最近は僕の追いかけているようなインディーズバンドと、地下アイドルが対バンする機会をよく見る。
異種格闘技戦のようなそれは、普段バンドしか見ていなかった自分にとっては何もかも新鮮で、地下アイドルとは言ったものの楽曲クオリティの高さやステージングの妙、そして何よりもファンの熱量、見れば見るほど気になる存在だった。

そんな地下アイドル界隈で一番気になっていたのが、あヴぁんだんどというグループ。
どんなアイドルかという詳細は下に書くけれど、運営の方がたまたま知り合いだったこともあり立ち上げ当初からちょこちょこライブを観させてもらっていたのだった。

昨年発売された1stミニアルバム「ピクニック at nerd park」の音源がすこぶる良くて、以前このブログで公開した2015年ベストディスクに選ばせていただいたほど。
知り合いがどーのとか関係なく、このグループに惹かれていってることに気付くのはそう遅くはなかった。

そんな彼女たちが結成1年半を経て初めてのワンマンライブ。
これは見逃すわけにはいかない。

普段書いているバンド関係とは全く異なるベクトルからの記事になるけれど、ご存知ない方もせっかくなので一曲だけでも聴いてみては。僕も楽曲の良さから入りました。


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というわけで、あヴぁんだんどのライブに行ってきた。

『見捨てられたアイドル』というキャッチフレーズが示すように、元々別のアイドルグループの発足の際、そのオーディションに落ちてしまった女の子を集めて作られたのがこのグループ。

発足したのはいいものの、歌も振付も教える人がおらず…という状況の中、自分たちだけでここまで這い上がってきた過去。
その辺りはOTOTOYのインタビューhttp://ototoy.jp/feature/20151130を読んでもらうのがベストかと。

そんな地道な活動の末、ビョークのリミックスも手掛けたアメリカの電子音楽デュオMatmos来日公演に出演を果たしたり、2月にはノイズバンド非常階段とのコラボ(あヴぁ階段)での音源も発売予定。さらにはその非常階段と共にアメリカツアーまで予定している彼女たち。

2015年11月30日には待望の1stミニアルバム『ピクニック at the nerd park』をリリース。
今回はそのリリースパーティでもあり、初めてのワンマンライブだったのだ。
結成から怒濤の1年半を経て、たどり着いた場所は渋谷WWW。キャパ約400人の大箱である。





開場は18:30。少し遅れて到着したのだけれど、すでに物販は長蛇の列。
ワンマン特製のフォトブックもあり、なんだか来日アーティストのよう。
メンバーの寄せ書きや簡単なインタビューが写真と一緒に掲載されており、限定の記念品としては勿体ないクオリティ。こういうの欲しいよね。アイドルに限らず。

会場内はアルバム名にちなんでピクニックを思わせる芝生が装飾されていて、賑やかでほのぼのした雰囲気。
空中に張られたラップをキャンバスに仕立てた「セログラフ」の寄せ書きコーナーも。
セログラフは以前、シブカル祭の展示会である「五戒再開」のあヴぁんだんどのブースで採用されていて、ファンの方ならば、おっこれは。と当時を思い出したに違いない。

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本番前にも関わらずメンバーが客席に登場し、チェキ撮影会が行われていた。
服飾ブランドKEISUKE YOSHIDAとあヴぁんだんどがコラボしたラグランシャツを着用して、撮影に臨んだメンバー。
そう言えばKEISUKE YOSHIDAはオタクをフィーチャーしたようなナードなコレクションを昨年展開していた。
このしっくりくる感じの納得コラボレーション。

撮影した後、一人一人と握手を交わして見送るときにメンバーが口々に「今日は楽しもうね!」と話していたのが印象的だった。「今日は楽しんでね!」ではなく。
ファンと一緒にステージを作り上げようとする姿勢、当たり前だけどアイドルしかしっかりやってないんじゃないかこれ。

そして思っていたよりも女性のお客さんも多かった。女子高生が制服で駆けつけていたり、友達同士でTシャツの色を悩んでいたりして微笑ましい。 同性から支持されると売れる傾向にあるような気がしているのだけど、果たしてどうだろう。



20時ちょうど。客電が落ち暗くなったところに、弦楽器のピチカートが瑞々しいお馴染みのSEと共に登場した4人。 

最初に披露されたのは挨拶代わりの「あヴぁんだんど」
中毒性のある繰り返しに一曲目から早速ファンも掛け声やMIXで応える。

そんな熱量がさらに炸裂したのが夏休みソング「勝手にしやがれ」だった。
音源では紫担当の東雲好(しののめこのみ)のオイコールがあヴぁらしい緩さを醸し出していたけれど、ここではその煽りも、それに呼応したファンもとてつもない迫力だった。
これだけお互いの熱量をぶつけ合う構図はなかなかバンドシーンでも見られないもの。

「世界で一番可愛いアイドル、私たち?」
「「「「「あヴぁんだんどー‼︎‼︎」」」」」


観客の声援がびりびりと体に届いて思わず涙ぐんでしまった。
あんなにぱらぱらの目黒鹿鳴館だったのに…なんて(メンバー嫌々の)セーラー服でライブを行っていた昔のことをつい思い出してしまう。





笑顔から一転、キッと締まった表情を見せたのは「DB×PG」
特に黄色担当小日向夏季(こひなたなつき)のギャップが秀逸!
一本線で目を描けてしまうようなぺたりとキュートな笑顔を見せる彼女も、この曲ではフロアを睨むような真剣な表情でしっとりと聴かせる。そのギャップにすっかりやられてしまった。



アルバムの中でも異色のインダストリアルラップ(と勝手に思っている)「西鶴一代女」は同名の日本映画をモチーフにした楽曲。
概要はここが明るいかも。
http://nihon.eigajiten.com/saikaku.htm


東雲の情感込められた語りの後、みずいろ担当星なゆた


I don't know, but you don't care.

という歌のリフレインがなんだかひらがなに聴こえる声の緩さ。あいどんのーばっゆどんけあ。
この声こそがまさに彼女の武器。この曲に限らずなんだか彼女が歌うことでその歌詞の元々の意味合いが少し違ったように聴こえるときがある。
DJふかしぎくんというソロ名義でもオリジナル作品を残している彼女の声は、会場に柔らかくも皮肉っぽく響く。



「西鶴一代女」の終了後メンバーが舞台袖にはけ、ステージ後ろの巨大スクリーンのカーテンが静かに開く。


そこに映し出されたのは彼女たち自身がこれまでを振り返ったインタビュー。そしてこれまでの活動を写真で振り返ったスライドショー。
最初期の私服で野外ライブをやっていたようなシーンから、青森のフェス夏の魔物での熱狂のステージが収められた写真まで、これまで着々と積み上げてきた歴史が余すところなく綴られる。



印象的だったのは星なゆたのインタビューでの、

「最初はやる気なかったけど、私たちいけるなって思ったから、こうしたら沢山の人に聴いてもらえるのではとアイデアを出したりするようになった」
(要約)

という言葉。
まさに前述したコラボやら対バンの熱さの加速度が彼女たち自身のモチベーションとなり、相乗効果でさらに良い活動に繋がる。
運営一辺倒のアイドルグループが多い印象であったが、感情の起伏にムラがありステージでもふてくされたような表情をたまに見せたりしてしまう彼女自身をここまでさせたあヴぁんだんどのDIY精神が垣間見えた瞬間であったと思う。


DIYと言えば、べに色担当の宇佐蔵べに(うさくらべに)は振付も担当している。
新しい衣装で再登場した彼女たちへの声援を聴いた宇佐蔵は「アイドルになれたねー…」としみじみ話していた。今回のワンマンライブでは初めて母親も観に来ていたそう。
赤いサイリウムと共にリフトなりケチャなりされて、娘が推される姿は僕だったら泣いてしまうかも知れない。
そんな感動的なステージであったのも間違いない。


東雲も別のMCで

「ただのアイドルオタだった私が、ステージの上からの景色はどんなものなんだろうと思ってアイドルをやらせてもらっていたんですけど、このステージの上からの景色、最高です!」


と満面の笑みで話していた。


AKBの盛り上がり以来、地下アイドルも含めてアイドル飽和の現状で、普通の女の子がアイドルになるということは全く当たり前のように思っていたのだけれど、いざそんなアイドルになった本人の声を聞くと、普通の生活とアイドルのステージとのギャップをまざまざと感じられる。
そうか、彼女たちも普通の学生さんだったんだ。

この東雲のMCも個人的には強く響き、これもしかしたら年頃の女のコなんかはこの一言がきっかけでアイドルに憧れてしまうんじゃないかと惹きこまれるものがあった。


スライドショーの後、新衣装に着替えた彼女たちが披露したのはまさにこのタイミングでしかないような「点滅ばいばい」
詩人の最果タヒが彼女たちのために書き下ろした歌詞は、まさに見捨てられたアイドルというコンセプトにぴったりなもの。


見捨てられ 強くなるなんてバカみたいだね


と歌われるサビ。
これを歌いながら彼女たちは見捨てられた過去があってこそ、このサイリウムで彩られた景色をどう噛み締めたのだろうか。
メンバー自身も話していたけれど、やっぱり彼女たちは強くなった。バカみたいだけど、今となってはどのきっかけも欠けてはならない尊いものだったのかも知れない。





さらに新曲「Magical Symphonic Girl」も披露された。
シンガーソングライターのつるうちはなが作曲を手掛け、つるうちとメンバーが詩を共作したその新曲は、これまでのしっとりとした流れを一気に吹き飛ばす勢いのある真っ当にキュートなアイドルソングであった。
実はそういった類の楽曲はあヴぁんだんどにとっては物珍しい。これまでじっくり聴いていたファンも、初披露にも関わらずMIXや手拍子で応える。

サビを4人のユニゾンで歌った迫力とダンスの気迫は今でも目に焼き付いている。

本編ラストは「てのひら」
握手会をモチーフにしたこの名曲、運営メンバーの一人でもあり作詞作曲を手掛けた佐々木二郎のグッドメロディが光る。 この曲きっかけでファンになった人も少なくないんじゃないか。

東雲は来てくれたファン一人一人とてのひらを交わすように、ステージを降りてハイタッチをして周る。



メンバーが舞台を去った後、ファンが声を枯らしながら叫ぶアンコールが鳴り止まない。
そんな中、再びスクリーンに映し出されたのは、前述したアメリカツアーの日程発表と、映画×音楽をコンセプトに掲げるMOOSIC LABとのコラボレーションによるあヴぁんだんど主演映画の決定のお知らせ!


これまでの加速度を失うことなく2016年も駆け抜けてくれそうな彼女たち、アンコールでは「文鳥」「Feedback Friday」を披露した。

シングルカットもされている「文鳥」、「言いたいことがあるんだよ!…」といういわゆる[ガチ恋口上]がファンから叫ばれるアウトロ。ファン一人一人の顔を見るようにそれを聞きながらニコニコと踊る彼女たちのステージとフロアを合わせてすこぶる感動的な光景だったのを覚えている。

最後の楽曲。ステージを右に左に駆け回りながら「月曜!火曜!水曜!…」とオリジナルのMIXを一緒に叫ぶ星なゆたは、その「Feedback Friday」のクライマックスにはファンの上をサーフしながら歌い続けていた。そこには神々しさすらあった。


あっという間の時間だった。

涙をこらえるような表情を浮かべながらも気丈として笑顔を振る舞う最後の挨拶。 溢れんばかりの拍手が会場に響く。
ファンからメンバーそれぞれに担当カラーで仕上げられた花束が手渡されたラストだった。



このワンマンにおいて、タイトルとしても掲げていたピクニックとはなんだったのだろうと考えていた。
渋谷WWWという大きな芝生の上で、色々な味付けのお弁当を披露した彼女たち。
でもそのお弁当を食べてくれる人がいないとピクニックは成り立たない。
力作揃いのお弁当と、美味しい表情を浮かべて、時には「美味しい!」とちゃんと口に出して食べてくれるファン一人一人の熱量とが見事にぶつかり合った、ハッピーでピースフルなピクニックだったんじゃないか。


さて、お腹いっぱいになったら次の場所に出掛けよう。
2016年になっても目が離せない存在であることには変わりない。
ひょっとして彼女たちを追いかける先は面白いこと尽くしに違いない。そう確信させてくれるワンマンライブであった。