トーキョーワンダーグラウンドVol.3、無事終了致しました。
ご来場いただいた方、ご出演者さま、渋谷LUSH・HOMEのみなさま、本当にありがとうございました!

尖ったブッキングとか日々の鬱屈を音楽で表現する人たちが集まったとか、様々なご感想を頂戴し、このイベントにしか出来ない雰囲気が表現できたのではと思っております。

正直課題の残る部分はありましたが、あとは自分が尽力するだけです。
備忘録として、遅ればせながらライブレポートをまとめてみました。

あー楽しかった!!


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HOME一番手はbutaji
直前まで客席で和やかに話していたところから、ふっとステージに上がって歌い始めた瞬間に彼の素晴らしきギャップを見た。
繊細なファルセットを使いこなしつつも、ガットギターをがつがつと弾いていく姿。

"顔で歌う"ということを出演者紹介で書いたのだけど、まさにそう書いたことによってその魅力が自分自身に直に伝わってきたように思う。
このメロディのこの音程を歌っているときにこんな顔をしているからこそ、その音がより心に近い部分で鳴っているのだ。

今回の演奏とは関係ないけれど、マイク一本で歌う姿も似合うんだろうなぁきっと。
打ち込みでもバンドでも形態は問わず、彼がフリーキーに歌う姿も見てみたい。



そして渋谷LUSHの一番手はハートたちから秋村充
ドラム用の椅子に片足を乗せて、常にギターソロを弾いているような演奏。そう、アンプに足をかけるアレ。
「もっと盛り上げていかないとアカンとちゃいません?」と一対一のコミュニケーションを積極的に図ってくるところは、その後に話していた「気になってたアーティストも多いので、今日誰かと繋がることが出来たらなと思ってます」と話す人懐っこさにそのままリンクしていて、弾き語りという演奏スタイルはやはりその人の人柄を如実に表すのだと感じさせられる。
自分が好きになってこんなイベントにまでお呼びするような方はやっぱりそういった人間的魅力に溢れた人だと確信する。
歌うこと、伝えること、それによって誰かと何か繋がることが本当に好きなのだなと感じさせられる。

ステージから倒れるように飛び出し、テーブルにぶつかりながらも演奏を続ける。彼がいつも言っているパンクとラブとはまさにこの瞬間のことだったんじゃないか。
ビイドロの青柳さんは「初めて見た人だったけど、なんか最終的にすごい好きになっちゃったよ」と高揚した顔で話しかけてくれた。嬉しい。



続いてHOMEに移動して、komori+yusa(壊れかけのテープレコーダーズ)。音源を聴く機会はあってもまじまじとライブを観るのは初めてであった。
「愛に溢れたブログを書く人」と紹介してくだすった。ありがとうございます。最高の糧になります。

The MADLASのカバー「LOST」も披露されたが、同じメロディを追いかけるように歌いあう譜割りに、全くキャラクターの違う二人の声の面白さを改めて知る。
そして如実に伝わってくるメロディの良さ。そのカバーに限らず、ドラムやベースという装飾をそぎ落として、残った二人だけの魅力に歌声とメロディがあった。
特に「永訣」!ちょうどこもゆさの音源が発売されたところなので、これはライブ会場でぜひ手に入れるべし。



LUSHに戻ると鈴木実貴子ズが演奏を始めるところだった。
何度見ても持っていかれる感覚に陥ってしまう。演奏が終わったタイミングでの何かが抜けたような明るい笑顔と、歌詞一節一節をぶつけるようにクッとこちらを睨む表情。
新譜『名前が悪い』からの楽曲が多く披露され、それを聴きながらこの楽曲たちが全国流通で広まっていくことによって、どう世界が変わっていくか。ということばかり考えていた。


「死んでしまった人は上に行くんじゃなくて、地下に潜って桜の季節に花を咲かせてくれるというような曲です」と前置きされて披露された「アンダーグラウンドでまってる」が圧巻であった。

常に歌詞を口ずさみながらドラムを叩くズの姿も印象的であった。空白を作った後に叩かれるスネアもバスドラもシンバルも、全てが歌を生かすためのものであり、バンドへの愛を込めた一音一音だったように思える。全てに意味があるよう。



軽快なSEと共に入場してきたのは無敵キャンディ
このイベントの異色なメンツの中でも、唯一(と言ってもいいだろう)ポップな方向に振り切ったバンドだ。
派手なSEから「冒険日誌」になだれ込む軽快なスタート、そのハイテンションっぷりは本当に見ていて勇気と元気が湧いてくる。
テンションを浴びているような感覚がエナジードリンクのような即効性をもって身体に届いてくる。

中盤の楽曲は諸事情あってHOMEの裏で聴いていたのだけど、ミドルテンポのウィンターソング「ホワイトホワイト」なんかはこれまでの彼らには無い色であり、あまりの速度と勢いに飲み込まれていたグッドメロディが顔を出す。
そう、このバンドもグッドメロディの持ち主なのだ。
意識したわけではないけれど、全出演者グッとくるメロディの持ち主だった。

ラストに披露された楽曲「はずかしい!」はもはやBPM200越え!音ゲーかと思うほどにポップでキャッチーな音の連鎖に、もはやただただその波に身をまかせるほかなかった。そしてそれが最高に気持ち良い。アトラクションだこれは。
「ハイスピードヘンテコポップって言ってるんですけど、本当はハイスピードガンギマリポップくらいでやりたいんですよね」と打ち上げでフウガ君が話してくれた。
何言ってんだこの人。めちゃくちゃ良い意味で。

またビイドロの青柳さんの話を出して恐縮なのだけど、演奏中に話しかけてくれた。
「めちゃくちゃ良い!対バンさせてくれてありがとう!」
本当にこのイベントをやって良かったなと思わされた瞬間。この一瞬は忘れられない。



イベントも折り返し地点。harinekoの演奏。
これまでbutajiにも鈴木実貴子ズにも書いた、曲中と曲間の緊張と緩和を、一曲の中でやってのける芸当。
裏拍を縫うようなスリリングなバンドアンサンブルなのに、歌声は温かくて伸びやか。このギャップは聴けば聴くほどたまらない。

「この歳になってやっとこういうことが書けるようになりました」と言って披露されたのは「mornin.」。そう言われると歌詞もどことなくいじらしく可愛らしく聞こえてくる。

今日くらいはちょっとズルをして
あの人のおはようを思い出したりして


途中で披露された「砂の絵」をはじめとして、彼女たちの音楽はどことなくシリアスで得体の知れないもののように思っていたのだけれど、一周回ったポップ性に気付いてからは等身大の女性がこういう音楽を築き上げているところに惹かれ始めた。
ライブで聴きながらにして、リアルタイムで印象が変わっていくのは本当に刺激的な体験であった。



ベストアクトの呼び声も高かった、バケツドラマーMASAの演奏。
塩ビパイプで作られたディジュリドゥとバケツを並べたドラムセットだけで、ここまで観客を高揚させていく技はもはや職人のようだった。
セットリストのBPMチェンジも秀逸で、機材や音色は限られているのに単調さのかけらも見当たらない。

バスドラやタムやスネアなど。各バケツの大きさによって役割が分かれてはいるのだけど、目の前でそれらが叩かれているのに、何が起きているのか分からない!
ただただ彼が構築する完成されたビートが突然目の前に現れて、心と身体を揺さぶられているよう。

そしてこの興奮もどう伝えるべきか分からない。ただ、彼の終演後会場のテンションが一段階上がったような印象だった。観客全員がヤバいものを観てしまったという共犯意識のようなもので一つになっていたと思う。
本当にお呼びしてよかった!絶対に生で目の前で観てほしいアーティスト。



トリはビイドロ
出演者紹介でも挙げた「夜の太陽」から披露してくれた。いきなりエネルギッシュなギターソロをぶちかまされて、そうだ、ビイドロはこんなバンドだった!と良い意味で期待を裏切られる。

音源未収録の新曲群は氷河期・灯台がキーワードになる。まるで一枚のコンセプトアルバムを辿っているようなセットリストだったことを覚えている。
今回の企画にあたって書いたブログの中に、全出演者が灯台のよう、と書いたけれどそのモチーフはこの新曲たちから来た。あれ?ひょっとして…と改めて全出演者の音源を聴いてみて、イベントの方向性が定まったのだった。


ビイドロには足し引きの美学がある。
引くべきところは引く。
「こわれてしまったわたしのきかい」のドラムパターンを体感していても、淡々と積み重ねていくビートは、曲中の"足すべきところ"に向かってハイハットとスネアとバスドラのみでストイックに構成される。
もちろんその役割をベースも果たす。ただ、そのワンフレーズがたまらなく美しい。「夜の太陽」なんかのフレージングもまさに。
このビイドロの土台を最低限のフレーズのみで支える二人は寄木細工やタペストリーのような美しさがあった。同じモチーフを重ねて大きなものを創り上げていくイメージである。

そして足すべきところは足す。
過剰なまでのエフェクターを踏み、ギターが豊潤に鳴る。情報とエネルギーがすごく詰まっている。肉汁たっぷりのハンバーグのようだ。なんというか、わんぱく。
いままで淡々と溜めていた感情がまさにそこしかないタイミングで爆発するのが分かる。

そんな足し引きの美学が存分に発揮されたライブだったように思える。特にアンコールに応えて披露された「くじらの半回転」は一音目のギターから、ビイドロであってビイドロでないような、自分の知っている振れ幅から振り切った様相だった。



あっちこっちでばたばたしていて、すっかり写真を撮り忘れてしまっていた。往来自由は本当に楽しい。スキマ時間が全くなく、とめどなく流れてくる音楽に身を委ねているうちに終演していたようなスピード感であった。

打ち上げでも話したことなのだけど、この日は本当に間違っていない音楽しか鳴っていなかった。
一人でも多くの人に支持されるべき音楽が揃っていたし、一人でも多くの人に届けたい音楽だった。

隣のHOMEはDJイベントに変わり、若いDJとその界隈が踊りながら夜を名残惜しんでいた。

名残惜しい一日だった。こんな日をあと人生で何回過ごすことが出来るのだろう。
自分のやりたいことは出来た。やりたいことが出来るということは分かった。
あとはこのやりたいことをいかに多くの人と共有することが出来るか。

そんなことをLUSHのスタッフの方々とずっと話していた。
また面白いと思ってもらえるような企画をやりたい。その為に出来ることはなんだろう。とあれからずっと考えている。

とにかく、このライブレポートが次への一歩になれば。
また、必ず。


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当日出店していただいた、イラストレーター原田響さんの物販。
かわいい。これだけ写真におさめていた。