8月3日に発売した、クウチュウ戦の3rdミニアルバム『超能力セレナーデ』のリリースツアーが先日幕を下ろした。
ツアーファイナルとして、渋谷StarLoungeで開催されたワンマンライブは大盛況だったよう。お疲れ様でした!

仕事で行けなかった僕はそんなタイムラインを眺めながら、書きかけのまま公開するタイミングを逃してしまっていたライブレポートを仕上げたのがコチラ。

haikarahakuti・曽我部恵一・クウチュウ戦という、まさに彼らにしか組めないスリーマンイベント!
ただただ良い音楽が集まった純粋な魅力を少しでもおすそ分けできたら。



9月10日、昨年も新宿MARZで自主企画を開催していたクウチュウ戦。
もはやお馴染みとなりつつある、バンド名にひっかけたこの自主企画(おかげで覚えやすい)。

今年の会場は六本木VARIT。
ちょっと空を見れば高層ビルが立ち並ぶような風景の片隅にライブハウスがあった。
キャパは160人と少し手狭な印象だけどやたら雰囲気が良くて、のちのち調べてみるとまだ今年の3月にオープンしたばっかりの新しいハコだった。



一番手で登場したのはhaikarahakuti
クウチュウ戦のKey.ベントラーカオルがサポートで参加しており、その母体は鎌田悠と鎌田俊による双子のユニット。

元々音源を一枚持っていたのだけど、その印象と全く変わっていて驚いた。
あり得たかもしれないポップスがここに鳴っている。そんな印象だった。J-POPの名曲として残っていておかしくないような懐かしさと美メロ。それをツインヴォーカルとして双子の二人が歌う。お互いキャラクターが全然違うのだけど、それぞれの声がシブかっこいい!





シティポップ(と現在呼ばれている音楽)を彷彿とさせる洗練された都会の雰囲気に、隠し味のようにラップも交えたおしゃれで粋なセットリスト。


出演する三組全てで演奏することになっているベントラーカオルは、haikarahakutiの出番では鍵盤にギターにコーラスに…とマルチな活躍を見せる。
彼がギターソロを演奏する姿はなんだか新鮮で、コードでがちゃがちゃ弾くというよりも一音一音メロディを鳴らしていくそのスタイルは、クウチュウ戦での印象的なリフが目立つ鍵盤のプレイにも通ずるような印象を受けた。



二番手は曽我部恵一
こんな間近で観ることが出来たのは初めて! 

観客よりも向こう側、どこか遠くを見つめて演奏するその姿は、歌詞にまつわる風景を見ているような視線と表情だった。
こちら側も歌詞をしっとりと咀嚼している内に、その歌詞から思い起こす風景にトリップするような感覚を覚える。極私的な歌詞ながら、万人のどこかに引っかかる言葉や情景がそうさせるのだろうか。
夏の歌はそれぞれが思い描くいつかの夏にしっくりくるし、それが冬でも夕暮れでも朝でもしかり。


「どうも、曽我部です」と手短に挨拶をするだけで、何か胸に来るものがあった。これがオーラか…!
「カオルくんです!」とにこやかにデュオ相手を紹介をする。カオルのたどたどしい笑顔から緊張感が伝わってくる。がんばれ。


「おとなになんかならないで」を演奏した際の、真空パックされたかのようにピンと張り詰めたライブハウスの空気感が今でも忘れられない。
観客の集中が一点に向かうことによってそんな雰囲気が生まれたのだろうか。どの音も仕草も逃すまいとしているようだった。

曽我部の歌声とギターはひたすらに暖かく、暖炉のような柔らかな優しさがある。
対照的に、エレキギターのコードストロークからそのままソロに入ったときの彼の顔はまさに少年で、音を出すことの楽しさを表情一つで表していた。
「ギターソロは顔だ」とよく聞くのはこのことか。エフェクターをガチッと押すと人格が変わったように「ギターを演奏する少年」が顔に現れるその鮮やかな切り替えに驚かされる。

キーボードのカオルも、背景を描くことに集中していたような繊細なプレイから一転、ギターソロに真っ向勝負するようなプレイングが光る。向かい合って音をぶつけ合う二人の表情は音楽の楽しさを体現していた。


「ぼく、サニーデイサービスというバンドをやっているんですけど…」
と始まったMCに観客から笑いがこぼれる。
「いや、ほんとほんと。笑い事じゃないから」と続けた後に披露されたのは、今回の彼のセットリストで唯一シリアスでヒリヒリした肌触りであった「セツナ」。最前列のお客さんはMVで披露されているダンスを楽しそうに踊りながら聴いていた。






終演後に買い逃していたサニーデイサービスの新しいアルバム『Dance To You』を買う。サインまでいただいてしまった。
こちらを目を合わせながらがっちり握手してくれたときのあの笑顔は忘れられない。
やっぱりあの表情は少年だった。



そしてラストはクウチュウ戦
ニューアルバム『超能力セレナーデ』をリリースしてから初めてのライブである。

クウチュウ戦なりの演歌(だと勝手に思っている)の「アモーレ」からスタート!荒れ狂う日本海みたいなギターソロのイントロがたまらない。
そして分かっちゃいるけどメロディアス!
歌やギターや鍵盤は言わずもがな、フレーズの合間に主役となるベースにも、テクニカルなドラムのリフにも、いずれも歌があるのだ。 

最後のステージとなり、文字通り解放されたように暴れまわるKey.ベントラーカオルのパフォーマンス。荒ぶる指揮者のように手足を伸ばしたかと思えば、一瞬のブレイクで一回転するようなアクションもやってのける。この吹っ切れ具合はいつ見ても気持ち良い。


続けざまに演奏されたのは「インドのタクシー」
1stミニアルバム『コンパクト』から顕著になった、一瞬のリフに熱量を閉じ込めるカッコ良さ。さらにはそれを軸に新たな展開を次から次へと詰め込んだプチプログレ曲「インドのタクシー」。




合間に入る鳴き声はシンセで演奏されていたよ!


インドのタクシー行くぜ カレーの匂いの街へ
インドのタクシー行くぜ 埃が飛び交う街へ 

Vo./Gt.リヨがインドに行ったことをそのまんま描いたであろう、ナンセンスでゆるい歌詞と対照的にテクニカルな演奏を聴いて、興奮と共に「何やってんだこの人たち」という思いが入り混じって笑いがこぼれてしまう。


続いて披露されたのは「ぼくのことすき」
彼らの楽曲の中で青空を思い浮かべたのは初めてだ。これまでこんな爽やかに感じる曲があっただろうか。
ライブハウスでもその印象は変わらず、むしろ音源よりギアを上げたような演奏。夜の六本木にいるにも関わらず、真昼間の片田舎を駆け抜けるような気持ち良さ。

アルバムのリリースパーティーだけあって、収録曲全てを演奏してくれていた。
その中でも「お願いUFO」の重厚な浮遊感はいざ目の前で体感すると圧倒されるものがあった。想像していたものよりもデカいUFOが目の前に突然現れたような、不思議な威圧感のあるサウンド。
スロウでディープな楽曲なので、このリリース期間が終わればなかなかライブで聴く機会は少なくなってしまうのではないかと思う。
 

アルバムの中でも個人的に大好きな、神秘的なピアノが続く「魔法が解ける」も後半に披露された。空の上のような抜け具合に、差し込まれるドラムフィルのアクセント!
この夜ばかりは曽我部が演奏した「魔法をかけたよ」へのアンサーソングのような印象もあった。

もう言えない 君のあの日の秘密
戻れない 今夜魔法が解ける
(クウチュウ戦 魔法が解ける)


いつも思ってた この夢の向こう
たどりつくころは きっと夜だって
魔法かけたよ さっききみに
気付かなかっただろう まばたきの瞬間だった 
(曽我部恵一 魔法をかけたよ)







本編ラストは「白い十代」
斜め前で見ていた外国人のお客さんが待ってましたとばかりにテンションがぶち上がっていたのを思い出した。
やっぱりこういうのも聴きたいよね!数多ものライブで培われたバッキバキのアンサンブルが唸る。
 

アンコールでは新曲も披露された。
『コンパクト』収録の「作られた歌」で感じたような真っ当なバラード、だけどちょっと様子がおかしいぞ…?というような印象。その捻くれっぷりがやはり彼ららしい。

そして本当のラストは「追跡されてる」
このタイミングでキラーチューンをぶち込んでくる妙、全てを放出するようなパフォーマンス、潔い曲の短さも相まって怒濤のラストであった。


プログレ成分をポップスに昇華させるという、類を見ないポップセンスをつぎ込んで作られたキャッチーさと中毒性! 
コンスタントにリリースを続けるだけでも凄いことなのに、音源が届くたびに新しいクウチュウ戦を提示してくる。
変化を常に体現している彼らのスタイルそのものが、もうプログレではないか。
新曲も披露されて、ワンマンライブも終わり、まだまだ減速知らずの彼らが次はどんなクウチュウ戦を見せてくれるのか、楽しみでならない。

あっ、それにしてもベントラーカオルさん、3ステージお疲れ様でした!