このブログ「音楽八分目」について、邦楽インディーズレコメンドブログという定義もありメジャーアーティストについてはほとんど書こうと思っていなかった。

「そもそも俺が書かなくても魅力を知ってくれる人がいっぱい増えただろうし」と 敬遠してしまって音源を聴いてはいるけど、どこか遠のくものがあったりしたのだ。
ツイッターを見れば秀逸なコメントが140文字できっちりと収められているし、気になるアーティストを検索してはなるほどなぁ…と感心してしまうことばかりだった。

ただたまたま彼女の新曲公開のタイミングにたまたま居合わせ、その視聴後に、なんか分からんけど書かねば!と妙な焦りを感じて今に至る。そこに理由はなんにもないけれど、エネルギーを頂戴したのは確かだ。

そんなエネルギーをいただいたことにありがとうございますの気持ちを込めて、今回はそんな敬愛しまくりの大森靖子さんの新譜について久しぶりに書きます。
公開されているのは途中までなのだけど、名曲には変わりないのでぜひに。


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三ヶ月連続シングル企画【ワンダーロマンス三連福】の第一弾、『ピンクメトセラ/勹ッと<るSUMMER』として公開された新曲『ピンクメトセラ』

大森靖子自身も主役のジュレちゃんの声優を務める。Webアニメ「逃猫ジュレ」の主題歌である。
それに合わせた新衣装も猫フィーチャー。新しいMVで観られるよ!せーこにゃん!せーこにゃん!






プロデュース・編曲はサクライケンタ。彼が楽曲を手掛けるアイドルグループ、Maison book girlでもお馴染みの音色や変拍子を多用したトラック。もはやサクライケンタ節と言っても過言ではないだろう。


変拍子には緊張と緩和の気持ち良さがある。
「来るところに来ない勿体ぶる外しのカッコよさ」と、「外した後に合流した気持ち良さ」の両方が一瞬で楽しめる 。これをコンパクトにまとめてきたイントロや間奏だけでもなかなかのインパクトなのでは。

そしてさらにブクガよりも圧倒的に音数が増えたこのゴテゴテ感は、ちょっと下品なゴージャスさ(褒め言葉)すらある。
大森靖子とは直接関係ないけど、音数増えるとメジャーって思ってしまう素人感覚が未だに抜けない。ストリングスとか。

いやはや、でも好きなものならいくらでも身に着けて良いじゃないか。
学生時代に好きなアイドルのシールやらステッカーでノートや下敷きを彩ったり、折り畳みケータイにディズニーキャラクターのストラップをじゃらじゃら付けるのもよし。
そう言えば池袋とかでよく見る、バッグに推しキャラのバッジをびっっしり付けている人も、そういう類いの青春を今謳歌しているんだと思う。
それを言うと、リストバンドびっっしり付けてるロキノンリュックもそうか。
愛の塊と青春のタイミングを真っ向から否定することないじゃないか。これを繰り返すと多分人に優しくなれる。



それにしても冒頭のハープとストリングスの美しさ!
ポップな絵柄の中にもキラキラとした光沢を持つ背景にもリンクするような伴奏。
これをバックに歌われる歌詞にも注目してみたい。

「クラウド化」や「拡散希望」など、賞味期限のある言葉をフックにする彼女らしさもさることながら、「水色」という言葉の存在や、「痛い」の言葉尻から「大切」に繋がる『生kill the time 4 you、、♥』っぽさや、『マジックミラー』にも似たサビの収束感といい、自作のオマージュがふんだんに盛り込まれているのも見逃せない。

この過去の自分を糧として蓄え新しい物を産んでいく姿勢は、カルシウムの為に自らの抜け殻を食べる生物のグロテスクさや、彼女自身が常に「今」を更新しているイメージに繋がる。
これはインディーズの時からスピード感にこだわっていた彼女だからこそのものだ。
より効果的に、より多角的に、更新し続ける彼女の言葉とメロディはますます魅力を帯びる。



メトセラ(メトシェラ)とは聖書に登場する中で最も長寿の人物だそうだ。
969年生きたとされている彼の長寿っぷりは、メジャーデビュー以降一児の母となった彼女のテーマとも言える「生きていくこと」と密接に結び付く。


「めんどくさいことからすぐ逃げちゃう」

これは逃猫ジュレの予告動画での一言。ストレスが万病の原因ならばメトセラはどれだけ逃げ切っていられたのか。

辛い物事の真っ只中でも逃げて離れれば、そこはきっと見晴らしの良い地獄なのだろう。

見下ろせ見下ろせ。俯瞰してみれば大したことない地獄だってある。
見下ろせ見下ろせ。どーせ地獄はどこに行っても地獄だ。多分。

でもポケモンにも属性の相性があるように、意外とこの地獄イケるな…と思える瞬間があるはずなのでは。
日本は狭いし、地球は小さいし、見方によっては地獄もショボい。


ちなみにメトセラが死んだ後、ノアの方舟で知られる大洪水が起こったとされている。
そう考えると『ピンクメトセラ』はその人なりの「最後の砦」とも捉えることが出来そう。

この歌に惹かれる(勹″ッと<る)ものがあったのならば、大森靖子を離してはいけない。 
これまで彼女がそうしてきたように、これからもきっと逃げる術と逃げる為の勇気を与えてくれるだろう。
逃げて、生きて、楽しく死のうね。