apple Music
ez do dan子「ハッピーアワー」
発売日:2019年4月17日
収録曲
1,ハッピーアワー
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