お祭りごとって真っ只中でどんちゃん騒ぐのはもちろん、遠くからそのどんちゃんを眺めるだけでも面白いもの。
楽しくなったり、わくわくしたりして笑顔がこぼれてしまうものだと思うのだけど、今回はそんなお祭り感のある一枚があったので、レコメンド。

お祭り感というキーワードで音楽を表現すると、おそらくBPMも速く、ノれるような楽曲というイメージがあるかも知れないけれど、とてもいい意味で裏切ってくれると思います。

ほら、ジャケットも可愛い。
ltm



今回は、ハナカタマサキというアーティストのアルバムをレコメンド。


2012年から宅録音楽家として本格的に活動を始め、ついに今年の6月、自主レーベル「PENTACOAST」から発売された1stアルバムが「Lentment」という一枚。

何はともあれ音源をぜひ。
温度を感じる音像が聴いていて非常に気持ちがいいです。





軽やかな変拍子に乗せられる、優しく温かい彼の歌声。
それがナチュラルでいてメロディアス。サビのラストのメロディの上昇が本当に美しい。



さらに注目すべきはその歌声を支える楽器群。
アコースティックギターを軸に、マンドリン、トイピアノ、鉄琴、木琴、ピアニカ…などなど挙げていくとキリがない。さながら、トイオーケストラと言っても過言ではないようなこの大所帯を、ハナカタマサキは全て一人で演奏・録音をしている。
そのサウンドは賑やかで可愛らしい。見たこともない村で一年に一度開催されるささやかなお祭りのよう。このお祭り感が彼の魅力。



ゆったりしたバンジョーのフレーズが不思議とアジアンな雰囲気を醸し出す「MADO」、バグパイプのようなピアニカの音色がヨーロッパの片田舎みたいな「MOLE」、歌詞の中にジャケットに描かれているキリンも登場して爽やかな風ときらきらした日光を感じさせる「AFRICA」
楽曲ごとにがらりと違う風景を見せ、でもどれにも祝祭感がある。笑いながらお酒を飲んだりしているような風景。
しっとりした楽曲にも微笑みのような温かさがある。ちょっと聴きながらにこにこしてしまって、音楽っていいもんだなぁなんて朗らかな気持ちにさせられてしまう魅力がたまらない。



また、アルバムの中にはインストのみで構成されている曲もあり、いずれも個性的なキャラクターばかり。
「CAT CALL」は自身が傾倒していたハードロックの速弾きの要素を取り入れて、可愛くもありつつ技巧的な一曲。

わずか1分17秒の小曲、「OTHER PEOPLE」はトイピアノと鉄琴のみで構成されている、子守唄のように静かな一曲。打鍵音のようなかちゃかちゃした音も含めて録音されているのには、宅録の持つ親密さや距離感の近さを感じた。

前述した大量の楽器群が存分に活躍するのが「FOG」という楽曲。これもインスト。
サンプリングしたように数々の楽器が顔を出しては引っこめる。
楽器一つ一つにキャラクターがあるみたいで容姿や性格なんかが浮かんででてくる。個人的には全て小動物みたいな印象を受けた。可愛らしくも憎たらしくもあるようなやつらが、霧の中からうっすら見えたり、ばっと現れたり。
楽曲全体もそんな構造をしている、怪しげな和音が不穏な雰囲気を見えたと思いきや一転して、やっぱりお祭りをやっているような様子が伺えたり。
ころころと展開されるあれやこれやをまとめるのが「霧」というのは技あり。



宅録も含めて彼が一人でやることにこだわる理由として、CINRAのインタビューが出てきた。


「今のように自宅ですべての録音作業ができると、自分が納得するまでとことんやり続けられるんですよね。きっと僕にはそういうやり方が合っているんだと思います。そのぶん、こうして作品が完成するまでの時間がかかり過ぎちゃうんですけど(笑)」


ちなみにジャケット、ブックレットのイラストまで彼自身が手掛けている。特にブックレットは40ページの大ボリューム!
絵本仕立てで楽曲ごとの色を表現するようなブックレットはそのまま彼の楽曲をより深いところで感じるための手助けともなる。それにしてもなんという労力。


キュートなオーケストラを従え、さらには多数のイラストも交えて彩られたこの一枚。

「Lentment」という言葉はゆったりとかゆっくりのような意味。
彼の中でゆっくり熟成されたマルチな才能が余すところなく発揮されたものとなっている。
心からオススメします。朗らかな気持ちになること請け合いです。



最後に収録曲からもう一曲。

ブックレットのテーマにもなっている、「OWL」という楽曲を。