随分遅くなってしまったけれど、7/3の当ブログ自主企画にご来場いただいた方々、誠にありがとうございました。
当日の模様を今更ながら少し振り返ってみよう。
今回は、いつにも増して異色のライブイベントになりそうだということが最初から想像出来ていたので、ライブハウスの確保もちょっぴり気を使った。
グランドピアノがあって、座れるところ。出来れば綺麗なところがいいし、お洒落な雰囲気があればなお良い。
新代田FEVER、渋谷TSUTAYA O-nest、そして今回の渋谷Last Waltz。
規模の大小こそあれ、人との繋がりが無ければこれらのところを一般人が押さえるのは難しかったのではと思う。これまでを振り返ってみても、今回も、不思議なご縁が重なってばっちり条件の合う場所で企画を実現することができました。
お力添えをいただきまして、本当にありがとうございました。
そしてそのご縁はご出演いただいた方々も一緒。
最初に登場していただいたのは、イロメガネ。
実は今回のイベント、今までで一番多くの方にオファーが断られていた。急な日程で持ちかけてしまったのも一因であるし、そもそも自分が「そのイベント、出たい!」と思っていただけるようなイベンターでもブロガーでも人間でもなかったのだ。
などと少し落ち込んでいたところに、「声をかけていただいて、すごく嬉しいです!」というメールとともに、快く引き受けていただいたのが彼女だった。
アコギ一つでの弾き語りや、サポートの方々を招いたバンドセットを中心に活動している彼女であるが、今回はサポートドラムとの二人という初編成でご出演となった。
今回のこの編成、歌と耳との距離が近い!
それはすなわち彼女そのものがよりリアルに届いていることに繋がる。
もはや冒頭の定番となっている「大好きよ」からスタート。アコギで奏でる低音のリフがシブい。
あなたがあなたが大好き!!
と一曲目からいきなり感情的に叫ぶ姿に、初見の人はびっくりされたかも知れないけれど、この高ぶりこそが彼女の魅力の一つでもある。
日常のもやもやをステージで全て解き放って演奏しているような姿は、心揺さぶられるものがある。
ギターと二人のアコースティック新音源がリリースされていて、そこに収録されている新曲も演奏された。
舌打ちも交えつつ、自身の恋愛観を赤裸々につづった「白い橋」や、パワフルなドラムの後押しでより感情が増幅されて聞こえてくる「勇気を持ってグッドバイ」。
歌に、というよりも歌っている彼女自身にアクセルをかけるようなドラムが印象的であった。
弾き語りと、バンド編成との美味しいとこどりだなこれは。と一人でとっても嬉しくなっていた。
ビートルズが好きだというMCを挟んで披露された、「ブラックバードを歌って」には、花掘レファンであろう方が前のめりで聴いていた姿もあった。
そういう瞬間って最高ですよね。見てても聴いてても。
続いての登場は被写体X。
今回のライブハウスがグランドピアノを置いているだけあって、是非ともお呼びしたかったバンド。
グランドピアノを交えた貴重な編成でご出演いただいたのだが、繊細かつ大胆ってこういう時に使うべき言葉だとひしひし感じた。
一曲目、「時計台の上から」のフレージングの滑らかさや、後半に披露された音源未収録曲「MANATUS」の不思議な浮遊感は、グランドピアノだからこそ味わうことのできたものであろう。
そして攻めに攻めたセットリスト。
ハコの雰囲気もあるので、落ち着いた感じにしようかなと…というような話をしたいたのだけど、それはどこへやら。笑
「タイムリープ」の冒頭、攻撃的なイントロを聴いて、一筋縄では行かないぞ今日は。と思ったのを覚えている。
それ以外にも、「ナースコール」や「≠」など、以前一耳惚れした思いをこのブログに書き連ねた、アルバム「ポラロイド」からの楽曲を中心に沢山演奏していただいた。
ブログのその記事について、「詩的な人なのかなと思いました」とMCで話していただいたあと、≪学校の放課後にこっそり集まって文化祭の為に練習している、優等生たち≫というブログの中の文章を引き合いに出して、「佐藤さん、ノート貸してよ」と絡むBa.坪田、急に話を振られて恥ずかしそうに小さく首を振るVo/Key.菓子。
しつこく振られる話をかいくぐりながら、「メリーさん」のイントロを弾き始める彼女。
まさに学校のチャイムの音列がモチーフとなっているそのイントロは、コード感とともに自分の心を一発で掴んだ名フレーズだった。
大きな背中の あたし後ろに隠れて 冷たい雨の降る放課後だけ教室で歌うの
メリーさんというオカルトゴーストをけなげで儚いキャラクターとして表現したのと同じように、もし実際に学校で彼女たちが練習していたら…というブログに書いた妄想をそのままMCの遊びも含めて、表現されていたように勝手に思えてぐっときたのだった。
キーボードがライブハウスならば、グランドピアノは音楽室だ。そんなイメージ。
ことあるごとに何度も掲載してるな、この動画。
テクニカルな、という形容をよくしていたのだけど、テクニックだけではなく、どの楽器も饒舌なのだ。
その歌詞やフレーズに沿って、唸るベース、寄り添ったり暴れたりもするドラム。
とにかくどこの場面でも誰かしらが何かしらの活躍をしていて、見ていて飽きることのないエンターテイメント性に満ちていた。
たまたまのタイミングではあったが、被写体Xは今回のライブからしばらく活動休止に入る。
「ショルキーをやりたいんです」と打ち上げのときに目をキラキラさせていた菓子さん。
「活動休止は、それを練習しないといけないので…肩から担がなきゃいけないんですかね。座って弾いたらダメなんですかね…」
と話していた。なんなんだこの人。笑
これは面白い復活を遂げるぞ…!
最後は花掘レの方々。
元々このバンドと一緒に何かをしたくて今回のイベントを組んだので、前回企画で好評だった公開インタビューまでさせていただくことにした。
結局、随分花掘レに寄ったイベントだったと自覚はあって、少し反省なんかもしているのだけど、でも良かったでしょ?
転換が一段落したところでインタビュー開始。
ステージにメンバー三人をお招きして、ゆるいトークからさせてもらった。
ピアノ、ベース、パーカッションからなるメンバーは、実の三兄弟で構成されている。
それぞれ生い立ちは同じなれど、みんな音楽をやりつつ、担当楽器がうまいことバラバラであったので、その辺りを尋ねたりなんかして。
全員ピアノは習っていて、次男の悠くんが吹奏楽部で打楽器をやっていた経緯から、長男の能くんが三男の匡くんにベースをやればバンドが出来るぞとけしかけたらしい。
それが三兄弟ピアノトリオとしてここまで続いているのだから驚き!人生ってふとしたきっかけの連続なのだ。
ここで披露されたインタビューはほとんど全て事実。
ん、ほとんど全て…?
そう、演劇を交えたライブをやるのが彼らの本質。インタビューからすでに伏線があったのだ。
花掘レの方々がダイジェスト動画を上げてくれたので、そちらを参考にしながらぜひ。
ステージを暗くして、PVを流しながら映像についての話をしていた部分からは全て台本上のお話。
・山道で鹿をひいて車を大破させたのはホント。
・ピアノと作曲を担当している吉田能くんと僕が大学で同じゼミだったのもホント。
・「夢なら醒めてくれ」のPVで流れる身の周りで起きてほしくないことを映像にした、というのもホント。
・【ゼミに来なくなってしまったあの子】がいたのだけは嘘でした。
『リハという体』でフィクションとノンフィクションが入り交じるステージ。
普段はイベントごとに「五月蠅」「飲んだくれ」など別のタイトルを付けている彼らが、今回当イベントの企画名をそのまんま付けてくれたところにも意味があったのだった。
ブラックな後味を残したラストは当日来てもらった方々の特権。
そんなラストに向かって不穏な空気の漂う中、「意外に晴れ渡る朝のマーチ」や、スペインのバンドI AM DIVEの楽曲を空耳(!)で日本語に訳した「MOUNT EERV」は清涼剤のように明るい雰囲気を持ち込んだ。
入れ 風呂に 入れ 風呂に
この脱力感あるサビ!笑 これは空耳じゃないと書けない歌詞だ…。
悠くんの演奏するパーカッション群は、カホンを中心としたもはや小さな要塞。音のバリエーションが広すぎて、見ても聴いてもワクワクする。かと思いきや、「異邦人の散歩道」では鍵盤ハーモニカに持ち替えてノスタルジカルなフレーズも演奏する。
同じくエレキベースとコントラバスを持ち替えする匡くん。このバンド、マルチプレイヤーばかりだ。
エフェクターを踏んだコントラバスの狂気じみたボーイングは、ベースが主役となる瞬間をドヤ感まで交えて演出している。
「夢なら醒めてくれ」のソロを挟んでメインテーマに戻る前(4:05)、僕はその部分を夢から醒める描写のように思っていたんだけど、この前のソロパートにて僕自身の語りが入って、その想像が一変した。
歌詞がないからこその解釈の広さ。
コンセプトと音楽観の対応力をまざまざと見せつけられたような気さえする。
それにしても猫背すぎないか俺。
というわけで、以上であります。
毎回環境にも対バンにも恵まれて、ほくほくな企画をさせていただいております。本当に感謝です。
次回「トーキョーワンダーグラウンド Vol.3」がもし出来れば、笑いも混じる対バンにしたいなぁと思っております。芸人の方なんかもお呼びして転換にネタをしてもらえばってこれはやついフェスだ。