こたつフェスというものが世の中にはあってだな。


ちまちま夏フェスに行き出すようになってから久しい。
様々なバンドを観るのももちろん、魅力的なフードなんかもひっくるめた「みんな、これが夏フェスですよ!!」みたいな環境がとても素敵。
「SNSにどうぞ!!!」と言わんばかりの非日常は分かっちゃいるけどやっぱり好きで。そこでしか体験できないもので溢れかえったイベントはやっぱり行きたくなってしまうもの。

そんなさなか、サマーソニックで見かけた『サイレントディスコ』という文字。
無音の空間の中、ヘッドフォンでDJプレイを楽しみつつ踊るというなんともシュールなイベント。
なんじゃそりゃと思いつつもその日は結局別のステージに足を運んでしまっていたのだった。


そうして話は戻ってこたつフェス。
こたつ×サイレントディスコというまさにカオスなイベント。

想像はなんとなく出来る…。でもDJの熱量とこたつの温度は足を入れてみないと分からないではないか!

サイレントディスコなるものを体験するのにもうってつけなこの機会を狙って、一人でそそくさと参加してみたのだった。



会場は下北沢のStay Happyというカフェ。
南口の商店街を横に抜けてすぐ、住宅街の入り口にひっそりと佇む隠れ家的なお店。


カウンターの他、窓際には町並みを緩く見渡せるテーブル席、そしてこのイベントの顔である、こたつが畳座敷の上に二つ。
小さなロフトも備え付けられていて、その上も畳座敷。もちろんこたつの他、さらにハンモックまで備え付けられている。

リラックス、ゆるゆる、ぐでぐでを体現したようなコンセプトカフェ。
「こういうカフェを見つけてだらけるの好きなんですよー」なんて会話も聞こえてきた。
ちょっと古着屋巡りに疲れたとか、自分の世界に閉じこもって作業したい、とかそういうゆとりドリームを叶えてくれそうな雰囲気。

今回の内容が短い動画にまとめられていたので早速ここで。
カフェの雰囲気なんかはこれで一目瞭然かと。




開催時刻である午前11時過ぎ、主催者さんからのイベントについての説明が。

まずはこのイベントのキモであるワイヤレスヘッドホンの使い方について。
と言ってもイヤーパッドに付いている電源ボタンを長押ししてスイッチを入れるのと、ホイールで音量を調整することくらいの簡単仕様!

電源を入れるとすでにもう音楽がかかっていた。もうDJが始まっていたということだ。
音楽が聴こえるようになった人から順番に「おぉー」という声がところどころから上がってくるのが面白い。


「このイベント、でんぱ組.incのラジオでも取り上げていただいたんですけど、赤い人(古川未鈴)いるじゃないですか。あの人に知らない人とコタツ入るのヤダってディスられたんです。笑 でもまぁそうじゃない人もいると思うので相席歓迎でお願いします」

主催者からのご挨拶。
お友達同士だと思っていた女子二人組が実は初対面で早速相席でおしゃべりしていたことも後々分かる。
こたつの存在一つで人の距離感ってこうも変わったりするのか。

「このイベント来たの初めてですか?」
向かいの座布団に座ったお兄さんが話しかけてくれた。
このイベント自体の得体の知れなさも話しかけやすい一因かも。



初っ端を飾るのは、新宿MARZを拠点に様々なフェスなど全国を飛び回るDJクルー、FREE THROWからDJタイラダイスケ
テーブルの上に機材を広げ、椅子に座ってのパフォーマンス。ゆるい、ゆるいぞ。

アーバンかつファンキーな洋邦ミックスセッティング。
Jackson 5や星野源といった有名どころから、Awesome City Clubや平賀さち枝、Charm Parkなどインディーズやメジャー出始めくらいの新進気鋭のアーティストまで押さえた、アーバンかつファンキーな洋邦ミックスセッティング。
そして共通してBPMはそこまで速くない。心臓の鼓動に近いくらいの心地よい速度が気持ちを高揚させてくれる。




「外に出ても聴こえることが判明したので、出入り自由で楽しんで下さい。笑」
マイクを通してヘッドフォンから聞こえてくる主催者の声。ゆるい、ゆるいぞ。
(ちなみにさすがに外出したお客さんはいなかったです)


ヘッドフォンを嵌めて没入する人もいれば、首元にぶらさげて音漏れとしてDJを楽しみつつ、友人との会話を弾ませる人も。
ホットドリンクを両手で持ちながら、ちまちま飲む女子。最高じゃないすか。
あっ僕はアルコールです。せっかくなんで。


今思い付いただけなんですけど、と前置きして提案された、#こたつフェスのハッシュタグ。
見ず知らずに人(でもすぐそばにいる人)とツイッター上でコミュニケーションを図る。時代すごい。

「お腹空いてきた」という自分のツイートを拾ってもらって、12時にお昼ご飯のアナウンスもあり。

昼食の前に、ヘッドフォンの音量を最大にしたまま、身振り手振りでお互いの誕生日を教えあい、誕生日順に並んでみようという簡単なゲームを。
見ず知らずの人と困惑しながらのやり取り、でも意外とみんな並べていて面白い。

そしてその誕生日ごとに大雑把に分かれる席替えタイム。


そしてそのまま昼食に。
内容はサラダやおさつチップスやミックスビーンズなどオーガニックなもの。

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なにに気を使ってか遠慮気味の盛り。
写真の後、ペンネやタンドリーチキンも加わりました◎。
こんな組み合わせ、いわゆるカフェ女子の大好物でしょう。インスタグラムもはかどるってもんです(やってない)。
ちなみにバイキングのように好きに取ることができて、こちらももちろん料金に含まれております。


昼食時はDJプレイは無しなので、このタイミングで色々お話してみたり。
さっきのゲームも手伝ってかこの環境か、リラックスして初対面の人と交流するような姿も多い。
ぼっちでも大丈夫そうです。そのあたりも主催者の方が結構気を使ってくれている印象でした。



13時からはもう一人のDJであるDJ BLUE
男女ツインボーカルユニットENSENBLE REATAURANTにも所属する彼は、自身も作曲をしているバイノーラル(立体音響)を駆使したまさにヘッドフォンのためのセットリスト。
フィールドレコーディングされた街の音が右から左へと抜けていく感覚。

EDM(と言うほど強い音圧でもないけれど)とサンプリングされた信号機や電車の音が混ぜ込まれている。
シンプルにループするビートにカオスパッドでエフェクトをその場で付けて遊んでいくスタイル。

カオスパッド楽しそうだよなぁ。遠目からついつい眺めてしまう。でも今俺はこたつの中だ。ぬくぬく。


「ご飯食べて満腹になってからのこの時間が勝負なんですよ」
席替えによって席が近くなった主催の雨宮さんが話してくれた。

それにしても大学生のような若さだぞ…この人。聞くところによると一人でこういったイベントを運営しているらしい。参加者全員に貸し出されたワイヤレスヘッドフォンは自腹とのこと。
ぜひ今度色々お話をお伺いしたい。


この時間がまさに睡眠欲との戦いとのこと。でも寝てもいいんですよこのイベント。最高じゃないですか。早速寝ているお客さんもちらほらと。
昼下がりにお酒飲んで音楽を聴きながらこたつで寝る。
どうすか、こうやって文章にするだけでも溢れてくる幸福感…。



さて、お客さん方も何か作業をするようにPCをいじる人もいれば、ひたすらスマホをいじる人も多い。
でもみんな音楽は共有していて、遠くで足でリズムをとっている人も自分が今聴いている音楽と同じリズムなのだ。もはや当たり前だけど変な感じ。

ロフトからは歓声が聞こえる。カフェ備え付けのジェンガで遊んでみたい。こたつジェンガ。
もちろんさっきまでは他人だった人たちが一つのこたつを共有して、同じ音楽を聴いて同じゲームで遊んでいる。
でも音楽を聴く環境としては孤立していて…。この不思議なニュアンス。


14時前にイベントは終了、ヘッドフォンを返却してそれぞれが下北沢の街に繰り出していく。
まだ14時前ですよ!何しますかこれから。この浮き立つ気持ちはアルコールだけではない。

サイレントディスコの持つシュールさが、狭い空間とこたつという環境の前にして究極のリラックス体験に変わった。
ゆるゆる、ぐでぐで、すやすや、もぐもぐ。人間のあらゆる欲求を加速させてくれるDJの音楽は、「〇〇しちまえよ…!」と耳元で囁く悪魔のようだ。
そんな声に負けたっていいじゃない。たまには。


ちなみに次回開催も2月21日にすでに決定している。

詳細はこちら↓
「こたつフェス ファイナル」
http://peatix.com/event/143414

もう冬も終わりですし、ファイナル。しかも今度は初の夜開催らしいです。
欲求に身を任せたいあなた、おすすめします。