まいど!大森靖子ファンインタビューです。


今回のお相手は、卒論マンこと佐々木コータさん。
シンガーソングライターとしての顔も持ちながら、大森靖子を題材に卒業論文を書き上げた経験のある彼が見る大森さん像とは。

気になる卒業論文の概要とともに、それを踏まえて今の大森さんを考察していく回…にしていくはずだったのですが。


インタビューさせていただくにあたって面識のない人がほとんどでして、事前にその方のツイッターやらブログやらを見て、この人とはこんな話が出来そうだなぁっていうのをぼんやり考えたりするのですが、まぁほとんど全てそうはいかなかったんですよね。

どう転んでいくか分からないところにこそ会話の魅力があって、その転んだ先にその人にしかない言葉と輝きと闇があるんじゃないかなと思っています。
話が逸れた先にこそ。


今回はいつになくマジメでいつになく気持ち悪く、いつになくピュア。
そしてやっぱりこれも愛なのです。


さ…佐々木コータ
ふ…ふじーよしたか(音楽八分目)



ふ それでは、簡単な範囲で自己紹介をお願いします。

さ 佐々木コータです。25歳で会社員なんですけど、色々やってます。
音楽もやっていて、たまにライブをしたりしてます。大森さんのファンには卒論マンと呼ばれることもあります。

ふ 会社員っていうのは、音楽とは関係のない会社で。

さ 関係ないです。普通に就職して、空いた時間で音楽をやったり…。
あとは「地下室TIMES」ってサイトでちょっと記事を書いたりしたこともあります。

ふ 書くようなことも元々お好きで。

さ 書くのが好きというか、結構なんでもやりたい人なので。
ちゃんと外でやった(文章を書いた)のもそれが最初でした。

ふ じゃあ今回インタビューに応じてくださったのもその一環って感じですかね。

さ そうですね。東京に来てから、文月悠光さんの詩の講座を受けてみたり、ササクレフェスというフェスのスタッフをやってみたり…。
あと、オトトイの学校ってやつでやってる岡村詩野さんの音楽ライター講座にも一時期通っていたこともあって。

ふ そうなんですか!僕もあれ受けようか迷ったんですよね。講座との予定が合わなそうで止めたんですけど…。どうしよう、急に緊張してきた!

さ なんで!笑 現状普通のサラリーマンですよ!笑



ふ 東京に来たのはいつですか?

さ 大学まで北海道にいて、就職して東京に来たのが二年前です。
大学の卒業論文で大森靖子さんについて書いたんですけど、それがきっかけで工藤ちゃん(シンガーソングライター、大森靖子ファンを公言している)に、「大森さんを好きなアーティストだけ集めた企画ライブをやるんですけど出ませんか?」って言われて、東京に来てすぐライブに出させてもらって。

ふ そもそも最初に大森さんを知ったきっかけっていうのは。

さ 北海道にいたときで、2013年でした。
バンドをちゃんとやろうと思って一年間大学を休学していたことがあって、バイトしながらライブに出たり、観たりしていて。
そのときにツイッターでナタリーから「『魔法が使えないなら死にたい』発売!」みたいな記事が上がってて、すげえタイトルだなって思ってPV観て。
そこまで興味はなかったんですけど、来月くらいに北海道に来るっていうのを見て、行ってみるかなと。
"@YOUTUBEさんから私の全部を分かった気になってライブに来ないね"って歌詞もあったんで、そこまで言われたら行くかって。笑

ふ あぁ、それがまさに良いフックになったんですね!釣られてみっか!みたいな。笑

さ そうそう!笑
CDも買おうとしてたんですけど、直接買ってもらった方が嬉しいだろうなと思って、ライブまで買わずにYouTubeで予習する程度で。
全然期待しないで地元のライブハウスに行ったんですよ。お客さんもまばらな感じで、対バンも普通に北海道でちょいちょいやってるくらいの人たちの抱き合わせみたいな感じで、ふーん…みたいな感じで観てたら、めっちゃくちゃ良くて!笑

物販とかもそんなに買う気がなくて、CD一枚くらい買おうかと2000円だけ持ってきてたんです。
それで物販に並んで『魔法が使えないなら死にたい』を買ったんですけど、やっぱりもっと欲しいと思って、そのとき偶然来ていた友達にお金を借りてもう一回物販並んで。
「サインください」って言ってサインを貰ったあと、「こっからここまで全部ください」ってヤツをやって。笑
大森さんもびっくりしながら缶バッジをくれたりして。それが最初でした。

ふ 物販総ナメ!笑 なにがそんなに衝撃だったんでしょう?

さ なんでしょうねぇ…。
大森さんもインタビューでよく言ってましたけど、弾き語りってバンドやってる人が片手間にやってたり、あとはまあしっとり聴かせてちょっとトークして…みたいなイメージだったんですけど、バンドよりもグイグイ来て。
ライブを観て、口ではまあ「やべぇ」って言いますけど、美しいなって思ったんですよ。美しいって単語、恥ずかしいじゃないですか。でもそれとしか言いようがない感じだったんですよね。
汚いステージで女の子一人で歌ってるだけなんですけど、綺麗だなって。

ふ なるほど。そこから聴き込んで…って感じだったんですか?

さ そうですね、その後はずっと聴いてました。
その二ヶ月後に渋谷クアトロのワンマンがあったタイミングだったので、いい時に観れたなって。

ふ そのタイミングの音源って今振り返ってみても、示唆に富んでると思うんです。弾き語りもあって、打ち込みもあって、バンドもあったりして。
どれがどう印象に残って…っていうのはあったりしますか?

さ 『魔法が使えないなら死にたい』の時点で印象的だったのは、正直ライブの方が圧倒的に良いなってことでした。
がっつり作り込んできた音源の方が良い人もいるんですけど、大森さんはやっぱりぶっちぎりで(ライブの方が)。
音源もずっと聴いていましたけど、YouTubeでライブ動画ばっかり観てましたね。「これ行きたかったなー!」とか言いながら片っ端から。笑




ふ 卒業論文の話が気になるところなんですけど、北海道で書き上げたわけじゃないですか。
ライブを観られる機会も正直少ないまま、大森さんを論文にしようってしたのはそもそもどういう?

さ 惹かれたきっかけの「ライブがヤバかった」っていうのとは別に、インタビューとかコラムとかを読んでいて、これは論文になるなって。
大森さんはそれぐらい衝撃的な存在だったというか。

ふ それってどういう部分が衝撃だったんでしょう。

さ 売れた人ってあんなブログ書いちゃダメじゃないですか。笑

ふ ははは!笑 確かにそうだ。

さ でも僕はあれをある意味正しいと思っていて。 
ツイッターであるフォロワーさんが言ってたことが結構衝撃で。
「芸術なんて言葉は大げさで恥ずかしいけど、大森靖子が出てきたときに私は芸術をやってるっていうことを言い切っていたのが嬉しかった」っていうようなツイートをしていて。それが大きかったです。

音楽が中心ではありながら、インタビューの発言とかコラムとかブログとか絵も含めた全部で創作活動をしているというか。ミュージシャンというよりアーティストとして自分の人生を出しています、と。
「良い音楽やってれば良い」っていう時代じゃない中で、こういうアーティストこそ必要な存在だなと。

それを大森靖子が最初にやったとは言わないですけど、実際その後、良い音楽を聴かせるためにキャラも含めていろんなフックがあるっていうアーティストが増えてきたんですよ。岡崎体育とか。
そういう時代の先駆けのひとつというか、「大森靖子は芸術をやっています!」は今のシーンの中でのキーだという衝撃を受けて。

ふ はー、なるほど。

さ 結構馬鹿にされたんですよ。お前そんなん(題材)で論文書くのかよ?みたいな。でもちゃんと社会学とか、学問的な要素を踏まえた上で「(現代の音楽シーンには)こんな人もいるんです!」っていうのは論文になるなって。
これは書けるぞ…!と思って本人に伝えたんですよ。

ふ おぉ、書きます!って?

さ そうです。「ホントに?止めてもいいんだよ?」とかすごい心配されたけど。笑

きっかけとしてもう一つあって。
大学での僕の担当の教授がいて、その人は映画評論家とかサブカルチャー評論家なんですけど、J-POP論の授業もやってて。椎名林檎とかについてで本を何冊か出してるんですけど、その人が北海道新聞に大森靖子と椎名林檎についてのコラムを書いてて。

ふ へぇー!すごい!

さ それが結構運命のように思えて。
「卒論を大森靖子で書こうと思うんですけど、どう思います?」って教授に聞いたら「あぁー、いいんじゃない?」って言ってもらえて。

ふ 教授もどこかでたまたま見知ったんですね、大森さんを。

さ その教授は詩人でもあって、シンガーソングライターの人とかに歌詞提供をしてたりするんですよ。それでその(歌詞提供先の)人に教えてもらったって話してましたね。

ふ 今更なんですけど、何学部だったんですか?

さ 僕は文学部です。
その教授はJ-POP論みたいなものも書いてましたけど、谷川俊太郎とか金子みすゞとかの詩が専攻でしたね。
卒論のテーマも詩の一環なんです。歌詞というか、最先端現代の詩みたいな感じで。

ふ でもさっき聞いた感じだと、結局歌詞だけじゃないですよね、フォーカスしてくるのが。

さ そうですね。
論文の中身を軽く説明すると、

○歌謡曲から始まってJ-POPがどういう風に形を変えてきたかということに触れつつ、シンガーソングライターが流行ったりアイドルが流行ったり打ち込みが流行ったりした90年代・2000年代・2010年代を経て今、弾き語りを軸に戦ってきた大森靖子という女性がいますと。何故今そんなミュージシャンが注目されているのかっていう導入があって、

○大森さんと縁のあると思われるミュージシャンを比較対象として、笹口騒音さんとか豊田道倫さんとか、椎名林檎さんとか戸川純さんとか、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)さんなんかも挙げて、メロディとコード進行も含めて大森さんの曲の歌詞と比較対象の歌詞についてをそれぞれ批評して。

○それらと比べて大森さんはこういうところがある、その(比較対象の)人はこういうところがある。っていうのを十何曲くらいか並べていって。そうして浮かび上がってきたことを基に、今のシーンで大森靖子がこういう音楽をやってきたのはこういうところがあるからで、今後はこうなっていくんじゃないかみたいな感じで締めたんです。
大体、七万五千字くらいだったかな。

ふ はぁー、なるほど…。ちなみにその文字数って卒論の中ではどのくらいの文量なんですか?

さ めっちゃ多いっすよ。笑
基本やっぱりみんな卒業のために書く人ばっかりだから、二・三万字で卒業ギリ出来ますくらいな感じの中、七万五千字だったので。笑

ふ 教授の反応は。

さ 良かったです。他の人と違ってコード進行についてとかにも触れられるんで、ただの詩じゃなくて音楽として比較できてるからって。
悪いところと言えば、大森さんが好きで書き始めたので社会学とかには全く詳しくなかったから、全体的に触れてるJ-POPの変遷とかも初歩中の初歩にしか触れてなくて。すでに言われ尽くされてることを基に書いてるから、もっと深く社会学なり少女論なりと絡められれば、より良かったと。

ふ その論文、相当量な時間をかけて書いたわけだと思うのですが、最近の大森さんを自分の論文と照らし合わせて感じたところってありますか?

さ あぁー…!言いづらいなそれ…。
自分の中で大森さんって頼れる人がいない、というところから始まったイメージがあったんです。
元々弾き語りがしたかった人、というよりはJ-POPが好きで始めたけど、アレンジが出来ないから一人でやってきたみたいなところがあって。
この辺は椎名林檎との比較のあたりで書いてるんですけど、論文の中でも「今後は弾き語りがメインとは限らず、もっといろんな人と組んだりして幅広い音楽をやっていくんじゃないか」みたいな感じで書いたんです。
だから直枝さんにプロデューサーについてもらったり、メジャーデビューしてからは実際、バンドも示唆に富んだ人が集まってきたり、三連福でコラボしたりとかして、そこらへんは卒論もそんなに間違ったこと言ってなかったのかなっていう気がしています。



ふ 東京に来てからはライブに行く頻度が増えたんですかね。やっぱり。

さ 減ったかなぁ…どちらかというと。笑

ふ あぁ、そうなんですねぇ。

さ 仕事始めて忙しいってのもあるんですけどね。
変な話なんですけど、東京ってファンがめっちゃ多いじゃないですか。しかも愛が強くて。だから僕が行くことで席を減らしたくないみたいな…。笑

ふ あぁ、もっと重い人にお譲りするような。笑

さ そんな変な気持ちが湧いてきちゃって。笑
普通に行きたいんですよ?でも実験室とか予約開始してバッ!とチケットを取ってる人とか見ているとそこまでして僕なんかが行くよりは…って感じがしてあんまり行ってないんですよね。笑

あと…この話言いづらいなぁ…。
どちらかというと最近より昔の方が好きだっていうファンなので。正直なところ。

ふ あー!でももちろんそういう方も確かにいらっしゃいます。

さ 人間を全部出して芸術をやるんだっていうモチベーションに結構衝撃を受けてきたほうだったので、メジャーアーティストとしてのモチベーションがしっかり確立して、ファンの為にとか人の為に歌おうっていうのがより強くなっていて、本人は変わってないと言っていても、正直僕には変わった感があって。
どちらかと言えば自分を出さない方向に進んでいったのが、個人的には変わったところかなと思いますね。それが切なくもあり…。
結婚したことが実際は大きかったのかなとも思います。ブログでも、「人間としての大森靖子とミュージシャンとしての大森靖子がいて、人間としての大森靖子を守るために家族を作った」っていうような話がありましたけど、そっちは家族でまかなわれているのかなって個人的には思っていて。

ふ 文章だったり美術だったり音楽だったりが大森靖子としての一つの芸術だという話もさっきありましたけれど、それを「マジックミラー」あたりで一旦形として出したのかなっていうのが個人的にはあって。
そのあたりで、ステージの上で表現する「ミュージシャンとしての大森靖子」を創ったんじゃないかなってふと思ったんです。

さ なんだろう…。仕事が変わったんですよね、大森さんの。今思いついたことなんですけど。
最初は(作品を)出すこと、出したもので人を救うことが仕事になってたかと思うんですけど、今の大森さんは「メジャーデビューをしたからこそ出来る仕事」をしている感じが。

時代に対して適した形があるんですよ。
「ステージ」と「時代」っていうラインがあって、「このステージ」「この時代」でしか出来ない仕事がたぶんあるんです。
僕スガシカオさんが好きで、『TIME』ってアルバムがすごく好きなんですけど、「めっちゃ暗いアルバムを作ったんだけど時代の方が暗くなっちゃった」っていう話を本人がしていて。「すごい暗い時代になっちゃって俺のアルバムの威力が無い」って。

ふ あーなるほど。笑

さ だからメジャーミュージシャンとして「時代」を切り取る仕事って、自分から出たものを出すだけじゃたぶん駄目で。多くの人に届けるっていうのはちゃんと「その時代に求められてるものを出すこと」だと思っていて、それなのかなと。
今インディーズみたいな音楽をやっても、昔のファンは喜んでもメジャーデビューした意味がないから、大森さんが「この時代」「このステージ」でやるのに適した音楽が、こういうスタイルだと思ってやっているのかなぁって。

ふ それは確かに腑に落ちる感じはありますね。

さ だから「マジックミラー」以降はそのイメージがあります。

ふ そうですね。「アーティストとしての大森靖子」と「人間としての大森靖子」を明確に分けている感じはしますよね。

さ 質問の最初に戻りますけど、論文を経た上で今の大森靖子を見るとしたら、大森靖子のステージが変わって今新しいステージに入っている。
その中でメジャーアーティストとして戦う大森靖子を見て、勝ち上がっていったんだなって感動もありつつ、個人的にはステージが上がった大森靖子に寂しさも覚える…っていうのが僕の感想ですかね。笑



~自由って違うじゃないですか~


ふ 以前めっちゃくちゃ重いファンの人にインタビューさせてもらったときに「目が合わないから広い会場に行かなくなりました」って言ってる人もいたりして。
「目が合わないと大森さんのライブに行く意味がない」くらいまで話していて。

さ あー!それ言ってくれるの嬉しいですね!
これ悪口じゃないんですけど、やっぱりファンの人ってみんな好きすぎるあまり大森さんに対して「こういうところが寂しい」とかって言いづらいじゃないですか。
僕は大森さんが嫌だなって思うかもしれないことを言ってもいいのかなって思っていて。
大森さんは「みんながもっと自由に生きられる世の中を作りたい」という話をしますよね。
でも大森さんファンの界隈にいると…なんだろう…みんな大森さんを褒めることしか言えない、みたいなこともあるじゃないですか。
まあ大森さんがみんなを見てくれてるっていうのもあるかも知れないですが。

ふ そうですね、大森さんがエゴサーチをしてるというのは周知の事実ですし。

さ でもそれって矛盾してるなって思っていて。
自由って違うじゃないですか。人間だから悪いとこもあるじゃないですか。
だからもっとみんなが言いづらいことを言っていい世の中……世の中と言ったら広すぎますけど、この界隈の中で、大森さんも見てるしファンのみんなも好きだからちょっとマイナスなことは言いづらいな…みたいな空気はちょっと違うのかなって。

ふ うーん…確かにそういう空気もあるかも知れない。

さ だからさっきの「目が合わなくなって寂しい」って言ってくれるのは、僕は嬉しい。笑

ふ うん、僕も聞いていてすごく気持ち良かったです。やっぱそう思う人いるよね!って思ったというか。
「どこにいても私のことを見つけてくれる」ぐらいなことを言うのかと思ってたら、それぐらいの重さがあったので。笑

さ 大森さんもそれをカバーしていきたいと思ってるでしょうけど、現実としてそういうこともあるっていうのは無いわけないと思うので、それをファンの方が言ってくれるのは嬉しいですね。

そうそう、マイナスが見どころになるのも、大森さんの魅力かなと思います。

ふ マイナスというと?

さ 今のような感じが他のアーティストだと、「規模大きくなって目なんか合わなくなっちゃったなぁー…他界かな?」みたいな感じにもなっちゃうと思うんですけど、大森さんについては「それをどうかわしてくれるんだろう?この先それを踏まえたうえで、大森さんはどんなアプローチを僕らにしてくれるんだろう?」ってどこかで楽しみにしている自分がいるという。




ふ ちょうどファンの話にもなりましたのでそういう質問もしたいんですけど、佐々木さんも大森さんだけじゃなく様々なアーティストのライブに行かれるじゃないですか。

さ はい、そうですね。

ふ このバンドはこういうファンが来る。みたいなバンドのカラーにファンが寄っていくことってあるじゃないですか。
その点、大森さんのファンっていうとこれまで見てきたどこにもカテゴライズ出来なくて、独特な雰囲気だなって感じることが多いんですけど、佐々木さんはその辺り感じるところありますか?

さ 表面上ギャルとかイケメンもいればオタクとかおっさんもいるけど、でも心の奥のどこかに何かがある、みたいな人が集まってる感じですかねぇ。
だからこそバリエーションも富むし、表面上で繋がってるわけじゃないから、みんな結構仲良くなったり。もちろんそこに入らない人もいると思うんですけど。
それも含めて、表面上のバリエーションがこんなに違うのに仲良くなれるっていうのは面白いなと。

ふ うんうん、老若男女てんでばらばらなのに。笑

さ そうですね。笑
ファン同士の飲み会とか面白い企画だなと思いますよ。職業も何から何まで違う人たちが集まって。
しかも意外と大森さんの話しないんですよ。

ふ へぇー、そうなんですか!

さ それも面白いですよね。大森さんが好きで集まってるのに「お仕事何してるんすか?」とか言いながら普通に飲むっていう。笑
あとファンのことでいうと、僕大森さんのライブ行ったときは結構周りの客席のファンの顔を見ますね。
大森さんもよくステージからファンの顔を見るのが楽しいって話をしていますけど、僕もそれがすごい面白くて。泣いてる人もいれば笑ってる人もいて、腕組んで無表情な人もいるし…表情がみんな面白いですね。

ふ なんというか、ファンも自分をさらけ出してる感じがありますよね。

さ あぁ、そうですね。普通の人に比べるとみんなやっぱりライブに対する想いが重いですよね。笑

ふ いろんな人にインタビューしていると、一回一回のライブに違う楽しみがあるっていう風に共通してみんな言っていて。
その違いを見逃すまいと一瞬一瞬をすごく大切にしている印象で。だからライブに対して全部さらけ出して観る、みたいな人が多いんじゃないかなって。

さ うんうん。ライブの感想も結構印象深いですよね。こんなに一回一回のライブに対して、「私が一番良かったのはこのライブ!」っていうのがあるミュージシャンっていない気がして。
あと、良くなかったっていう感想も強いなって思っていて。正直今日微妙だった…っていうのもたまにあれば、今日めっちゃ良かった!!っていうのもバラバラで。それも面白いなって。

ふ あぁ、それ前から不思議なんですよね。なんでなんですかね。同じライブを観てるはずなのに。

さ うーん、確かに不思議ですよね。みんな違うアンテナで拾ってるんだろうなっていう。
音楽を聴きに行く人もいれば、大森さんに会いに行ってる人もいて。そういう部分のバリエーションかなぁって。

あと、ファンの創作意欲の刺激具合が凄いっていうのもありますよね。

ふ そうですね。やっぱり何かしら表現活動をしている人にとっては大森さんといつか仕事したいっていう人が本当に多いですし。大森さん自身もフックアップしていますしね。周りの才能をちゃんと生かすというか。

さ 僕も全然気配はないですけど、もし音楽で売れたら…自分が良いって思う人を使っていきたいですもんね。
そういう人が増えてきたら…創作業界は良い世の中になりますよね。
売れた人が誰かを引っ張って、またその人が売れたら…っていう創作の輪が生まれるという。

ふ そうですね。それがひとつの正しい形のような感じがしますよね。

さ そうですよね。ビジネスはビジネスだけど創作は創作なので、この人を使ったら売れるかもっていうのもあると思うんですけど、創作の輪の中で良い人が良い人を連れて来て…っていうのは良いサイクルですし、それを体現しているんだろうなって。



~でも僕無いんですよね~


さ でもいろんなファンいるんですね。良い企画ですね。

ふ あぁ、ありがとうございます。笑

さ ざっと見ると肯定的な意見が目につくというか、大森さん大好き!みたいな話ばっかりきくので。

ふ そうなんですよね。でもまぁそうじゃない話っていうのもしたくて。
さっきの話にも繋がりますけど、みんなそんなハズじゃないですか。

さ 100%好きなわけじゃないですよね。

ふ 全肯定、普通出来ないよなぁって。

さ そういう話もっと聴きたいですね。

ふ 最近の曲はあんまり好きじゃないっていう人もいらっしゃいましたね。

さ 笑
そういう意見、全然出してもいいと思うんですよね。まぁ出しずらいですよねぇー。

ふ しかもファンのみんなすごく良い人ばかりだから、良心の生む同調圧力というか…。

さ うん、その同調圧力ってやりづらいなって思いますよね。

ふ ちょっと無言の弾圧のようなものがあるような気がしていて。
なんというか…隠れキリスタンに対する踏み絵のような。お前も幕府好きだよな?みたいな。笑

さ そこが矛盾になってる感じもありますよね…。



ふ 大森さんの活動を見ていて、論文を書いたということが一番大きなトピックスだとは思うんですけど、大森さんから影響を受けて変わったようなことってあるんですか?

さ ……たぶんあると思うんですよ。

ふ たぶん。

さ たぶん。笑
結構明確ではなくて、それがコンプレックスでもあるんです。
ファンレターとか書いたりするじゃないですか。たとえば「大森さんがいたから生きてこれました…!」みたいな。「死にそうだったけど…」とか。
でも僕無いんですよね、別に。絶対何か変わってるんですけど。

ふ あぁー分かります…!

さ 僕、大森さんはめっちゃカッコいいけど売れないんだろうなって思ってたんですよ。そしたらメジャーデビューが決まって。
えっ?メジャーデビュー出来るんだこの人!この人を受け入れられる土壌がメジャーにあるんだ!っていうのはすごく嬉しかったですね。

ふ 一つの希望ですよね。しかも超大手。

さ そう。結構それが音楽業界に対しても希望でしたし、しかもそれを聴く人がこんなにいたんだっていうのも希望で。ちょっと明るくなった感じがします。

ふ 明るくなったというと?

さ 僕の性格がっていうのもそうですけど…

ふ たぶんですけど、自分にとってそんなにデカい話じゃないんですよね、それ。

さ そうなんですよ。でもそれが大森さんの言う+1というか。
なんとなくこのさき生きていくのに"ちょっと"明るくなった感じがあります。
僕も上京して、いろんなものを観に行ったりだとかファンの集いに参加したりだとかフットワーク軽く東京を楽しんでいますけど、それが大森さんがいなかったらやってなかったかっていうと、そういうわけじゃないと思うんです。
でも大森さんの存在は、そのモチベーションの一因には絶対になっているんだろうなという。

あと僕の外側の話ですけど、単純に東京に来て友達がめっちゃ増えましたね。笑
論文を書いたことで工藤ちゃんの企画に呼んでもらったりとかして、そのライブでぱいぱいでか美ちゃんとかゆっきゅんとかと知り合いになれましたし。
ファンの方にも見つけてもらったりして。上京してから出来た友達はみんな大森さん繋がりですから。
内面としてもそうですけど、外側の話として大森さんがいたからめちゃくちゃ東京を楽しんでいますね。それはもうすごくプラスですよね。

ふ へぇー!すごい。

さ 確かにそう考えるとめちゃくちゃ影響を受けてる…。笑



~だってデートやめるんですよ?~


さ 大森さん…どうしたらもっと売れますかね?

ふ うーん…。地上波で「オリオン座」とかですかね。

さ あぁー、なるほど…それは「オリオン座」が良い曲だし売れると思う曲だからですか?

ふ 万人にちゃんと届いていいような良い曲だと思います。miwaが合唱曲書き下ろした(「結 -ゆい- 」)みたいなイメージに近いです。

さ 僕「オリオン座」はそんなに好きじゃなくて…。

ふ なるほど、どうしてです?

さ 「オリオン座」って僕あんまりメジャーな曲じゃないって思ってるんです。
結構みんなが良い曲だ!名曲だ!って言ってるのをずっとおかしいと思っていて。だって歌詞のステージ高すぎじゃないですか?

ふ ステージ。

だってあれ西野カナ聴いてる人は聴かないですよたぶん。
確かにすごく良い曲なんですけど、ファンの盲目性も出てるなって思っていて。
大森さんのファンじゃなかったら良い曲だって思わない人すらいるんじゃないかなとまで思っていて、大森さんを知ってるからこそ、「あの大森さんがこういう曲を書いた!」っていうので感動してるんじゃないかなって。

ふ うーん…確かにあるかも知れないですねぇ…。

さ 結構ステージ高くないですか?"穢れさえ武器に"とか。

ふ ステージ高いって表現はすごく分かります。

さ その点僕は、地上波で歌うなら「デートはやめよう」が良いと思うんです。
aikoとか西野カナとかラブソングの中でも色々あると思うんですけど、その中で「デートはやめよう」の距離感良くないですか?

ふ うんうん、その話の流れだと分かります。

だってデートやめるんですよ?笑 あれ結構衝撃だったんですよ。
ラブソングとして大勢の女の子が分かる!ってなる曲、かつ大森さんじゃないと書けなかっただろうなっていう視点の良さと感覚の鋭さが。
だって一番高いアイスでエロいことするんすよ?すごくないすか?笑
すごくフックが強いけど、西野カナ聴くような女の子でも今日デートやめたいなって時あるだろうし、ああいうラブソングが売れたら嬉しいだろうなって。



ふ そろそろいい時間ではありますが…

さ まだ全然喋り足りないですね。笑

ふ 確かに。笑
他の方へのインタビューでもお疲れ様でしたーって言ってレコーダーの電源を切ってから、喋り続けますからね。笑
とりあえずインタビューの最後には推し曲をお訊ねしていて。

さ あぁー、推し曲。「展覧会の絵」ですね。

ふ パッと出てきましたね。みなさん割と悩まれるんですが。

さ それはもうずっと言っていて。「展覧会の絵」が一番好きだと。
なんで好きかというと、大森さんって全ての女子を肯定するっていうステージからさらに上がって、今になってると思うんです。
「展覧会の絵」については、超個人的な歌じゃないですか。他の人が歌ってもあんまり意味ないんですよ、あの曲。曲としてカッコ良いとは思うんですけどなんか違うんですよね。

ふ あぁー…宿らない感じがしますね。

さ 例えば「あまい」とかもすごく良い曲で、僕も自分で歌ったカバー動画がYouTubeで上がってるんですけど、あれは良い曲なので誰が歌っても良い曲になるんですよ。
でも「展覧会の絵」は他の人が歌っても良い曲にはならないと思っていて。大森さんが大森さんのことを歌っている曲って他にもあるはずなんですけど、ラブソングだったりするから共感出来る部分があったりして良さが出ると思うんです。
でも「展覧会の絵」は完全に美大の絵の話だから。

ふ 共感を求めていないですよね。その頃の歌詞はほとんどそうでしょうけど。

さ そこがやっぱり大森さんが歌わないと意味のない曲だからこそで。共感させようとしてないけど、でもなにか引っかかるという。
よくライブ動画とかで観るのもそれなんです。青山月見ル君想フで「キラキラ」から繋げてやっているライブがあるんですけど、あれめっちゃ観ますしめっちゃ好きなんですよ。ライブ動画で一番好きですね。






さ 僕、武蔵美の有刺鉄線見に行ったんですよ。笑

ふ ははは!笑 良いエピソードっすね!

さ 友達が武蔵美にいたんですけど、ちょうど学祭だったんです。東京に旅行に来たときに、それに行きたいって友達と出かけて。
もう大森靖子ツアーですよ、僕の中では。「絶対有刺鉄線見たい!」って言って。笑
友達と一緒にアトリエが並んでるところに行って、「これが有刺鉄線かぁ…」って。笑

ふ 「これが有刺鉄線か」笑

さ その後デアデビ(デアデビル 高円寺の古着屋)に行ったんですよ。昔大森さんもよく行っていて、個展もやっていたって聞いて。
そこで試着とかして、コマツさん(デアデビのオーナー)と大森さんの話とかしてパッと振り向いたら、大森さんいたんですよ。笑

ふ 笑

さ 嬉しかったのが、向こうから話しかけてくれたんです。「え、ささこじゃーん!なにしてんのー?」とか言って握手してくれて、自分もテンパっちゃって、「えっあっ、旅行っす…」とか言いながら。笑
しかもあっちもプライベートじゃないですか。だから邪魔しちゃダメだと思って、その後話しかけることも出来なくて、その後ずっと端っこで震えてるっていう。笑

ふ でも本当に大森さんはファンの人を一人一人よく覚えてますよねぇ。異常だと思いますよ。

さ すごいですよね。僕なんか当時二回会っただけで、五分も話してないと思うのに。



さ 逆にふじーさんの話聴きたいんですけど、好きな曲なんなんですか?

ふ 僕は…「高円寺」ですね。
「高円寺」も大森さんが歌うことによって広がる世界があるというか。あの女の子が中央線のことを歌ってるあの感じ。廃れた寂しい酔っ払いがぱらぱら乗ってるような風景が。

さ あの辺の曲って大森さん自身の曲だからこそって感じじゃないですけど、見えますよね。絵というか。風景が。

ふ 自分の頭の中でMVみたいなもの作れますよね。

さ あぁーそんな感じですね。

ふ あと単純にメロディがめちゃくちゃ良いんですよね。

さ 弾き語りだからこそってわけじゃないですけど、シンプルで良いですよね。

ふ ちゃんと展開させてちゃんと着地させるところが。
「歌謡曲」あたりから「ノスタルジックJ-POP」とか「呪いは水色」とかに継承されて、今だったら「オリオン座」とかに落ち着くと思うんですけど。そんな真っ当な、なんというか松田聖子のバラードみたいなのが今聴けるんだって。今の時代これもありなんだって思えて。


さ 笑 もうちょっと僕から訊いていいですか?

ふ あっどうぞ。笑

さ 大森さんが結婚したときどうでした?笑

ふ 佐々木さんのおっしゃってた「あぁー!まさかメジャーデビューか!」っていうのと同じ感想でした。そんな選択肢あったんだ!っていう感じです。とても想像できなかったですよね。

さ なるほど…結婚してから変わったって思います?

ふ えーと…思わない…ですねぇ。
大森さんの活動は地続きになっていて、たまたまそこに結婚があったというような。
楽曲ひとつひとつに対する結婚の影響っていうのはあると思うんですけど、全体としての流れを通して見るとそんなに結婚を期にガラリと変わったかって言われればそんなこともなく…。
僕も最近結婚したんですけど…

さ えっ、そうなんですか!おめでとうございます。笑

ふ そうなんです。ありがとうございます。笑
でも全然変わってないんですよね、僕は。
自分の話なんですけど、結婚すると「結婚生活どうよ?」ってめっちゃ聞かれるんです。それがまぁ答えづらくて!だってなんにも変わってないんですよ?笑
というか何にも変わらなそうだから結婚したのに、「結婚生活どうよ?」って何を期待して聞くのかと!
「意外と嫁が厳しくて…」みたいな話が出来ればいいんでしょうけど、「いやーなんも変わってないすねー」って話すだけで。
なんというかそれに近いんですよね。

さ そうか、それは確かに結婚してる人の意見ですね。なるほど。

ふ 結婚というかパートナーがいることで精神の安定はもちろん担っていると思うんですよ。
だから大森さんも前みたいに急に髪切ったりしなくなるでしょうし…。笑
そういう安穏を保つ部分はあると思うんですけど、結婚を機に劇的に何か変わったかと言われれば僕はそんなに…。

さ それ訊いてみたいですよね、いろんな人に。笑

ふ 変わったっていう人もいましたよ。
でも確かにそういう風に思うのも分かりますし、メディアもそういう風に書いてたりするわけですし。

さ 僕は変わったと思っている方で。
結婚したとき、そんなにガッカリしないと思ってたんですけど、すげぇ落ち込んだんですよ実は。
僕はガチ恋だったのかも知れないって思いましたね。笑 
今まで知らない感情でしたね、あれは。

例えば、声優さんが結婚して落ち込んでる友達がいたりして、「するでしょ、結婚とかさ」とか言ってたんですけど、大森さんのときは落ち込みましたね。笑 これか…!と。
活動としては地続きだと思うんですけど個人の強度が保たれたことによって、結婚後に何かが変わった感じは僕はしますね。
大森さんが変わったのか僕が変わったのか分からないんですけど。

ふ あぁ、「僕が変わった」っていうこともあるかも知れないですね。
でも強固になったっていうのは分かります。安心できて揺るがない環境がちゃんとできたっていうのはデカいことだよなと。

さ 僕、危うさも含めて好きだったのかなぁって思います。
別に不幸になってほしいわけじゃないんですけど、どうなっちゃうか分かんないっていうところに対して「応援したい!」って気持ちがあったのかなって今ふと思いました。
もう僕が応援しなくてもいいんだろうな…ってところもどっかにあるんですよ。

ふ それは僕も最近思ったりしますね…。
よっぽど重いファンがいらっしゃるから。
なんかでも不思議ですよね。一対一のバチバチに惹かれて好きになったのに、周りのファンを見て引くっていうのはちょっと不思議な構図ですよね。笑

さ 変な距離感ですよね。笑
いやぁ…ここまで話しておいてアレですけど……ファンみんなキモいっすね。笑

ふ 笑

さ 一人のミュージシャンに対してこんなに話するのキモいっすよね…笑

ふ 話せるっていうのが凄いですよね。笑
それこそ論文が作れるぞっていうきっかけにも繋がるかと思います。