連続インタビュー企画の第三弾です。
お相手はシンガーソングライターのbutajiさん!


butaji


エレクトロニカにアコースティックギターと独特の優しい歌声を混ぜた前作【シティーボーイ☆】から、バンドサウンドを合流させて外側というコンセプトと共に昇華したアルバム【アウトサイド】が本当に素晴らしく、以前からお話してみたい人の内の一人であった。

未聴の方はインタビュー前半に音源を掲載させていただいているので、そこからぜひ。
僕は歌単体の力にこんなに惹かれたのはもしかしたら初めてかも知れない。


いきなりの私事で恐縮なのだけれど、シンガーソングライターに最近ものすごく興味がある。
弾き語りの音楽。というよりは、「シンガーソングライターという人」そのものについて。

七尾旅人は先月、渋谷WWWにて「兵士A」という特殊ワンマンを行った。
兵士Aという人物を七尾自らが演じ、歌と映像を積み重ねてただただその一人の兵士の物語を紡いだものだった。

自身の今まさに興味が向いているものと、とことん向き合って歌詞を作り音楽に乗せる。
脳内の景色、それを通じて生まれた主張を音楽に組み替える。
それはいわゆるバンドの作曲活動とはきっと大きく異なるはず。


8月にアルバム【アウトサイド】を発売したbutajiは、街から離れていくことという意味でのアンチシティポップを提唱した。
ポジティブな意志を込めたこの一枚を発売して二ヶ月後経ち、ツイッター上で「長い創作活動に入る」という旨を呟いていた。
これはまさにシンガーソングライターの転機を目の当たりにしているのではないだろうか。


大きな意志を持ったアルバムを発売したあと、今、彼の考えるものが非常に気になった。
アルバムについての話も交えながら、これからのbutajiについてを探っていく。

ちなみにお酒も交えながら…。駒込の居酒屋にて。


b…butaji

都内で活動する藤原幹によるソロユニットがbutaji。
BandcampでEP『­四季』や自主盤『シティーボーイ☆』を発表する他、SoundCloudに多数音源を発表するシンガーソングライター。
コンセプトだてた楽曲制作が得意で、フォーキーなものから色鮮やかなシンセサウンドを取り入れたエレクトロなトラックまで幅広く、BECKや七尾旅人を影響に受けている。USインディなどにも通じる要素も抑えており、高い楽曲のクオリティーを誇る。
何といっても、彼の魅力は独特の歌声。8月5日、初となる全国流通アルバム『アウトサイド』をリリース。


https://butaji.bandcamp.com/
https://soundcloud.com/butaji


ふ…ふじーよしたか(音楽八分目)



ふ いいですね、この居酒屋でインタビューするスタイル。


b  いいですよね。こういう飲んでるときに言っちゃいけないやつ言うのやりたかった。笑


ふ 期待してます。笑

それにしてもインタビューとか増えたんじゃないですか? アルバムが発売されてからの反響とかどうですか?


b  どうなんですかね?いやー分かんないですよ。
でも「良かったです」って言われるので。「あぁそれは良かった」って。笑

ほんと他人事みたいなもんですよ。


ふ 【アウトサイド】に関しては録り終わってから発売するまでに間がありましたよね。
制作期間は結構長かったと聞いたんですけども。


b  ネタは前からあったけども、それを完成に持っていくギリギリまでやってましたね。
だから8月に出すっていう想定は全くなくて、整ったから8月に出そうってなった感じですね。


ふ レーベルが待ってくれたというか。


b   いや、制作が被ってたんです。【探偵物語】っていうEP(入江陽との共作)が出て、それを挟んでたのでちょっと伸ばしたんですよね。


ふ すごいですよね、あのコラボ。レーベルを通じて、「二人でやったら面白いんじゃないの?」と。


b  そうそう。発売のタイミングを真ん中くらいにして一枚EPを出したらいいんじゃないかということで。


ふ 実際にやってみてどうでした?デュエットなんて初めてですよね。


b  そうですね。楽しかったです。良いものが作れました。
「ああいうことも出来ますよ!」と言った感じですね。 リードの曲もあり、他を聴いてみると色んなレパートリーがあって、全曲良いみたいなものが出来てると思うんですよね。






ふ その話と関連してbutajiさんの作品を見ると、前作の【シティーボーイ☆】のベッドルームミュージックと呼ばれた宅録重視の音源から、今作の【アウトサイド】はバンドを誘って広がった世界に行ったと思うんですが、それを聴いてみて、最初に成長…というか進化を感じたんです。
でもよくよく考えてみると、ただ引き出しを一つ開けてくれただけなんじゃないかと思ったんですよね。
元々butajiさんの中ではそういう想定があって、前は宅録でやったけど、【アウトサイド】に込めた外への想いと共に、バンドの引き出しが開いたのかなって思ったんですけど。

b  元々有った部分と得た部分があるんですよね。
僕みたいな作風でやってるとガラッと変わっていくから、何が成長かっていうのがあんまり分からないんですけど、何かが伸びてると思うんですよね。
だから引き出しが元々僕の中にあって、それが開いただけじゃなくて、足されたって感じはあるのかなっていう。


ふ あえて意識して変えた部分ってのはあるんですか?


b  結構意識的に。人の意見をすごく聞きましたからね。


ふ 前まではほとんどお一人でやっていたんですもんね。


b  そうですね。作ってる最中に誰からも意見聞かなかったですし。


ふ そこからホーン隊とか入れているっていうのがすごい新鮮で。開いた感じがより表れているようでした。
曲を作った段階である程度その編成とか浮かんでるわけですか?


b  まぁ色々パターンがあります。『ギター』については最初からこういうの入れたいっていうのはありますね。





ふ 宅録とそうじゃない音の作り方の棲み分けとかってあったりしますか?
「これは打ち込みだ、これはバンドだ」っていうのは。


b  どっちにしろ無理やり変えることも出来るんです。だからあんまり明確な基準はないのかも知れないですね。時期とか、気分とかですかね。 もしかしたら数年後にリアレンジとかしたら面白いですよね。


ふ あー面白いですね!聴きたいです。


b  あり得ますよそういうことは。


ふ 前の音源で言うと、『東京タワーとスカイツリー』なんかは今でもライブでやられてるじゃないですか。ライブを通して変わっていったりとかすることも。

b  ライブはまた全然違いますからね。音源は再現できないっていうのが前提にあるので、全然違う作風になってて。
最近はシーケンサーを導入し始めてて、この前もそれを使ってやりました。
使い慣れてるパソコンで音源を作るんじゃなくて、ハードっていう制限がある中での音楽の選択になってるので、出来ないことも多いけどすごく面白い。




~同じ歌詞なんですが現実味が増してるというか、意味が強くなってる~


ふ 【アウトサイド】の話になってしまうんですけど、『Outside』という曲、タイトル曲だーって聴くとフィールドレコーディングとインストで。ここでこう来るんだぁ…と思いまして。笑

b  不思議ですよね。メジャーの作品じゃあり得ない。笑
『Light』をギターの弾き語りでやるっていうのは決まってたので、曲順から考えて一呼吸置く曲が必要だって思ったんですよ。
その前のトラックは『すべての明かりが消えたあと』って曲なんですけど、その後から『Light』に行く間に一呼吸置きたいって思って、インストの曲を挟んだんです。


ふ でもそれがタイトル曲だったっていうのが面白いですよね。


b  そうですよねぇ。捻くれてますよね。笑


ふ え、そのインスト曲のタイトルを『Outside』に決めたときはアルバム名も【アウトサイド】って決まってたんですか?


b  うん、アウトサイドだった。


ふ あぁ~捻くれてますねぇ!笑 「これタイトルにしてやろう…!」みたいな。笑


b  笑
『Outside』については納期がギリギリだったのに凄い良いメロディが浮かんだので満足です。
フィールドレコーディングの音として、あれはエレベーターの内側と外側の音を録音してるんです。
上野の遊歩道のエレベーターですね。


ふ おー!なるほど。だからピンポーンとか鳴るんですね。


b  そう、あれはエレベーターの開く音なんですよ。切り替わる地点みたいな。


ふ あの曲を境に…アルバムが分かれているイメージなのでしょうか。


b  多分『Light』、『ギター』で今後の立ち振る舞いみたいなこと、どこに向かっていくのかってことについて示唆を与えているような内容になっているんだと思うんですよね。
その切り替えではあると思う。


ふ 階段を登っていくという歌詞もありますしね。
アルバム最後にその歌詞で終わっていくっていうのも、butajiはちゃんと続き続けていくんだなっていう証のような感じで。

『Light』に関しても、そういう意味では象徴的な楽曲だと思います。


b  「奏でる地形ごとのソウルミュージック」って言うしね。


ふ ほんと、その一言に尽きますね。アルバム全てを表しているというか、一言の重みがあります。


b あの曲は五年前に作ったんですよ。
同じ歌詞なんですが現実味が増しているというか、意味が強くなっている。だからこそ弾き語りで入れたかった。


ふ やはり弾き語りの方が強く伝わると。


b  うん。で、あの曲だけ一発録りなので、ボーカルもライブに近いんですよね。


ふ あの曲は強さはあるのに、しみじみしちゃうっていうのが不思議で。


b  ボーッとしちゃうんですかね。


ふ 抜かれちゃうんでしょうね。持ってかれる感じはライブを見ていてもあります。気付いたら曲が終わってる、みたいな。





~歌詞もそらで覚えていて、実際深いことを考えたこともないくらいの体に染み付いているような曲~


b  実は昨日アートワークをやっていただいた我喜屋位瑳務(がきやいさむ)さんの展示に行ってきて。 
俺はあのイラストをお願いした経緯として、渋谷WWWでのDUM-DUM PARTYを我喜屋さんが描いていて。
そのフライヤーを見て、「この人にします」ってレーベルに。
その結果、素晴らしいあの絵が。


ふ CINRAのインタビューにもありましたけれども、あれは全線開通した常磐道をモチーフにしていて。


b  そうですね。その新聞記事の写真を資料としてお見せした、という程度ですけれどね。
アルバムのテーマであった「移動するということ」を考え始めたきっかけというか、そういう事故があったから、そういう時代性のことも頭にはあったんですよね。


実を言うと、【シティーボーイ☆】についても「震災」ということがテーマになっていて。
作品を通して、東京のネオンがギラギラした感じっていうことをエレクトロ風の作風で表現したかったんです。
そこに、その東京の風景を数年後の俯瞰として空中から見ているという視点にあるのが、『すべてが変わった』っていう曲と、一番最後の『回想シーン』です。
『すべてが変わった』っていうのはどこかやっぱり事故のことも入っているんですよね。
そこに対する答えでもあったんですよね。答えというか分からないんですけど。


ふ 答えも変わっていきますからね。その時の自分の答えというか。


b  『ギター』の歌詞で言っているのは、理想形というか、どうしたら豊かになれるだろうと。
歌詞がなくなっても歌い継がれる童謡とかあるじゃないですか。そういうものを持って遠くに行くというか旅に出るというか、そういうことが出来るのであれば、それはすごく尊いものだなぁという気持ちで書いたんです。


ふ あの曲は中盤のコーラスもすごく良くて。あれが【アウトサイド】という名前のアルバムの最後に入っているというだけでもすごい希望が見える感じがあります。勇気もらえる感じが。


b そうなんですよね。
歌詞もそらで覚えていて、実際深いことを考えたこともないくらいの体に染み付いているような曲を携えて外側に出て行くという。 そうあればいいなと思いますけどね。



~十数年のスパンで見ていかないといけない作品だと思いますね~


ふ 【アウトサイド】を経て曲の聴き方って何か変わったりとかしました?


b  いやぁー…新しい曲を聴かなくなりましたねぇ…。
CD買って、聴かないでずっと置いとくとか。笑


ふ 気になって買ってはいるんですよね。


b  そう、そうなんですよ。買ってはいるんですけど…クレジットだけ読むとかそういうことをしちゃうんですよねぇ…。ほんとよくない。
まだタイミングがないだけで…今晩、今晩聴こうと思う!笑

ふ どこか自分のところに応用できそうなことはありますよね。きっと。


b  うん、そうですねぇ。応用出来たらいいと常に思ってますからね。常に学びたいとは思ってる。
作品を聴く基準がもう勇気を貰えるか貰えないかで。笑
クレジット読むとかも勇気が貰えるからなんですよ。


ふ あ、そこに通じるんですね!笑


b  「この人一人でやってもこれだけ色んな人と関われて、この人は色んなスケジュールの調整とかコストとか…もしかしたら一人の力でやってらっしゃるかも知れない。こういう事が今の時代大切なんだな。よし頑張ろう!」と。笑


ふ 笑 でもそれでポジティブに働きかけてますからね!
今作でもアルバム一枚を通してポジティブな方向に振ったっていうのは後々の自分を励ますのかなとも思います。後々のbutaji自身を。


b  なるほどね!すごいこと言いますね!笑
そんなことはもちろん考えちゃいないですけど、【アウトサイド】に関しては十数年のスパンで見ていかないといけない作品だと思いますね。自分自身そう思いました。


ふ もう童謡みたいになってしまえばいいですよね。


b  僕の作品がそういうのかは分からないけれど、そういうメロディは目指してました。


ふ やっぱり単純にメロディ一つを見ても万人に響くものはあると思うんですよね。
【アウトサイド】が名盤であることに関しては変わりないです。
さらっと聴けるわりには重さが伝わってくるというか。その重さって曲の長さとかじゃないんだなって。


b  それ大事ですよね!すごい良いことを…。
今作なんですけど、曲と曲の間が繋がってることがないんですよ。一曲一曲別々に別れてるんです。
前作では繋がってる部分があったんですけど、今作は童謡とかそういうところにどうやったら近づけるかなってことを考えたからなんですよね。


ふ 一曲一曲が確かに強くて、それぞれが俺はこういう曲なんだって誇示している感じがあります。
さらっと聴けるものから大曲のようなものまで揃っているというか。
エレクトロニカもあれば弾き語りもありバンドもあり、butajiの美味しいとこどりな感じはありますね。


b  あの作品はね、もうちょっと長い目で見てやって下さい。
振り返ると何があったかとか思い出せないですね。ただ本当に良い作品を作ろうという目的を貫いたんです。
だからさっきから勇気を貰えると言ってますけど、本当に一人で勝負している状態で。
ただ今出来ることをやっていくだけというか、興味が向くまま。


ふ 結局その興味の連なりで作風が変わっていくのはシンガーソングライターとしてすごく面白いと思うんですよ。だから純粋に応援していきたいですよね。その人となりを。


b  人となりがそのまんま出るのがシンガーソングライターですしね。


ふ 今興味があることはこういうことなんだって出してほしいですね。今までこういう曲を出してきたけど、一旦置いといても俺がやりたいのはこうなんだっていう。
以前、少しお話しさせていただいたときに、「今の最新作について、今の自分についてを評価してもらいたい」というお話しをしましたけれども。


b  あぁ、しましたねぇ。そうであるべきですよ。


ふ だから今回のインタビューで話すべきなのは【アウトサイド】についてではなく、それを出した後のbutajiについて話すべきなのかなって思って。
今どんな気分なのか、これからどうしていきたいのかっていうのをすごい訊きたかったんですよね。
シンガーソングライターっていうのは自身の気持ちと直接音楽が繋がってるわけじゃないですか。だからそこの部分にすごい興味があって。


b  以前から、作風が祈りに近かったと思うんですよ。僕の作品っていうのは。今作なんてモロにそうなんですよ。ようやくそれを受け入れたというか。


ふ 自分で消化できたということですか。


b  「僕はお祈りをします」という気分にやっとなれたんですよ、ちょっと恥ずかしかったんですよね、今まで。
でもこうやって曲を作っていくんだなって分かりました。祈るっていうのはどういうことかっていう。
でもシンガーソングライターって祈りがちですよね。笑



前編は以上です!
アルバム発売後、彼のまさに今思っていることを後半はお尋ねします。
http://hachibunme.doorblog.jp/archives/46210619.html