今回のゲストはスリーピースロックバンド ビイドロ から、青柳崇さんをお招きしました!
今年に入ってからすでに配信で二作のシングルをリリースしており、
UROROSの方ではその「氷の砂漠」と「氷河期がやってくる」についてのお話でした。
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ビイドロ 青柳崇(Vo/Gt)インタビュー。”氷河期と灯台とおまじない”
そしてこちらの方ではその二曲のこぼれ話も含めつつ他の話題も。
キーとなるのは青柳さん個人の現在の思い。
それはきっとこれから様々なフィルターを通過してビイドロのネクストステップに繋がるものであると思います。
今この時代にこの年齢で音楽に対してどう向き合うか。
これからのビイドロは。
そしてこれからの時代の音楽は。
ビイドロ
青柳崇…Vocal,Guitar,Synthesizer
伊藤倫典…Bass,Voice
遠藤達郎…Drums,Percussions,Voice
2000年より活動を開始。Gt/Voの青柳崇を中心にメンバーチェンジを繰り返し、2009年に青柳、伊藤、遠藤のスリーピース編成に固まる。異常なまでに完成された珠玉の楽曲をステージで表現し続け、自主制作をふくめ、これまでにいくつかのレーベルから17作品をリリース。 その圧倒的な完成度で多くの音楽ラバーを虜にしてきた。 しかし、2010年に突然の活動休止を宣言。惜しまれつつも休止期間に入る。 2013年より活動再開。
2000年より活動を開始。Gt/Voの青柳崇を中心にメンバーチェンジを繰り返し、2009年に青柳、伊藤、遠藤のスリーピース編成に固まる。異常なまでに完成された珠玉の楽曲をステージで表現し続け、自主制作をふくめ、これまでにいくつかのレーベルから17作品をリリース。 その圧倒的な完成度で多くの音楽ラバーを虜にしてきた。 しかし、2010年に突然の活動休止を宣言。惜しまれつつも休止期間に入る。 2013年より活動再開。
ホームページ
青柳崇(Vo./Gt.)
obaketachi(青柳崇ソロユニット)Twitter
obaketachi SoundCloud
――「氷河期」モチーフの楽曲、七曲もあるんですね……!
青柳 まだ発表していない中では「氷河期ならとっくに」という曲もあって。
今まであった価値観で全てまかなおうとするのはもう遅いから先に行かなきゃいけない。だから人の揚げ足を取って笑ったりしているのはもう遅いし、誰かを傷つけてとるような笑いなんてもう遅いよ!っていう曲なんです。
――ホントに今のSNSが反映されている感じですよね。
青柳 SNSしか見てないからこういう曲になっちゃうんですよね。笑
悪いか悪くないかのどちらかだけみたいな。政治もそうですけど。
たとえそれが悪くないことだとしても悪く捉えてしまう人がいるから、そこをおもんばかって上手くやるのが世の中だし社会なのに、「悪くないことなんだから悪くないんです!」って言うのは国会答弁と一緒じゃないですか。
「もし本当だとしたらどうするんですか?」っていうのは本当のことをやってる人が責められたときに出てくる言葉じゃないですよね。
そういうことがどんどん加速していって、みんなが影響を受けるとそういう風に行動しだすし。
――SNSはまさに一部そうなりつつありそうです……。
青柳 希望に対してのやっかみめいたつっこみも多いから、シニカルさというかネガティブからのユーモアみたいなものがちょっと当たり前になり過ぎてるかなって思ってて。
僕はそういう人たちが悪いって思ってるわけじゃなくて、そういう人たちがそうなっちゃうようになってる世の中が悪いんじゃないかと思ってるんですね。
自分が世の中に出すものはあんまりそういうものであってほしくないって思うんです。
ただポジティブなことだけを言ってると「根拠は?」ってなると思うんですよね。その根拠を示すためにはやっぱりネガティブなことも見てるってところも必要なのかなって思ってて。
だから「氷河期」という言葉を使っていたりするんですけど、個人的にはもっとそこが上手くなるといいんだけどなって思ってます。もっとさらにシンプルに出来たらいいなって。
全然違う雰囲気のハウスっぽい感じで仕上げてくれて!
――そうなんですか!相性すごい良さそうです!
青柳 前の『ひろばとことば』では、自分たちでそういうことをやりたがってたんですよね。
ゴッチさんが今回『ホームタウン』ってアルバムをパワーポップのような演奏オンリーにしていたのを聴いて、エイトビートで曲を全部作ってみても良さそうだなって最近思っていて。
自分のメロディの作りかたや発想はエイトビート寄りではないんですけど、形式までは離れなくていいのかもと。
――おぉ、もう早速次の作品のビジョンがあるというか。
青柳 この二曲を経た後、逆にめちゃくちゃ低音を抑えたものとか作ったらどうなるかなとも思っていて。
いとうせいこうさんの『MESS/AGE』ってアルバムがあって、ヤン富田さんがプロデュースとエンジニアをやってるんですけど、80年代当時のヒップホップからしても破格なくらい低音をミックスで抜いてるんですよ。すごいすっきりとしてて。
――確かに軽い聞き心地だったようなのは覚えてます。
青柳 そのレコーディングのドキュメンタリーを読んだら、「低音を出すことに頼りすぎると、時代性を帯びすぎて10年後に聴けなくなっちゃう」っていうことをヤンさんが言ってたらしくて。
――はぁーそうなんですね……!音の出し方にも流行があるというか。
青柳 ありますね、やっぱり。
ヒップホップってキックとスネアがすごく重要ですけど、そういうところじゃない発想で作ってるんだぞと、音楽の発明感を生かすためには抜いたほうがいいんだと。
その考え方ってすごく痺れるし、結果的に今聴いてもすごく面白いものになってて、物足りなさが全然ないんですよ。
だから僕らもそんなにファットな音にせず作ってみたらどうなるのかなとは思ってみたりします。
――氷河期というテーマも含めて「今、ヤバくない?」って思わせられるのに、サウンドはポップでダンサブル!というところにビイドロの出す希望をすごい感じました。
シリアスなのにタッチがポップな絵というか、絵本やシニカルな児童文学とかそういうイメージです。
青柳 子供向けのものって意外とそういうの多いですよね。
「11ぴきのねことあほうどり」(著 馬場のぼる)っていう絵本も、人に当てはめるとズルさもいろいろ表現されていて、でもそれをコミカルに間抜けに表現してるんですよね。
僕もどんどんと表現に間抜けさが入っていくといいなって思っていて、基本的にはそっちの方向にずっと進んでるつもりがあります。
もともと自分はシリアスでシビアな人間ではないんですけど、深刻になりがちなんですよね。なのにすごくのんきなのでそこが出てくるといいなってのは思っていて。
――「氷の砂漠」について、息子さんが聴いてどう思うかって話もありましたが、天久聖一さんの「サヨナラコウシエン」という漫画があって。
青柳 あぁー、それ読みました!
――天久さんのトークをイベントで観に行ったんですけど、自分の子どもに見せて恥ずかしくない作品を意識して描いてみたら、いつものギャグ漫画っぽくなくなっちゃったっていう話をしていて。
青柳 まさに息子さんのための漫画ですもんね。
あれが初めてネットで公開されたときに、仕事の移動中に読んでボロ泣きしちゃって……!
「ありがとう!!」っておじいちゃんが言いながら球を投げるシーン。
おじいちゃんは天久さんのギャグタッチなのに、なんか笑いと涙がどっちも来るから……もう怖くて読めないんですよ、すごすぎて!笑
――「氷の砂漠」には「サヨナラコウシエン」にも似た希望が込められてる気がして。
ずんずん進んでいくような曲のイメージだったり、主人公に全く闇がないところも含めてすごい希望のある曲だなって。
青柳 ありがとうございます。笑
「サヨナラコウシエン」で、最後のホームランボールがパンティーに見えるシーンを見て、やっぱりシンプルさって必要だよなって思ったんです。
ビイドロももっとシンプルにしていきたくて。複雑にしていくのは気が小さいからかも知れないです……。笑
――隠れ蓑みたいな感じになっちゃうんですかね。
青柳 そうですねぇ。シンプルさと探究心の面白さっていうのが表裏一体のように思うんですよね。
こういう音楽が聴きたいっていうのが自分の中で強烈にあって、いまだにそれを誰もやってないんですよ。だから自分が音楽を続ける理由として、それを作りたいっていうのがあります。それがシンプルにすることなのかもしれないですね。
スリーピースだけで今やってることと同じことを表現できないかなって。
――ライブを見ていてもビイドロは本当に過不足ないシンプルさだと思います。
青柳 ありがとうございます。そういう意味では進化しているんですけど、身体がね、弱ってきてるんで。笑
年を取ると合理化していくんですけど、身体の衰えで合理化せざるを得ないんですよね。
――あぁーなるほど……よく聞くことではありますが、人間うまいこと出来てるんですね……。
青柳 そうなんですよ。その合理化の曲線が両方上手く合致すると自分のキャリアの中で名作が作れるんじゃないかって思っていて。
特に今回の二曲をレコーディングして、その片鱗を技術的な意味でも掴めた感覚があります。もうギター弾かなくてもいいんじゃないかとかね。笑
――もはや人力ヒップホップになりそうです。笑
青柳 ギターロックだからといって全編ギターが鳴っていないといけないわけじゃなくて、要は肝の部分にギターの一番カッコいい音が入ってれば良いんだろうと判断していて。
十年くらい前からそういう気持ちでずっと音楽を作ってるので、シンプルになっていってるのはそういう一因もあると思うんですよね。
――シンプルというとライブでも三人で鳴らせる美学をすごく感じるんですが、「氷河期がやってくる」には音源にもそれが詰まっているようで。
青柳 やっぱりどんどん減らしていきたいんですよね。鳴ってない瞬間があるのに超メロディアスみたいな。
ロックバンドとして音数が少なくて面白くて……というのを最近は考えています。
――やっぱり空白に生まれるグルーヴってすごいカッコ良いですよね。
青柳 あぁーありますねぇ。今の世の中の音楽がほぼそれになってる気がします。
トラップ聴いててもそうだし、R&Bにしてもそうだし、ずっと鳴りっぱなしみたいなものってないですよね。
James Blakeだってピアノとヴォーカルだけで、途中からサブベースが入ってきてようやくビートが来た!みたいな感じだし。笑
――もうそれくらいで良いんですよね、きっと今は。
青柳 だからロックバンドでそれをやったらどうなるのかなって思ってて。
そのくらいのことやっても面白そうだし、別にビイドロなんて何の責任もないですから、どんどんやって失敗してもいいのかなって思います。笑
インタビューは以上となります!
青柳さんと以前お話していたときに、
「インタビューって、読む側は今のその人の気分とか知りたいですよね」
と仰っていたのがとても印象的でしたので、せっかく媒体が二つに分けられたこともあって、ちょっと脱線を恐れずにお話してみました。
よかったらお仕事お待ちしております。
インタビューの企画・取材・文字起こしのお手伝いなんかもやっています。
o.hachibunme@gmail.com
なんて宣伝も挟みつつ。
今回のお話を通して、あらゆる解像度が切り替えられたような感覚です。
こんなベースラインだったんだ!なんて驚きは音楽を聴いていると結構あるあるだと思うのですが、耳でも眼でも心でも、今まで見ていたものや聴いていたものが少し違って見えるようになる感覚があります。
こんな見かたもあるのか、こういう考えかたもあるのか、もしくはどんな見られ方をするのか……。それぞれのインタビューを通じて新しい感覚が流れてきたことをきっと感じることが出来たのでは。
今回話題の中心になった二曲は各種サブスクからダウンロード出来るので、まずはこれを機会にぜひ聴いてみて下さい。
ファンタジーのようなポップなタッチで恐れることなくずんずん進んでいく主人公を描く「氷の砂漠」、インタビュー内でもあったような辛辣さをソリッドな音像で昇華させた「氷河期がやってくる」、どちらもそれぞれビイドロの魅力に鋭角に切り込んだような作品になっています!
2019年、まずはこれを聴かずして!
ビイドロ「氷河期がやってくる」
発売日:2019年3月22日
収録曲
1.氷河期がやってくる
2.氷河期がやってくる(荘子it家REMIX) (feat. 荘子it from Dos Monos)
Spotify / Apple Music
ビイドロ「氷の砂漠」
発売日:2019年1月7日
収録曲
1.氷の砂漠
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