一度音源を聴いてしまったり、一度ライブを観てしまったりしてからというもの、どうにも気になって離れないバンドっていうのがたまにある。

僕のレテパシーズというバンドが自分にとってまさにそのバンドであった。
この人にしか歌えない歌、この人たちでしか鳴らせない音楽。
たぶんそういう類のものが理由になっていて、iPodでついつい再生していたり、ライブハウスに足を運んだりしてしまうのだ。

この日もそう。
時間が出来たので慌てて飛び込み予約をして、下北沢へ滑り込んだ。

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若い男女はもちろんのこと、おじさんおばさんもいるぞこのライブハウス。


電波も入らない地下、お世辞にも綺麗とも言いがたいこれぞライブハウス!というイメージぴったりのハコ、下北沢SHELTERにぞろぞろと人が集まる。


その目的は僕のレテパシーズのワンマンライブ。

Vo.古宮大志を中心に結成されたロックバンド。
2013年に「ぴりぴりのファースト」というアルバムの発売後メンバーが大きく入れ替わり、2014年に再び改めて1stアルバムと銘打って「僕を殺せるのは僕だけさ」を発売。
さらにそこからベースが脱退してしまい…という常に流動的で波乱万丈ではありながら、音楽への野心に満ちたバンド。


そしてベースの新メンバーとして飯田裕(ex.SEBASTIAN X)の加入が発表されたのだった。


今回はそのお披露目ワンマンライブ。
題して、

「僕のレテパシーズワンマン!新ベース飯田裕登場!」
~ハローグッバイファックユー、でも前方の光~







平日ということに考慮してか20時からという遅めのスタート。スーツ姿の仕事終わりのようなサラリーマンの姿も見える。
20時15分頃、すっとフロアが暗くなり、SEとして流れた蛍の光の合唱に合わせて順々に登場したメンバー達。

片手を挙げて微笑みながら入場してきた新メンバーBa.飯田にフロアからも声が上がる。



「見知らぬ青年との会話」から本編スタート。
ロクにMCも挟まず次々と演奏される曲、曲、曲。
そんなの矢継ぎ早の中、楽曲終わりのノイズに混じりながらも丁寧にほとんどの曲のタイトルを告げる古宮大志の姿が印象的だった。
そう言えば今日はコンサートだって言ってたっけ。



事前に全てのセットリストを公開していた今回のワンマン。
メンバーそれぞれからの楽曲紹介を記したプログラムが入場時に配布されていた。


そんなクラシックの演奏会のように、指揮をするような手振りでバンドサウンドを操る古宮。ぼさぼさの髪と髭も合間って、なんらかの巨匠のような威厳があった。
いや、もしくは宗教の始祖か。



メンバーに視線を移す。
僕のレテパシーズのブログ内で古宮が「今のレテパのメンバーが最高」という話をユキコトーキョーにしていたという記事を思い出してまじまじと見てしまう。

改めて見てみると、どのメンバーも共通して演奏している顔がすごく良い!

ニコニコしながらそれでいて大胆にギターソロをかき鳴らすGt.はなえもん。
「ロマンチック」を始めとした粗暴でまっすぐな歌に疾走感と華を飾るKey.ユキコトーキョーの下唇をぐっと噛んだ打鍵。
Dr.アディーはパワフルなキメ一つ一つで気持ち良さそうに目を瞑る。
新メンバーのBa.飯田裕もまるで自分がボーカルかのようにこちらに歌詞を叫びながらベースを弾き倒す。スタジオでのリハの濃密さや彼がどれだけ僕のレテパシーズを愛しているかが一目で分かるようなプレイング。




古宮の歌詞の表現にはいつも驚かされる。表情豊かで繊細なことばの数々は彼の描いた景色が、こちら側にリアルにもドリーミーにも想起される。


中盤で披露された「北」という楽曲の歌詞をここで引用させていただく。



通りに座って ちょっと酔っ払って 見ていたものは車の流れ
一台一台の車の色を 僕はていねいに目に溶かし込んだ

ちょうど2千台を溶かし込んだ時 出来上がったのは緑がかった青
僕にはそれがなぜか青信号に見えたんだ 行くよ



彼の歌詞で個人的にとても好きな一節。

クラシックのコンサートみたい。と書いていて思い出したけれど、照明は全曲通して色を変えることなくステージを照らす黄色いライトのみだった。
でもそこに余計な色はきっと必要なかったのだと思う。
彼が描く北海道や高円寺や日常の原風景は、ライブハウスの原色を組み合わせた照明では表現できないであろうものばかりであった。



たしか「札幌ナンバーの最後」のラストだったと思う。

歌い切ってステージにへたり込んだ古宮をバックに演奏はアウトロに差し掛かり、音が伸びてぐちゃぐちゃになった後、最後の音にたどり着くためのドラムのカウントが入ったとき、古宮がふっと微笑んだのが見えた。


もしも今、キヨシローに愛し合ってるかと聞かれても
僕にはただヘラヘラと笑うしかできないだろう



その瞬間に、あぁこの人はやっと良いバンドメンバーに巡り会えたのだなぁとしみじみ感動したのであった。
こればかりはそれが何故そう感じたのか言葉にしにくい。どう書こうとしても嘘っぽくなってしまうのだ。
一つのライブの中で瞬間的に変わっていくステージの上の感情と表情、そしてそんな演奏の熱を積み重ねていった先に、彼らのこれまで歩んできた軌跡がこちら側へと滲み出ていたように思えた。
彼らの何を知っているわけでもないのだけれど。

これを体感したければやはりライブに行くしかないのだ。
こんな素人のライブレポートに似た何かから読み取れるほど単純なものではない。
そしてそれはその感情を追体験したいと思う自分も全く同じ立場だ。
だからどうしてもやっぱり結局彼らのライブにまた足を運ぶことになるだろう。




振り替えってみればMCもほとんど無く、アンコールも無し(はなえもんがアンコールを嫌うそう)。何にも後腐れを残さず終わったラスト。
ふと見回せば温泉上がりのように火照った興奮を見せる表情ばかりだ。



愛は風景だから 君もただ眺めてね
(愛は風景)



終盤に演奏されたバラードが頭に流れてきた。観客が口々に感想を言い合っている姿をぽけーっと眺めているときのこの幸福感も愛ゆえの景色なんじゃないか。
そして自分も耳鳴りと一緒に帰宅して、耳鳴りと一緒にベッドに入るのだった。

きーーーん。

いい夜だったなぁ。



彼らはBa.飯田を迎えた新しい布陣で早速セカンドアルバムの作成に取り掛かっているらしい。
今回演奏された20曲の中から10曲が収録されるとのこと。
既存の曲もガラリとアレンジを変化させていて新曲のような瑞々しさだった。
それらが果たしてどんな熱量を持ってパッケージングされるのか、めちゃくちゃ楽しみです。

1.見知らぬ青年との会話
2.やさしい人
3.ロックンロールじゃ踊れない
4.プレスカブのスピードで
5.ロマンチック
6.精神障害者は天使 ちほう老人は神様
7.君とスピッツ
8.夕焼けより
9.北
10.夏のしっぽ
11.東区が恋しくて
12.再会
13.君しかいない
14.17
15.札幌ナンバーの最後
16.空知
17.海へ行こうよ
18.ハローグッバイファックユー
19.愛は風景
20.ロックンロール