今回ご紹介させていただくのは、被写体Xというスリーピースバンド。

タンブラー「Ongaku Wankosoba」にて取り上げる際に、ライブ映像を見たのがキッカケだった。

「ポラロイド」という7曲入りのアルバム!

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一曲目、「時計台の上から」の冒頭を一聴した瞬間から彼女たちが表現する世界観の虜になってしまった。


ソラシドレミファソシラドシ
私の中にあるこの魔法で飛びたいの


ピアノの音階に沿って駆け昇るサビの入り、耳にちょんちょんと触れるような儚くて可愛らしいボーカル、ベースラインもメロディ然としていて、歌がある。なんだかお茶目な雰囲気だ。
音楽という魔法で彼女たちは様々な情景を描き出す。



一転したパワフルさも二曲目で提示される。
激しいドラミングとアクセントの強いピアノで始まる「ブルーライン」という楽曲は、

こんな退屈な時間に 口ずさんでも
出てくるメロディーは どれも役に立たない


と溜息まじりに始まり、曲が書けない苦しさをぶつけた一曲。
かと思いきや、

届ける手紙を忘れた僕は
息をしない駅で君を想うだけ


と君と僕のストーリーにも繋がるギャップ。



どの曲にも一貫してアレンジの巧みさに耳を惹かれる。
きゅっと静かな瞬間を作ったり、
スリーピースを全く感じさせず、飽きさせない。
ピアノのコード感と楽曲の雰囲気がぴったりなのもあって、主人公の心情が言葉と共に説得力を帯びて耳に迫る。

ご機嫌ななめなあたしの唄 聴いて
(ナースコール)

のたうち回るようなピアノとベースの低音がまさに。



このバンドの雰囲気、ライブハウスというよりも音楽室っぽいと思った。
というのも、ロックなりポップなりを「やってます!」というゴリゴリの気迫よりも漂うのは、お上品な雰囲気。いい意味で余裕を感じる。
クラスの優等生三人は、実は楽器も上手で、放課後に他の生徒達には内緒で、音楽室を借りてリハーサルをしているような感覚。
楽器を演奏できる奴らだということすら知られないまま、文化祭でパッと壇上に現れて、めちゃくちゃカッコいいライブをしてしまうんだろうなぁ。

そんな自分の勝手極まりない感情を増幅したような楽曲が、「メリーさん」だった。
比喩でもなんでもなく、怖い話で用いられるあのメリーさんの楽曲。
でも、その解釈が素敵なのだ。

これはライブ映像があるので、ぜひ。

ちなみに僕はこの映像を見るといつもイントロから泣きそうになる。


(トーク有り。ライブは1:00から)


あなたの背中は 私の物じゃないこと
それくらいわかってる


サビの終わりとともに呆気に取られた。
そのままチャイムの音列をモチーフにした間奏と、ここぞとばかりに歌いあげるベースソロに心を鷲掴みにされているうちに二番に突入。
なんて劇的な流れ!


バンド名の被写体X、数学とかによく用いられる代数としてのXとするならば、「ポラロイド」は不特定多数の様々な人々を被写体としてスナップしたような曲たちばかりが並んだようなアルバム。
そして何故かどの登場人物にも少しの弱さを感じる。
空想に想いを馳せたり、君に届かなそうな想いを寄せたり、もやもやした感情をぶつける先もなかったり。

お上品な雰囲気というイメージを書いたけれど、優等生としてそつなくこなせてしまえるからこそ、誰にも言えない悩みなんかもあったりするのではないか。
それがどの楽曲にもエッセンスとしてちょっと添えられているような感じが、どんな人にもある弱さを表現しているようだ。

そしてそこから醸し出される親近感。


僕が書いたノートの中の渦に 皆落ちて
くたばれ 自分が一番正しいなんて思うな

(≠)

くたばれって言ったこの人!
となんだかちょっと嬉しくもなったりしたのだった。