お待たせいたしました!
大森靖子ファンインタビュー、実質最終回です。

ラストのお相手は大森靖子ファン以前から、どっぷりと指原莉乃にハマっていたすいかさん。
アイドル現場と大森靖子現場との興味深い違いを始め、ご自身が現場で感じてきたリアルな思いを洗いざらい話していただきました。


ファンインタビューで感じたことの一つに、男女の切り口の違いというものがありました。
ざっくり言うと男性は比較的客観的な分析を踏まえて大森さんの魅力を探ったのに対して、
女性は自身のプライベートと密接にひっくるめてドラマチックに大森さんを愛しているような。


今回のすいかさんに関しては、その男女両方の特徴が詰め込まれたような内容に感じます。
ただ圧倒的にこれまでのインタビューと異なる切り口も多く、中には相当な覚悟を持って公開させていただく内容もありましたので、読んだあとに様々な感情を持たれることもあるかと。

カットを検討した内容もいくつかあったのですが、彼女自身のリアルな大森さんへの(はたまたインターネットへの)向き合い方が素敵だったのでこのような記事になりました。

いつものことながらご感想お待ちしております!
それではどーぞー。


す…すいか
ふ…ふじーよしたか(音楽八分目)


ふ それでは宜しくお願いします。お酒飲みながらやるのはカオスちゃん以来です。笑

す えっ、そうなんですか!?笑

ふ まあせっかくの機会なのでざっくばらんに話して下さい。

す そうですね!自己紹介すればいいですか?笑

ふ 分かってる!笑 お願いします。


す 今24歳で、普通に会社員として働いています。若干クリエイティブ寄りの会社なんですけど、私は何も作ってなくて。あとは…。

ふ いろんな分野でのオタクの顔もありますよね。


す アイドルオタクと並行して靖子ちゃんの追っかけをしていますね。
だから正直、このインタビューの半分くらい指原(莉乃)さんの話をすることになっちゃうかもしれないんですけど。笑
……指原さんの話をすればいいですか?

ふ いや、一旦大森さんの話をしましょう!笑
まずどこから大森さんに入ったのかなって。


す 靖子ちゃんにハマったのはちょうど3年前、2014年の夏です。きっかけは「夏の魔物」の動画で。

ふ それまでは、知ってはいたけどっていう感じですか?


す そうですね。元々可愛い女の子やアイドルが好きで、玉城ティナちゃんを見つけたところからミスiDを知って、縷縷夢兎の東佳苗さんを知って、その辺から靖子ちゃんの情報がちょっとずつ流れてくるようになって。
TOKYO IDOL FESTIVAL 2013の動画も話題になってましたし、ブログでもアイドルに関する話をするかと思えば、どう生きていくかみたいな話とかもしていて、面白いなと思ってはいたんですけど。
音楽を聴いてパッと判断出来るタイプじゃないので、なんでも好きになるまでに時間かかっちゃうんですよ。
前に好きだったのが、椎名林檎とか東京事変とかRADWIMPSとかBUMP OF CHICKENとかで、どれも知ってから好きになるまで一年以上かかっているんですよね。
靖子ちゃんもそのパターンでした。

ふ 今挙げた人たちも結局どっぷりハマった経験があったんですか。

す ハマりましたね。特に椎名林檎さん。
最初に友達にすすめられたのがたぶん小六くらいで、ハマったのが中二くらい。笑

ふ そのハマるまでの間に飽きたりはしなかったんですね。


す いや、そもそもそこまで興味が湧かないというか。好きになれそうって思いながら聴かないみたいな。正直靖子ちゃんも最初はよく分からなかったんですよね。
TIFの動画も明らかにアイドルオタクしかいないのにみんな静かに聴き入っていて、なんとなく凄いことは分かるんです。でもそれまで弾き語りをあんまり聴いたことがなかったので、なんか凄い人だっていう印象だけ持ってそのままで。
ハマりそうなのにハマれないまま一年経過したんですけど、2014年の7月くらいの、夏フェスでめちゃくちゃ戦ってた時期のブログがすごい面白いなって思って。そろそろハマれる気がするって思ってたら、あの「夏の魔物」の動画が公開されて、見たらもう良すぎて!

ふ なんかハマるべくしてハマった感じがしますね、そのタイミング。

す 待ってた!やっと好きにならせてもらえた!みたいな。笑
「夏の魔物」の動画って、「ファンとキスした」とかゴシップ的に広まっていたじゃないですか。それがマジでどうでもよくなるくらいライブがかっこ良かったんですよ。
(自分が)アイドルオタクだから、ファンとキスするなんて気持ち悪く感じるはずなんですけど、それがどうでもよくなるくらいその場面も綺麗に見えるし、全部美しくてかっこ良かった。
さっきまでそんなことしてたのに、弾き語りになった瞬間みんな静まりかえる空間掌握力も凄かった。

ふ アーティスト本人の魅力ももちろんですが、周りの雰囲気も含めて好きになった感じですか。
曲がどうのとかよりも、周囲のオーディエンスがこうなったからやべぇ!みたいな。

す 一番は自分がそれに感動したってところですかね。
あーはいはいキスしましたね、って見るの止めると思ってたんですけど、そのまま全部見ちゃったんですよ。
最高!って思って、全然曲も知らないのに、それを三回繰り返して。

ふ 三回!スイッチが分かりやすく切り替わるんですね。


す そうですね。それでこれは直接ライブ見なきゃと思っていたら、その後すぐにTIFがあったんです。
指原さんが所属しているHKT48とミスiDが出るんで行こうかなとは思ってたんですけど、そこに大森さんも加わっちゃったんで絶対に見に行こう!と思って。

ふ 初めて生で観たそのライブはどうでしたか?


す めちゃくちゃ良すぎてあんまり覚えてないです。笑
すげえ良かったから音源を買わないといけない、お金を落とさないといけないって思って、物販に行ったんですよね。

ふ 良いオタクの反応。笑


す その頃はまだアイドルフェスに女子が一人で行くことって珍しかったんですよ。だから「指原莉乃」って書いてあるタオルを巻いた女が一人で来たから靖子ちゃん結構ビビってて。笑

ふ まあそうでしょうね…。笑


す 指原さんがスキャンダルで発した言葉を曲に入れてるから(「Over The Party」 "エッチだってしたのにふざけんな" )、指原オタが怒りにきたんじゃないかと思ったのか結構ギョッとされたんですけど、「あっいやっファンです、本当に。CDも買ったんです」って弁解してチェキを撮ってもらったのが最初の接触です。
そこからは結構ライブに行ってますね。メジャーデビュー直前のタイミングだったので、こんなに近くで観られるのは今だけだと思って。



~同じ"好き"なのに対等に見てもらえない~



ふ 2014年とかのその頃、女の子一人でアイドルフェスに行くっていう人はあんまりいなかったって話がありましたけど、大森さんのファンもやはり男性が多かったですよね。
大森さんもどんどん女の子のファンを獲得してきた中、個人的には同性のファンを獲得しないとアーティストの人気って頭打ちになるんじゃないかって思っていて。


す 靖子ちゃんには爆売れしてほしい派なので、軽い気持ちで「大森靖子ちゃん好きー」って言っちゃう女子高生がたくさん出てくればいいなって思ってます。笑
届かなくちゃいけない人がまだいっぱいいるから売れてほしいなって思うんです。
現場の話で言うと、アイドル現場と靖子ちゃん現場を比較することが多くて。

ふ めちゃくちゃ気になります。その違いっていうとなんですか?

アイドル現場だと、どんなに人数が増えても女子はマイノリティなんですよね。特に感じてたのは2012・2013年くらい、指原さんのスキャンダル発覚から総選挙で一位を取る前くらいのところで。
現場のオタクと話す機会もあったんですけど、この現場は俺たちのものっていう意識が凄い強くて…「あらあら、女の子が来たのね。ようこそ僕たちの城へ!」くらいのノリで見下されるんですよね。マウントされるというか。
同じ"好き"なのに対等に見てもらえないっていうのがあって。

ふ 可愛がられて"しまう"というか。


す そうです。指原さんのどこが好きかって話の中でも、いちいち「"女の子的"にはどう思うの?」みたいに言われてすごく憤慨していたんです。
でもこっち(大森さん現場)に来たらそれは本当に無かったですね。
靖子ちゃんの現場に行き始めたときは結構おじさんが多かったんですけど、だからと言ってマウンティングしてくるわけでもなく、ここは平等だ!と思って。

ふ それは今でも変わらず?


す 今もそうだなぁ。ファンのどの属性が上とかなくて。
これがアイドル現場だったら、「いや俺はさぁ、あの子がアイドルじゃなかった頃から友達で…」みたいな話をいきなりしてくる人もいるんですけど。笑

ふ うわぁ…。でもその違いはめちゃくちゃ面白いですね。

す 全然違いますよ、本当に。



ふ 最初にすいかちゃんがハマり始めたところから考えると、大森さんがだんだん肯定してくれてる幅が広がってきた感じがあると思うんです。女の子から始まっておっさんも踏まえてやがてはリスナー全員を肯定するような。
それをリアルタイムで経験して、そういった変化をどう捉えていました?

す 靖子ちゃん自身も「女子を肯定する」っていう言葉を使ってはいましたけど、歌っていること自体は別に女子に限った内容ではなかったと思っていて。
意識的にやった部分もあると思いますけど、靖子ちゃんがたまたま女子として生きてきたからそのことを書けただけじゃないかなって。
逆に今の方が、ペルソナ(人格)を具体的に設定した曲って多いと思うんです。学校の話とか地元の話とか。
昔は女子を肯定してたって話でしたけど、昔の曲も割とどんな属性の人にも通ずる歌詞じゃないかなって。なので私も聴いて救われた部分も多いんですけど、女子としてというよりは生きていく上で救われた気持ちの方が大きかった。
最近女子でもおっさんでもない人が、「やっと自分に向けて歌ってくれた!」って言うのを見て、あっ今まで対象外だと思ってたんだっていう感じですね。

ふ あー、まさに自分は以前は対象外だと思っていたんです。
ペルソナを設定するって話をもう少し詳しく聞きたいですね。

す「マジックミラー」とか「ドグマ・マグマ」もそうですけど、マクロな視点で、まるっと全部オッケー!ってわかりやすく肯定する曲が増えたっていうか。

昔はペルソナがどうとか関係なく、日常にあるけれど誰も歌ってくれなかった細かい部分をリスナーが聴き集めた結果、「そんなところを拾ってくれるんだ!」って勝手に靖子ちゃんに肯定してもらえたと思っちゃう、みたいな部分が大きかったと思うんですよね。だから女子かどうかとかあんまり関係なかったかなと思っていて。

靖子ちゃん自身のスタンスは昔から変わってないと思うんですけど、最近は言いたいことを「はい、これです!」って一曲にパッケージングした曲が多いから、どうやったらまだ届いていない層に届くのか、どうやったら疎外感を持っている人にも「あなたに向けて歌っているんだよ」って伝わるのか、色々と実践しているんだろうなって思いながら見てます。

ふ ライブでも大森さんが見にくい位置のところまで視線を配るっていうのと似てる感じもしますね。それを歌詞で実践してるような。


す 『kitixxxgaia』はそれをめちゃめちゃ広げたかったんだろうなって。
昔の方が良かったって思うファンの人もいると思うんですけど、そういう人たちが否定されがちなのにはモヤっとしていて。

ふ うん、確かにそういう風潮もありますね。


す 何も聴かずにただ否定したいだけの人は嫌なんですよ。
ちゃんと聴いた上で昔の方が良かったと思う人がいても別にいいんじゃん?って思うんですよね。
でもそれで昔に戻れとか言うのは違うと思いますけど。



~ちゃんと感じた分だけ好きでいたい~



す 2017年になってから、靖子ちゃんが「あなたたちの人生を肯定します」とか「最高は今」っていうフレーズを使ってるじゃないですか。
それって靖子ちゃんが覚悟を決めて腹をくくった上での言葉で、「やれるかどうか分からないけどやるから!」っていう宣言で。

ふ あぁ、そうですね。大森さん自身の覚悟の話ですね。

す そうなんですけど、ファンまで何か発表されるたびに「最高は今だな」って言い出して、靖子ちゃんのことをとりあえず全て肯定する傾向にはちょっと納得いかなくて…。笑

ふ あのう、僕も正直その"ファッション肯定"みたいな風潮、あるなとは思っていて。
靖子ちゃんの言ってることが正しいとか間違ってるとかではなくて、言った方向に全て向かう感じになってるのはどうなのかなって思う部分もあるんですよね。

す モヤついちゃうんですよね。
いや、別にそう思ったらそう思ったで良いんですけど…。

ふ 君は本当にそう思ってるのか?っていうところですよね。


す そう。そういう風に思っちゃうときがあって。

ふ ファンの内側の同調圧力というか、「こういう部分はどうなんだろう?」ってことが言えない風潮なんじゃないかっていう話も以前出たりしました。


す 私はわりといい子ぶっちゃうんですよね。
わざわざネガティブなことは言わないんですけど、正直微妙だったなってライブでも、みんなが毎回「今日のライブは最高だった」って言ってるの見ると、本当かなあ?って思っちゃって。
ちゃんと感じた分だけ好きでいたいって気持ちがすごくあって。正しくありたいというか。自分が思ったことに対してもそうだし、別に良いと思ってないのに良いって言うのはめちゃめちゃ失礼じゃないですか。
それも指原さんの話に繋がるんですけど…ここから始まってもいいですか?笑

ふ どうぞどうぞ。笑




す 指原さんを好きになってもう七年経つんですけど、最初の五年くらいはずっと指原さんが叩かれてる状態でのオタ活だったんですよ。

ふ 叩かれてるイメージは確かにありますね。その時は特に。


す ファンも「盲目な信者だから指原が何しても良いって言ってる」ってよく叩かれてて。
でも私は指原さんに対して本当にいいなと思ったから褒めているし、元気を貰ってるって気持ちがすごいあって。

ふ 僕は正直すいかちゃんは信者だと思ってました。
信者って熱狂的に、「とにかく良い!」みたいに言う人なのかなとざっくり思ってて…。でもそうじゃないんですね。

す と思ってます。
熱狂することと信者ってまた違うかなって思っていて。
義務的に好きでいるのは絶対嫌だと思ってるんです。

ふ そもそも指原さんの何に惹かれたんですか?


す 最初は顔が好きだったんですよ。猫っぽい感じが。
当時まだガラケーだったので自撮りが上手い子が少なかったんですけど、あの子自撮り上手いんですよね。笑
受験勉強の合間に、AKB流行ってるなぁくらいの軽い気持ちでいろんな子のブログ見てて、そこで見つけたのが指原さんだったんです。
文才もあるし、アピールはしないけど賢い子だなって。あと同い年なんですよね。

ふ あ、そうなんですか!

す あと端っこでもめげないところとか、チャンスを全部モノにしていくところとか。
マイナスをいかにプラスに転化するかをずっと考えてるタイプで。

ふ そういうところを見て推し始めたと。
マイナスというと確かに指原さんは逆境ばかりなイメージもありました。


す 多いですね。最初はへたれキャラだったんですけど、いつの間にか強い女みたいになってて。
同い年の子が登り詰めていくのを見せてもらえて、ずっと面白いんですよね。だから飽きない。

最初に総選挙一位をとった年は会場にいたんですけど、会場の空気が凄くて。
「本当に指原が一位取っちゃったの?なんで?」ってざわざわしてて、みんな唖然としてて。

「恋するフォーチュンクッキー」のヒットで、指原さんを褒めてくれる人も増えたんですけど、"スキャンダルで左遷された邪道の指原が一位になったから次は王道の子を一位に…"っていう盛り上げ方を、まさかの運営が「打倒指原!」みたいなノリでやってて。
指原が一位は嫌だから他の子に投票するって風潮もあって、ヒール扱いされて。
「AKBグループとして指原がセンターなのはよくない」とか正論風に叩いてくるんですよね。その辺りから、アイドルらしさってなんだろうって疑問に思って、地下アイドルとかを観に行くことにしたんです。

ふ えっ、地下アイドル?急に話が…。笑


す 正論風に叩いてくるけどこいつらAKB以外のアイドル知らないじゃん!って思ったんですよ。
そもそもAKBも正統派アイドルじゃないんですよね。だから指原さんを叩く根拠にしてるアイドルらしさってなんなんだよ!って思って、叩いてくる人よりいっぱいアイドルを知った上で指原さんが一番好きだと思えれば自分の中で納得が行くと。
お前らが何を言おうが私は好きだからどうでもいい!って思えるように他のアイドルを観に行って。

ふ それこそ指原さんが逆境を乗り越えてきたように、指原さんを好きなことに対する周りからの批判という逆境を乗り越えるために…笑


す そうです!笑
あいつらが知らないアイドルをとにかく知ってやろうと思って、とにかくいろんなアイドルを見て。それでミスiDも見つけたんですよね。

ふ 地下アイドルを探す延長で。


す ミスiDはアイドルという枠組みに疑問を投げかけるオーディションだったから、それを見たらなんか分かるかもと思って、どういう子がどういう軸で評価されるのかを見ていて。

ふ なるほど、自分のニーズにミスiDのコンセプトがフィットした感じなんですね。


す そうですね。なので指原さんを好きじゃなかったら靖子ちゃんを見つけてないんですよね。変なつながりですけど。笑

ふ 確かに面白いスタートではあります。
そのミスiDのグランプリの遍歴ってどういう風に見てたんですか?
正統派美女もいれば変化球と言ってもいいような女性も受賞していたりして、それこそアイドルってなんなの?っていう疑問を揺さぶられたのかなって思うのですが。


す そもそも(アイドルの定義を)私は決めたくなかったんです。
邪道だからアイドルじゃないって言われることが嫌だったから、この子のこの在り方もアイドルだよねっていう確信を持ちたかったんですよ。いろんなアイドルを見て、ほら!そうじゃん!って思えたので、それで落ち着きました。笑

ふ アイドルっていう意識をちゃんと持った上で活動してくれればそれで良いと。

す そうですね。
アイドルに理想を持ってアイドルになる子もいれば、アイドルの枠組みを媒介にして好きなことをやる子もいるし、逆にアイドルへの理想が強すぎて自分は違う方向で戦うっていう子もいるし。
それぞれのやり方に魅力を感じてファンがついているなら全部正しいじゃんっていう気持ちです。

ふ やっぱり芯があるかどうかが重要なんですね。
なかにはアイドルに"なっちゃった"みたいな子もいますよね。


す それは人によりますね。周りから魅力を見出されて、その軌道に乗れるのも才能だと思うんですよ。

ふ あぁなるほど。それを見てすいかちゃんは推せるかどうかになってくるというか。


可愛いなって程度ですね。推せるのは指原さんだけなんで!

ふ そうか、失礼しました。笑
アイドルの子本人の意識もそうですけど、大人がどうサポートしていくかっていうのも観点になるんですね。


す なりますね。パッケージで面白いかどうかで見ちゃう。

ふ ブクガ(Maison book girl)とかはまさにそんな感じですね。


す そうですね。パッケージで全員で組んでいくみたいなのが良いですよね。運営が足引っ張るとかその逆とかは嫌ですね。



~私たちが外側だけ見てちやほやしてしまった結果~



す 靖子ちゃんも「音楽だけやってても誰も見てくれなかったじゃん」って言ってて、それがすごい染み付いてて。
アイドルオタクの耳に届くことをしたり、可愛い格好をしてみたり、そういう自己プロデュースでフックを付けて届けてくれたから、私は気付けたんだなって。
それを考えると、今の外へ広げていくやり方は否定出来ないし、売れてほしい。もっと届いてほしいなーって。

ふ 別の人ともこの話題になったんですけど、音楽だけじゃなくてブログだったりコラムだったり言葉を始めとした、自分を発信できるもの全てを武器にしているって話もあって。


す その武器が刺さった先にちゃんと良い曲があるのが重要だなって思います。
面白い可愛いだけで終わらせないで音楽で圧倒してくれるから成立するのであって、ハッタリじゃつまらないし、こっちも続かないですよね。

ふ 地下アイドルをご覧になられてるから分かると思うんですけど、ハッタリだけの子もいたりしますからね。


す そうですね。そういう子は自撮りだけ保存して、じゃあねって感じで。笑

ふ ははは!笑


す どうにかやっていこうとする意思を感じて、見ていて面白いからお金を払おうってなるんですよ。だからブクガとかはライブも観たいな、接触とかしなくても音源買いたいなって思うんですよね。
私たちが外側だけ見てちやほやしてしまった結果、「大森靖子のファンは信者だ」とか言われて本人の評価が下がるのは嫌なんです。
逆に「最近ちやほやされてるから曲聴いてみたけどそうでもねぇじゃん」って思われるパターンも嫌だから、(靖子ちゃんには)これからも良いものを見せて欲しいなっていう希望がある。



ふ 大森さんをそんなに知らない人に、大森さんのことを伝えて好きになってもらうためにはすいかちゃんだったらどうしますか?


す えぇー!なんだろう…!

ふ 今の話に出たような、名前だけ知ってる人とかイメージだけ持ってる人っていっぱいいると思うんですよね。


す いやー…それは未だに分かんないんですよね…!
でもこの間の総選挙で靖子ちゃんとファンの方々が指原さんに投票してくれた流れも、靖子ちゃんを広めようと意識しているところもあって。
ファン層が被らないからあんまり意味ないのかなって思ったりもするんですけど…。

ふ 指原さんをフックにして大森さんの名前を広めるというか。


す そうです。好きになってくれるかは分からないけど、アイドルの枠を超えていくっていうのは二人の共通点だから、「大森靖子って名前見たことあるな」とか、「指原さんに投票してくれた人だな」とか、少しでも心理的距離が近くなればいいなって。

ふ 最初の壁を削る作業にはなってると思います。
すいかちゃんが言ってた人だ!って思って見るのとそうじゃないのとはイメージが全然違うと思うんですよね。


す 今回の総選挙で投票してくれたファンはほぼ顔知ってる人だし、めちゃめちゃ身内なんですよ。
でも友人が投票してくれたって言っても指原ファンには響かないから、大森靖子ファンが投票してくれた、ってあえて(大きくして)言わないとダメだと思って。
指原ファンに向けて、オタクでなくてもこんなに指原さんを応援してくれる人がいるんだよってことを知ってもらいたかったんです。
togetterでもそれなりのPV数稼いだし、曲を聴いてくれた指原ファンもいたから良かったなって。

ふ それって逆の意思はなかったんですか?
大森オタに指原さんのことを好きになってもらいたいっていうのは。


す だから指原さんの話を常にしてるところはありますね。
靖子ちゃんファンはなんでも面白がりたい欲が強い人が多くて面白いなと思っていて。

よく知らないのにわざわざ興味を持ってこんな面倒くさい投票してくれるんだって。

ふ 行動力は本当に強いですよね。

す 行動力と乗っかり力ですかね。ほんと面白いですよね、みんな。笑

ふ その話で言うと、ファンの界隈の集団の強さってここ最近で結構強くなってきたと思うんです。


す そうですね。身内感のある人が増えたっていうか。

ふ 強いオタクが強いまんまそれぞれでかくなってる感じがして…。笑
強い人は苦手だわっていう人ももちろんいるでしょうけど、その強いまま増えていくっていうのはこのコミュニティの面白いところなのかなって。


す 壁を作る気がないんですよね。「面白いね!来いよ!」みたいな感じ。笑

ふ 壁を作る気がないっていうのはなぜだと思います?


す 自分の大事にしているものを踏みにじられた経験がある人が多いのかなと。
だから自分と違うものは排除するより受け入れた方が絶対面白いでしょって意識が強いんじゃないですかね。
人はそれぞれ違うっていうことを当たり前の感覚として持ってる人が多いからかなって。
いろんなことについてちゃんと考えてる人が多いなって思います。疑問を持てるというか。

ふ 見た目とか世代はみんな本当にばらばらなのに、精神性ではどこか繋がってる部分があるのかなって。
それを探りたくてファンインタビューを始めた節もあるんですけど…みんな考えすぎる節もありますよね。笑


す そうですね。笑
でもそこを拾ってくれるのが靖子ちゃんの歌だったりするから、やっぱりみんな靖子ちゃん好きだよねって。



~申し訳ないです、良いものに対して跳ね返せなくて~


ふ さっきの指原さんの話とかぶりますが、やっぱり大森さんも逆境を乗り越えてくるようなイメージがあって。


す かっこいいですよね。二人とも腹くくるからかっこいい。
私と同じようなもやもやを抱えていたのに、それぞれの完成形まで持っていってると思えるのが靖子ちゃんと指原さんで。
自分の気持ちを真っ向から否定された経験を、活動を通して肯定してくれるというか。自分しか思ってないんじゃないかってことを言ってくれるとかそういうことが多いですね。
大学二、三年ぐらいが色々あって闇深い時期だったんですけど、日常的にいろんなことを軽視されている感覚があってしんどくて。
人と人が向き合うってどういうことなんだとか、好きってなんだろうとか、適切に好きでいるってどういう状態なんだろうとかひたすら考えてて。

ふ すいかちゃんは関係性を考えること多いですよね。
アイドルとは?とか好きってなに?とかもそうですけど。


す 考える時間は長いんですけど、あんまり決められないんですよね。
だから自分が本当に思ってることってなんだろう、って考えるしかないというか。

ふ 関係性を考えて結局自分を振り返ると。


す 答えは出ないんですけどね。笑

ふ そうですよね、もはや哲学の領域だし…。笑

す 生きるのめっちゃ疲れますよね…。
(近くに来た店員に)ウーロンハイ下さい!笑



す 結局は納得したいんですよね。
"自分がそう思った"っていう確信を持って何かをしたい。

ふ 今まで指原さんとか大森さんとかを引き合いに出して芯のある人が良いっていう話になりましたけど、たぶん自分の理想もそこなんじゃないんですかね。
判断するまでに時間がかかるからこそ、判断した後って強固なものになるんじゃないかなあ。


す あっ、それはそうですね。でも延々と悩んでます。延々と迷ってる。笑
疲れるんですよ本当に!でも止められないんですよね。

ふ 自分がこういう人になりたいみたいな理想ってあるんですか?


す なんだろう…。今は普通の人生みたいなレールにギリギリ乗りつつ、でもそれを疑う視点って大事だよって人に教えられつつ、はみ出せない人生を送っているので…。笑
こうありたいと思った方向に進んでいく人にはすごい憧れがあります。だから指原さんや靖子ちゃんにも憧れるし、普通の会社員だけど創作活動をしている人とか、作らないと生きていけない人には憧れと劣等感もあります。

ふ 劣等感。


す デザイン系の家庭なんです。父親がデザイナーで、母親も昔はそうで。弟は美大生で自分で人脈を作りながらCDのジャケット作ったりして。妹はまだ高校生なんですけど、超絵上手くて。
自分は取り組んだけど出来なくて仕方なく普通のルートに乗っちゃったっていう意識が強いので、コンプレックスがあるんですよ。創作意欲を持ち続けられる人に対して。

ふ その話詳しく聞きたいですね。


す 親がそういう仕事だったので、芸術っぽい仕事は物凄く突出したセンスがないと出来ないって意識が物心ついたときからあったんですよ。自分にはそれがないから出来ないって思い込んでて。

ふ やっぱり自分も表現する側になりたい気持ちはあったと。


す ありましたね。小さい頃は美大に行くと思ってました。

ふ それはもう過去形として完全に振り切れてるものなんですか。

す あーうーんえーっと…分かんないですねぇ。

ふ 大森さんのファン界隈の話とも繋がりますけど、いろんな表現をされる方が多いなかで、すいかちゃんはその欲はあるんですかね。


す 欲…はあるんじゃないですかね。
色々考えた結果、みんなが関わってない界隈を繋ぐとか、宣伝するとか、こういう人のこういうところが良いって意識的に言うとか、そういう方向に振れてるって感じですね。

ふ そっちのほうが自分に向いてるというか。


す それならまだ貢献出来るんじゃないかなとは思ってて。だからそれが出来る人にも憧れがありますね。
作りたかったら作ればいいじゃんって話ですけど、作ることへの挫折があって。

中高は吹奏楽部で打楽器をやってたんですけど、本当に下手だったんですよ。
靖子ちゃんとか指原さんが出したものに対して、良いと思わないものを良いと言いたくないっていう話にもその経験が繋がってて。
良い演奏が出来なかったなって日に、なんとなく惰性で「良かったよ」って言われるのがすごい嫌だったんです。

ふ あー…吹奏楽部あるあるですね、もはや。笑


す だから自分が客に回ったときも、いくら好きな人でも良いと思わないものに良いって言うのは失礼だと思う節にも繋がっていて。

ふ 僕も吹奏楽部だったんですけど、共感するところありますね。
それで繋がってるのか!って腑に落ちました。


す あれだけの時間を費やして上手くならなかったので、自分はステージに上がる側じゃないって思って。
大学ではファッションショーサークルに入ったんです。ファッションが特別好きな訳じゃないんですけど、可愛い子が好きなので、人を可愛くするのに関われるのは良いなと思って。
ファッションショーだと作った人の名前も顔も出ないから、私が作ったから褒めるっていうのが無くて。
単純に服が良かったから良いって言ってくれるのがめちゃめちゃ嬉しくて、こういうことじゃないか?って思って。
モデルさんとこのポージングが良いんじゃないか、この歩き方が良いんじゃないかって話し合って作り上げたので、モデルさんの振る舞いも含めて作品って感じがあって。

ふ それは相当やりがいあることだったんじゃないですか。


す ありましたね。明らかに私の友達が書いたアンケートに、私の服があんまり良くなかったって書いてあって、めっちゃ嬉しかったんですよね。悔しいけどちゃんと見てくれた!と思って。
で、服も作ってみたけど、デザイン性が高いものや既視感が無いものは作れないと分かったので、作り手じゃないなとも思ったんですよ。

ふ そういう意味では現実を知ることができたというか。


す そうですね。やりがいはありましたけど、私は出来るタイプじゃないなって悟りましたね。
絵もそうですけど上手くなりたかったっていう憧れはすごいあります。だから「やってみりゃ出来るよ」って言われるのムカつきますよね。笑
やったよ!って。笑

ふ その挫折感っていうのはすごいよく分かります。自分も挫折を繰り返して結局これまでやってきたこととは全然関係のない職業に今就いてますし。
ある種、井の中の蛙であっても続けることって大事なのかなとも思いますね。

す 続けることが出来るのも強さですよね。偉い。みんな偉い!と思っちゃいます。
その挫折感は未だに拭えないです。すごいと思えるものを自分は作れないから、それを作れる人を追っかけている感じですかね。
でもやっぱりいくら良いものを見ても、自分でその穴を埋めないとどうしようもならないところもあって。それは何かを作るとかじゃなくて、仕事とかでもいいんですけど、それが今欠落しているから結構しんどいというか。だから今自分をどうにかしたいんですけど…。

ふ うんうん。どうなりたいんですかね?


す まともに仕事したいですよね。笑
いやしてるんですけど…ダメなんですよねぇ…。周りの人たちはめちゃめちゃ頑張ってるのに、自分がそこにいる意味があるのかっていう。

ふ でも会社の中でそれを考えるのは結構酷なことじゃないですか?
正直ほとんどの人が、誰にでも出来る仕事を自分なりに工夫して歯車を回しているような感じがしていて。
自分がその歯車の仕組みを考えるとか歯車の軸そのものを作り出すっていうのはなかなか無いと思うんですよね。


す 確かにそういう会社だったら歯車を上手く回しているっていう納得感があるんですけど、初年度から任せてくれて自分で考えて動かないといけない会社で。今三年目なんですけど、下に入って来た子がガンガン先陣切って活躍してて。
ものを作る側じゃなくて、その良いものを広めていく仕事についたはずなのに、広める側でも挫折してるんですよね…。人生相談みたくなってきちゃった。笑

ふ いや、でももはやファンインタビューはそうなりがちで。笑

靖子ちゃん、「登ってこい」って言うじゃないですか。それに向かって頑張っている人は偉いなって思います。申し訳ないです、良いものに対して跳ね返せなくて。ただただオタクなんだな自分は、と思います。
そのエネルギーを何かに昇華したい気持ちがありながら、ただただ死にそうなところを死なないようにしてもらってるだけというか。笑

ふ 大森さんのライブを観終わった後、何かしたがる人って多いじゃないですか。それこそ創作意欲を刺激するというか。
すいかちゃんは観終わった後どうなるんですか?


す ただただ咀嚼してますね。笑
良かったなー…って。

ふ でも本当はそういう人ばっかりなはずなんですよね。ただ何かをする人が目立つというか。


す そうなんですよね!「ライブ楽しかった、明日も頑張ろう!」で良いはずなのに。

ふ それなのになんかさらに頑張っている人を見てしまうから、挫折に繋がってしまうという…。笑


す ありますね…。
っていうか明日からも頑張ろう!って言ってる人に対しても挫折してますね。笑
まじ明日辛い!次のライブ全然すぐ観たいわ!って。笑



神様問題もありましたよね。

(『kitixxxgaia』のコンセプトである"神様"という言葉を巡って一部のファンが疑問を投げかけたことがあった。大森靖子を神聖視するのはどうなのか。神と崇めるファンの風潮はどうなのか)

ふ あー…そのときはどう考えてました?


す 私は神様だと思ってはいけないって考えでした。

というのも、アイドルって幻想を押し付けられがちなので、それが溜まっていって「私も一人の女の子なのに!」ってキレるパターンが多いじゃないですか。
だから舞台に立ってる人はすごいものを見せてくれるけど、それは自動的に生まれたものじゃなくて彼女が頑張って作ったものであって、作品を作る上で辛いと思うことも必ずあるぞ、ファンがこうあってほしいと思ったからってそれは正しいわけじゃない、とか言い聞かせながら応援してきたんです。

なのに去年の10月くらいのインタビューで「神かメーテルになりたい」って靖子ちゃんが話しててすごいびっくりして。
それまで靖子ちゃんが神様って呼ばれることに関して、いいんだけどいいのかな…自分はあんまり神様って言いたくないな、って思ってたんです。
それなのに「神になりたい」って発言が出たから困ったんですよね。靖子ちゃん、神様になりたくないでしょ?って思ったんですよ、正直。
でもそこまで腹をくくらないともうこれ以上は上に行けないと考えてるのかなとも思って、自分に出来ることはとにかく好きでいるしかないなと。

その三ヶ月後くらいに『kitixxxgaia』のタイトル変更の話があって、簡潔なアルバムの説明もされて。
アイドルや靖子ちゃんを神聖視するのはよくないと思ってたから、「一人の人間として見てますよ」っていうスタンスでいたけど、いいオタクぶってるだけでなんだかんだ神聖視してるじゃんって洗い出された感じがして。
でも結局靖子ちゃんが言いたいことって、「君と映画」でも言ってるようにいろんな神様がいていいんだよってくらいのハードルだったんで、別に誰も間違ってないんですけど。

ふ そうですね。でも確かに大森さんのことをそれこそ唯一神のように神聖視している人もいるし…。


す でも積極的に「靖子ちゃんは神様!」って言うのは良くないというか、ちゃんと一人の人として見なければならないっていう気持ちもあるんですよね。

ふ ファンのスタンスとして。


す そうです。でも靖子ちゃんの気持ちをそもそも聞いてないじゃんっていうのと、そこまで大きい神様っていう意味で言ってないだろうっていうのもあり…。

ふ 神の認識が違うんですよね。
神っていう一単語でも宗教によって意味合いが全く違ってくるのと同じように、大森さんの思う神とそれぞれの思う神がバラバラになっちゃってただけで。
偶像崇拝なのか、唯一神なのか、もっとカジュアルな神様なのか…。


す そうですね。だからどっちも分かるんですよ。
「神」っていう言葉が軽くなってきている今だから、そういう軽い神様っていっぱいあってもいいんじゃない?私もそれでいいよ、っていう靖子ちゃんの気持ちも、「神」っていう言葉を使うことで外野から宗教的な界隈だって思われるのを嫌がるのも分かるからなんか。笑

ふ すいかちゃん的にはやっぱり「君と映画」に出てくるような重さの軽い神様だと思ってるんですか?大森さんのことを。


す うん。生きてるし!

ふ それを「神」っていう言葉にすることでいろんな語弊が生まれちゃうことが怖くて、言わないようにしてると。


す 言わないし、自分の中では結局神聖視しちゃってると思うんですよ。
良いものを出してくれるって期待しちゃうし、自分の理解出来ないものを出されたらヘコむし、こうあってほしいっていう何かしらの神聖化をしているんですよね。でもそれが強すぎるのは良くないと思ってセーブをかけてるんです。
でもなんだかんだ絶対好きでいるんだろうなっていう信頼…というか重みがあって…。笑
ちゃんと好きだと思って好きでい続けたいという気持ちはあります。ちゃんと見ていたい。

ふ 他の人にもした質問なんですけど、それって仮に学生時代に靖子ちゃんに出会ってたら、その"好き"はどうなってたと思います?


す あー(神!って)言ってるんじゃないですか?だって言ってましたもん、「椎名林檎まじで神!」って。笑
でも今の私が神聖化するのを受け入れたらただの厄介オタクになっちゃうと思う。笑

ふ それって年齢なんですか?それとも推してきた経験なのか。


す 精神性じゃないですかね。スタンスというか。



ふ これまでインタビューしてきて思ったんですけど、みなさん相互関係で好きになってるんですよね。
これがカッコ良かったからとか曲が良かったとかというよりも、この瞬間に大森さんがこうしてくれたっていうのがきっかけでハマっていく人が多くて。
それってたぶん他のアーティストへの入り口と全く違うんですよね。


す 全然違いますよね。救われてるんでしょうね、なにかしらみんな。

たとえばですけど、「ハンドメイドホーム」みたいに"ちゃんとみんな作ってるよね"って歌ってくれる人はいなかったよなって。

「愛」みたいな綺麗で壮大な言葉で表されるものって、自然に生まれるのが美徳みたいな価値観ってあるし、そういう歌が多いじゃないですか。でも人と人との関係性にしても、「恋人」「親友」みたいな肩書きがあれば自動的に生まれるものじゃなくて、お互いに作っていくものなのになって思っていたところで、"毎日は手作りだよね"って歌詞にそうだよね!って思いました。
当たり前だと思っているのに「それって違うよ」って周りから否定されていたことを「大丈夫だよ、当たり前のことだよ」って言ってくれているような気がしたというか。

テレビとかで靖子ちゃんの説明をするときに、普通ではない、マイノリティーの人たちのことを歌っているみたいな言われ方が多いのにもやもやしていて。どっちかというと逆なんじゃないかなって。
潰されてしまう当たり前をそれはいいことだよって言ってくれる人というか。

ふ そうですよね、みんな潰されてるものがあるはずだし。


す 好きなものを好きでいいじゃんっていう思いを潰されてたと思っていたので、そういうところに救われてる感じですかね。



~これを載せたらディスられる~


す 女扱いされたくないって思っていて。

ふ オタク界隈の男の中にいてマウンティングされた経験もあったから?

す(アイドル現場で)「女子だしなんとなく好きなだけでしょ?」って言われることが多くて。
あと「女オタオタにちやほやされるのが嬉しいんでしょ?」って言われるのが不服なんですよ!
「なんでお前らの汚ねえ顔を見るために金払ってると思えるんだよ!私はかわいいアイドルに金払ってんだよ!」って感じなわけですよ。

ふ お前らを見に来てるわけじゃねぇぞと。

す なんでかまってやったみたいな顔してんだよって。

ふ あははは!

す Twitterの知り合いと現場で会ったときに、「えっ、中の人おっさんだと思ってた」って言われるのが一番嬉しいです。

ふ それはファッションショーとの話にも繋がりますよね。
フラットな視点で見てくれるというか。

す それがいいんですよね。
これを録音するのも人に言うのもアレなんですけど…最近、かわいい扱いをされるんですよね。
(数秒沈黙)…………。笑

ふ 笑
「自撮りしなよ」とか言われたりしてましたよね。

す そうそう。
でも私二十年間くらいメガネだったし、今よりも服装に気を遣ってなかったし、肌弱くてメイクもしてなかったので、かわいい扱いをされないで生きてきたんですよね。だから未だにかわいいって言われるのがよく分かんなくて。
メイクを始めてから二年くらいは、「いや、かわいくないです」って即座に返してたんですけど……なんかあまりに(かわいいって)言われるんですよ。

ふ メイクをちゃんとしようと思ったのはいつからなんですか。

す 就活からです。コンタクトにして、メイクもしなきゃいけないって思って。

ふ なるほど、本当に最近なんですね。
そう言われ続けてきて、気持ちの変化としてはどうなんですか?

す えっ、なんか……最初の方は「何を言ってるんだ…?」って感じだったんですけど、今は「そうなんだ…」って感じです。
めちゃめちゃ嫌味っぽいんですけど、あまりに言われるから、他人からの目線については納得しないといけなくなってきたというか。「どうやら自分は造形がそこそこ美しいらしい」と。

ふ なるほど。笑

す せっかく褒めてもらってるのに真っ向から否定するのも、それはそれで失礼なのかなって。
でも別に自分がかわいいとは思ってないんですよ。

ふ その場の空気を読んで「じゃあそれで…」みたいな。

す そうそう。笑
でも「かわいいね」って言われたらとりあえず「ありがとう」って返すように心がけていたら、"かわいい" が内面化してくるような感じがして、気持ち悪いし怖いんですよね。

前はそれをがっつり遮断していたから、「この子かわいいって言われるのは好きじゃないんだな」ってコミュニケーションを取ってくれる人が多かったんですけど、最近「あっ、ありがとうございます」くらいに収めるようにしたら、みんな乗っかって言うようになってきて。

みんなが仲良くしてくれるのも嬉しいし、人としてもすごく好きなんですけど、正直現場で顔を合わせてからの方がいいね数も伸びてるし、誰かにかわいいってツイートされ始めてからフォロワーが増えたりしてるんですよ。

ふ 評価が顔ありきなんじゃないかっていう。
仮に自他共に認めるブスだったら違ってくるんじゃないかと。

す そう!そしたらなんて言われてるんだろうって。
それで自撮りを上げたりはしないんですけど、「顔がかわいいのに顔を武器にしないのはおかしい、失礼だ」みたいな話をされることもありました。
説得されることが多いんですよ。「自覚しろ」と。

ふ でもそれって余計なお世話でしょ?

す 余計なお世話です!マジで!笑

ふ はははは!そのことで散々悩んでるのに。

す もういいよ!みたいな。



す 私がかわいいって自称したら、「あいつ調子乗り始めた」とかいう話になるんですよ、絶対。

ふ 僕がすごく好きなYouTuberで、かわいい女の子がいるんですけど、その子は元々ニコ生で人気があった子で。
ニコ生でやってたときに流れてくる「かわいい」ってコメントを見て私かわいいんだ!って思い始めたらしいんですけど、その後YouTubeに転身したらコメント欄で「ブスなのに調子に乗ってる」とかまさに書かれてて。
それを見て「どっちなの!?かわいいって言われたからかわいいって思ってたのに今度はブスって言われるんだけど!!どうしたらいいの!?」って言ってる動画があって。笑

す ははは!めっちゃ面白いっすねその子!
絵恋ちゃんも同じようなことを言ってましたよね。

ふ そうですね。私かわいいんだって思ったからアイドルの道に進んだという。

す 最高ですよね。笑
現場でかわいいって扱いをされると、その界隈じゃない人から「あいつ自分がかわいいと思って最前に行ってるんだろ」とか「靖子ちゃんに特別扱いしてもらえると思ってんだろ」とか思われてるんだろうな…って考えちゃうんですよね。
だからおっさんが羨ましいんです。自分の面白さで戦えるじゃないですか、彼らは。

ふ うん、確かに。
すいかちゃんも、自分の内面を武器にしたいというか。

だって内面は私の顔と全然関係ないし。
自分はこうなりたい!と思って身なりを綺麗にして、センスがあるからかわいいって言われるんだったらいいんですけど、私はそうじゃないので。
だからメイクとか服とかでちゃんとかわいくなりてぇーって思います。

雰囲気やファッションじゃなくて、「顔の造形がいいよな」って褒められるので、喜べと言われても腑に落ちないんですよね。「血じゃん!」っていう。
私の努力ではないから。

ふ あぁそうか。私の努力じゃないところを褒められてもっていうところなんですね。

す そうなんです。
リアルな悩みなんですけど、誰にも言えないですよこんなこと!笑

ふ 俺からも聞けないですしね、そんなこと。

す 言っていいかなって思ったんで。笑

ふ これは書けないなぁー……!

す 嫌われますもんね、普通に。笑
これを載せたら、「あのインタビューの人、実際見てみたらそんなにかわいくなかった」ってディスられるわけじゃないですか。
ややこしいですよ!ほんと!自分の顔は好きじゃないし、かわいいなんて思ってないから!って。笑
勝手ですよ、本当に周りは。っていう気持ちがあるから、私もアイドルを見るときには「ああオタクって本当に勝手だな〜ごめんなさい〜」って自分を戒めた上で、「かわいい」って言ってます。笑



す あー疲れた。自分がかわいい前提で話すなんて生涯ないですよ。
この流れでオタクとしてのスタンスの話に繋がるんですけど、こればっかりはTwitterでも言えないんですよ、本当に。
「女子だからそういう扱いをされたくない」って言い方しか出来ないんですよね。

ふ それはそれで辛い。

す 女子からもそういう好かれ方をされることもあるし。

ふ でもそういう言い方をすると結局女子から嫌われちゃうし。

す そう。だからあんまりリプライとかで「かわいいから大丈夫だよ」とか言ってほしくないんですよね。笑

ふ かわいいって認識を広げてほしくない。笑

す それもあるし、別にそれ大丈夫じゃねぇしっていう。笑
それおっさんだったら大丈夫じゃないじゃんって。
そんなことで私を許すなよ、十年後も許してくれるのかよって思っちゃう。笑

ふ でも僕も自然と女性に対してコンプレックス持ってたかもしれない。
ライブハウスとかでバンドマンとファンの女の子が楽しそうに話しているのをいいなぁー、やっぱ女の子だしなぁーみたいな感じで思ってるんですよね。自分が行けばいいだけなんですけど。

す 全ての恩恵を100%それ(かわいいこと)によって受けてるって思われるのが悲しくて。
自分なりに考えを発信してきたつもりなのに、なんかなぁー!っていうのはすごくあります。
内面もかわいければいいんですよ。
でもかわいくないから、評価されてるのは"自分じゃない部分"なんだなっていらつくんですよね。

ふ うんうん。自分の努力じゃないところで…ってところですよね。

す でも褒められ始めると承認欲求も湧いてくるじゃないですか、人間だから。
もう困って困って…!笑

ふ 欲望と自制心のシーソーゲームみたいな感じだ。

す そうそう。ずーっとそんな感じです。
かわいいと自称して売っていけるほどかわいいわけじゃないのも知ってるから…。
めんどくさいっすよね。



店員 すみません、そろそろお時間なのでお会計だけいいですか?

ふ あっ、はい。すいかちゃん、もう三時間近く話したんで、今更感もありますけど、推し曲をたずねてまして…。


す うわー!……まとまるんですかねこれ。笑

ふ ……分かんないすね。笑

す 推し曲、毎日変わるんですけど、今日は「あまい」

ふ おお!初めて!


す なんでかっていうと聴き心地がいいから!笑

二人 笑

ふ ふはははは!これで終わりにしよう今日は!笑



(「あまい」は二曲目!)



暫定的なあとがき

ふじーです。こんなところまで読んでいただき、ありがとうございます。
導入で書いたとおり、ひとまず今回をもってブログ上の大森靖子ファンインタビューを終了させていただきたいと思います。

実質最終回と書いていたのは理由があって、公開させていただいたファンインタビューをまとめて(過大なまでにおまけをつけて)簡単な本にしようかと思っております。
限定収録のインタビューもすでに企画しているところであります。

右も左も分からずデザインが出来るわけでもないので、様々な方にお手伝いをお願いすることになるかもしれません。お時間がかかってしまうかと思いますが、よかったら心の片隅でこんなことやってんのかこいつくらいに覚えておいてもらえれば幸いです。


関東を中心に遠方も、メールインタビューなども含め、ご協力いただいた皆様本当にありがとうございました。(また近々ご連絡致します)

そしてこのインタビューを読んでいただいたり、拡散していただいたりした方々も本当にありがとうございました。
ウェブ上で転がる感想はおそらくほとんど読ませていただいたと思います。ちょっとした一言でもモチベーションの向上に繋がりまして、本当に嬉しく思っております。


そして、大森靖子さま、勝手にすみません…。本当にありがとうございました!