今更ながらやついフェスの感想を書いている。

2014年6月21日、渋谷で行われたサーキットフェス、「YATSUI FESTIVAL!2014」に行ってきたのだ。

偶然ながら素敵な出会いばかりの一日だったので、せっかくだから印象的な人たちをYouTubeで音源を共有しつつ、振り返ることにする。

まだまだ知らないいい音楽、あるなぁ。
知った気でいたバンド、まだまだ知らなかったなぁ。





当日券も出せないほどのソールドアウトを果たし、今年も開催されたやついフェス
音楽をこよなく愛するお笑い芸人、やついいちろうの主催するフェスで、年々規模を増して今年でついに三回目となる。
渋谷O系列を中心にライブハウスやクラブを貸し切ったサーキット型フェスとなっていて、すべての会場の距離がほとんど近く移動に手間取らないのも、この場所ならでは特徴かも。
O-crestの階段は本当にキツかったけど。


アーティストによるライブアクトはもちろんのこと、評論家とのトークセッションや、転換の合間にはお笑い芸人のステージがあったりとよりどりみどり。
なんと172組もの出演者だった。これは一日のフェスの出演者では最多らしい。


たまたま巡り合わせてチケットを譲っていただけたので、どうせならと丸一日満喫してきた。
譲っていただいた人と一緒に回ったので、自分一人では出会えなかったであろう体験ができた。
せっかく楽しんできたので、その備忘録を今さらながら。




まずはO-EASTで「DJやついいちろう」のステージ。オープニングセレモニーみたいなやつだ。

わりかし早くから並んでいたので、会場に入った段階ではある程度ゆったりしたように見えたがどんどん人が入ってくる。
ステージではすでにやついいちろうが立っており、何やら音楽をかけながらトークしている。
ある程度人が入ったところで「じゃあそろそろはじめますかー」と流したのはB'zの、【urtla soul】。
次から次へと入場してくる人たちをうまいこと誘導しながら、手を上げたりジャンプしたりとフリを煽ることも忘れない。
エンターテイナーだ!と思った。何はともあれこういう風に一緒にやれば楽しいですよというプレイングは、ピースフルな場を演出するのにうってつけだった。
そんな中で「これ流しちゃダメだよなー」などとためらいながらも二曲目に流したのはCHAGE&ASKAの【YAH-YAH-YAH】。
サビでは歌詞を変えてやーつーいーと歌わせる。DJやついいちろうの恒例みたいですね、どうやら。
会場中が手を上げてやついコールをしてるのは傍から見ていても気持ち良さたっぷり。

ここで、開会宣言にあたって当日発表のスペシャルゲストが。
なんとTHE虎舞竜から「高橋ジョージ」の登場!
まさかこの人を生で見る日が来るとは!すげー!

震災後から継続して開催しているという、被災地でのコンサートのことを話したあと、一曲披露。
もちろん【ロード 第一章】だ。

なんでもないようなことが 幸せだったと思う

何度も聞いた歌詞だけど、こんな歌詞だったのかと改めて思い知らされる。
当たり前のように明日が来るわけじゃないって震災で体験したはずなのに、すっかり忘れてのうのうと暮らしてる。
東北ではまだまだ震災は続いているというのに。
繰り返されるサビの中で、平和ボケした思考をぐらぐらやられていた。




次は7th Floorへ移動して、「かみぬまゆうたろう」
初見であったのだけれど、今回は落ち着いたセットリストだったらしい。
ただ、それが最高だった。
昼下がり、渋谷の上層で大きな窓から差し込む太陽光を浴びながら、日常に寄り添うような素直な音楽を聴くという行為は、とにかく体と心を柔らかくさせるのだった。ぽかぽか。
フィジカルにギターを弾いていた。繊細ながらも力強い。じゃかじゃかしたストロークよりも、まさに自らの力で弦を爪弾き鳴らしている姿が印象的だった。






お次はduoにて「SAKANAMON」。いつの間にメジャーデビューしていたんだ。
ライブは初見だけど、思えば四年前に音源を買っていた。タワーレコードの企画で発売されたシングルだった。
そのシングルにも入っていた【SAKANAMON THE WORLD】を演奏していたのは嬉しかった。とても変な感じにタイムスリップしたような気がする。
最近の音源は全くご無沙汰なのだけれど、結構打ち込み重視になってるのかな。
アレンジはよくある売れ線の域を出ないような印象なのだけれど、ボーカルの声が好きだなぁ。


再びO-EASTにて「レキシ」を見に行ったのだけれど、あまりの人で全くステージが見れず。残念。
ただ聞こえてきた【きらきら武士】のキャッチーさにただただ驚かされた。ノリノリの美味しいとこどり!
いつかまた観たい。武道館おめでとうございます。


全然見れなかったので、すぐに離脱してしまって、O-crestへ移動。
かねてから気になっていた「シャムキャッツ」を見る。
のっけから演奏の話じゃなくてアレなんだけど、とにかくグッズがおしゃれ!最近グッズのクオリティがやけに高いバンドが多くて、それだけでも惹かれてしまう。バンド名も覚えてしまうよね。
肝心の音楽は聴けば聴くほど掴めない。過去と現在の楽曲が自分自身把握できてないのが一因だと思うのだけど、一曲ごとに様々な側面を見せる。
全体的に脱力感をにおわせながらも、くっきりと輪郭のあるドラムがシメていく。多様な楽曲を貪欲に吸収した渋谷系がちらついた。


ここでお昼休憩。O-nestのラウンジで休憩するつもりだったのだけれど、DJセットによってラウンジも臨戦態勢。ご飯の食べられる場所では音楽からの逃げ場が欲しかったなぁ。。


次はまたO-crest。ひたすら階段を上って、「グッバイフジヤマ」を見に行く。
自分の周囲の方々が推しているのを見ていながらも、ライブを見る機会がなかったのでこのタイミングで。
こんなにポップでキュートだとは!そして耳に残る良いメロディ。
モッシュを起こすライブパフォーマンスのイメージばかりが先行して、とにかく激しくごちゃごちゃした音楽の想像をしていた。
いわゆる草食系っぽさがある中で、新加入したキーボードの方の激しめのライブパフォーマンスが際立っていたように思う。かっこいい!
早速後日、音源を買わせていただいて愛聴している。ワンマン、行きます。






時刻は17時を回り、イベントの参加者も続々と増えてきたよう。
どこもかしこも入場規制のアナウンスが流れるようになった。そのせいか、O-EASTとO-WESTのビルの間にも人が溢れている。道路を横断する人の多さで車両が全く通れず、スタッフが懸命に人の流れをコントロールしていた。ソールドアウトもしてるとこうもなるか。
そこら中で人が溜まり込んでいる場景を見て、ちょっとチケット売りすぎたのではという考えもチラついた。
それともアーティストとライブ会場の割り振りとタイムテーブル次第で少しでも緩和できるのかも知れない。
フェスの企画と運営というのは正解が無い分、奥が深くてひたすら難しそう。


その後はVUENOSにて「DJみそしるとMCごはん」。これは完全に自分のリクエストだ。
ここもやはり入場規制中で少し並んだ。この日のVUENOSはアイドル勢が固まっていたので、もしかしたらずっとそこで過ごすような人もいたかも知れない。
そんな中での彼女のライブもどこかアイドルじみていたような印象を受けた。NHKでのテレビ出演を筆頭にどんどん名前が売れているところであるが、ファン層の付き方でこうも印象が変わるものか。
正直ちょっと違和感。彼女のキュートな感じや、たどたどしい感じがあざとく見えてしまう。
おとなのお兄さん達もいいけど、一人暮らし始めたての自炊不慣れ女子にこそ聴いてほしい音楽だ!
ライブにまでは来なさそうな女子をライブハウスに引き込んでしまう魅力を十分持っていると思うし、そういう人達が見ているライブを見るのはこちらも最高に楽しそう。ん、ちょっとややこしいかな。


早めに離脱して、O-nestへ行く。
嫌な予感は的中して、「曽我部恵一」のステージが始まってるというのに入場規制がかかっている状態であった。
粘り強く待機してやっと入場できたものの、本人の姿が全く見えないほどの人だかり。
姿が見えないからこそ、声だけをしっかり聴いた。張り上げた声の先っぽまで感情が込められていたように感じる。一瞬のスキもない。
そして、人がたくさんいるからこそ、静寂が際立った。曲間のピンと張り詰めたような緊張感はあの人の多さならではだろう。
【キラキラ】の盛り上がりもさることながら、個人的には【満員電車は走る】があの環境で聴けたのは感慨深かった。

今日も満員電車は走る からっぽの心詰め込んで 一億二千七百六十万の叫びを切り裂いて

ぱんぱんの会場で、あぁ明日は仕事だなぁとか考えながらぼんやり演奏を聴いていた。
どうってことない感情だけど、ただそう思ったことは今も覚えている。






その後はO-EASTへ。
EASTのトリの為に、少し早めに行って前列を確保しようかということで、前のバンドから見ていた。
それが「bonobos」
全くの初見ながら、本当に良かった!この日ベストの出会いだったかも知れない。
【GOLD】の冒頭、

ありがとう さようなら 更に言うと愛してる


の歌詞にやられた。とってもいいバンドを見てるのではないか今!と気が引き締まる思い。
音のバランスが心地よすぎる。ソリッドなベースにスケールの大きな歌と楽曲。ふわーっと心が洗われるようだった。
それを全面に感じたのは【グッドモーニング・マイ・ユニコーン】の演奏だった。
アーシーなリズムにトランペットとトロンボーン二人のホーン隊が重なる。なんて素敵な生命賛歌なんだ!

わたしたちは待っている ありふれた朝の続きを
生きることの美しさ、絶えることのない光を







そしてトリは「忘れらんねえよ」。本当にいつぶりか思い出せないほど久しぶりにライブを見る。
二列目くらいに場所を移したのであるが、いかにも暴れるぞみたいな人が周りにいない。
いつもはもみくちゃになるような雰囲気の楽曲も、落ち着いたノリで聴けたのは面白かったがどこか寂しい。
新旧交えたセットリストの中、やはり新曲【ばかばっか】で会場が一段階盛り上がった感覚があった。
新しいファン、古くからのファン、どういう割合で会場にいるのかによって、もしかしたら全く違うライブ感になるのかな。
その後の【Cから始まるABC】でようやく最高潮の盛り上がりが。モッシュが各所で巻き起こってもみくちゃになる。少し前の【北極星】でこれをやりたかったなぁ。
Vo.柴田はステージを飛び出してフロアのど真ん中に。観客を真っ二つに分けて、かねてからやってみたかったとウォールオブデスに挑戦。ぱっくり空いたスペースの真ん中にいる柴田に目掛けて左右から突撃していく観客達、全員幸せそうな笑顔を浮かべていた。
自分自身もこの波に乗っていたら、シャツに付けていたやついフェスのバッジを無くしていた。いつもこういったモッシュではメガネが無くなるところだったが、今回はバッジで済んだ。よかった。ということにしておく。


O-EASTでラストのDJやついいちろうを見る予定ではあったが、外の空気が実に心地よかったので、のんびりビールを飲んでいるうちに、やついフェスは終了していた。
出てくる人たちを眺めながらちびちびビールを飲んでいた。ビールはぬるく、まずかったのだけど、気持ちはとっても清々しかった。


こうして、自分のやついフェスは幕を閉じる。
偶然の出会いというのは、こういうフェスの魅力の一つで、特に今回は素敵な出会いに恵まれた。

自分一人でタイムテーブルを組むと、どうしても知らないバンドには足を運びづらい部分もあったりするのだけれど、今もこの日新しく出会った人たちの音源をBGMにしながら書き連ねている。
この事実はたまたまその場所に行ったから実現されているのであって、そういうちょっとした偶然で人生のちょっとした部分が変わっている。
これって単純だけど、とても素敵なことではなかろうか。

うーん、つまりは幸せでした。そして今もその音楽に囲まれて幸せです。