荒川ケンタウロス、待望のフルアルバムをリリース!

相変わらずのメロディの心地よさや爽やかな雰囲気は誰にでもオススメしたい音楽。

でも彼らについて少し誤解していたのかも知れない。
今作を聴いて、前のミニアルバムを引っ張り出して、大人と子供について考えているうちに沢山のエネルギーをもらった気がする。

そんなエネルギーを少しでも共有できたら嬉しい。



よどみに浮かぶうたかたは



今回レコメンドさせていただくのは、荒川ケンタウロスというバンドの新譜。


昔、少年だったあの頃の思い出を掘り起こされるような、怖いもの知らずな感じやピュアさを秘めた楽曲が印象的だった。
ワンコインシングル「天文学的少年」のタワレコメンノミネートであったり、ラジオでのパワープッシュ、様々なサーキット型フェスへの出演などなど、多方面からの支持も厚い。

以前ぎゅうぎゅう詰めで見た新宿MARZでのワンマンライブは、前回のミニアルバムのレコ発ファイナルでもう昨年の2月のこととなる。


そしてようやく先月、キャリア発となるフルアルバムをリリース!




「よどみに浮かぶうたかたは」と題された一枚。


今までの荒川ケンタウロスをしっかり継いでいながらも、新しいサウンドが散りばめられていた。
はっきりとした4つ打ちを終始貫くダンサブルな「迷いの森」や、弾き語り風の優しい歌いだしから一転して8bitテイストのシンセが目立つ「RPG」「ノイキャン」でのふざけっぷりなんかは今まで無かったもの。

継いでいる今までの荒川ケンタウロスの部分、というのは彼らのメロディ。
長めの音符で伸びやかに歌われるサビや、時折裏声がそこにからんでくる気持ちよさ。
全ての楽曲に、口ずさみたくなるメロディや、聴いていて気持ちのいいポイントがある。これは単純なようで本当に凄いことだ。
このハズれなしの感じは、こちらのトレイラーで分かるはず。
映像も、よくあるアルバムのジャケットがひたすら映っているようなつまらないものではなくて、一発撮りの凝った仕掛け。







アルバムを一通り聴いてみてからこの映像を観て、この曲はココだよな!という部分がちゃんと披露されていて、音源の詰め合わせとしてもオイシイ作り。
こんなに聴かせちゃっていいのー?みたいなよく分からないミーハー心が生まれたのは初めてだ。
個人的には「猫のおじさん」のCメロが好きすぎて。



そしてアルバムのタイトルにもなっている一曲目「よどみに浮かぶうたかたは」について書かせていただきたい。
コーラスだったり、打楽器の音だったりが演出する土俗的な雰囲気はこれまでの彼らには全く無かった色で驚いた。

そして、この一曲目がアルバム全体を暗示しているようだった。
これは今作の一曲目がアルバムタイトルであるからではなく、これまでの音源も、一曲目でアルバムの色を決めていたようであったから。


1stミニアルバム「遊覧船の中で見る夜明けはいつも以上に美しい」では、「ストーリーテラー」という楽曲。


子供心を忘れた男がむりやりに作り上げた嘘だらけの自分


という歌いだしを経て、


ごらんごらん世界は美しい


という印象的な合唱を含んだアウトロで終わる。
短い楽曲ながら、2曲目の「天文学的少年」に繋がる世界観や、そもそもアルバムの導入としての世界観が形作られており、アルバム全体に散りばめられた子供心や、その心を通して見る世界の輝きを暗示しているかのようだった。

いわば子供に戻って子供心を追体験しているような。



そして2ndミニアルバム「Apartment」では「アパート」という曲で始まる。
文字通りアルバムタイトルをなぞった一曲で、自分の暮らしていたアパートについてを回想する歌詞となっている。
主人公が少し大人になっていたように感じる。一人暮らしもするし、子供だったあの頃をあらためて思い返すような楽曲もある。
センチメンタルに浸りつつも、大人である今を見つめているような視線が印象的であった。
いわば子供心を思い起こす大人のような。



そしてこのフルアルバム「よどみに浮かぶうたかたは」に繋がる。ついに一曲目がアルバムタイトルに!



動き出したこの雑踏は 森のざわめきに似てる



アルバム全体を包括するような一行目だと思う。

ジャケットは「よどみ」であるとか「森」を彷彿とさせる緑。
毛糸で彩られたこれらは森であって森でないような不思議な印象だった。
東京の国分寺にて結成されたこのバンドや、東京周辺に住む人々にとって、いわば非日常のような「森」というモチーフ。
これが「動き出した雑踏」というキーワードに当てはまるととても身近には感じないだろうか。
この比喩にハッとさせられる感じは今まで無かった。

森という言葉には、子供心を想起させるものがあると思う。
格好の遊び場であって、探検なんかして落ち葉にまみれて帰ってくるような。
内に潜む得体の知れなさ、不気味さや怖さも、子供心をくすぐるようなものではないだろうか。

そんな言葉が比喩によって、大人な現状と結びつくことで不思議な感覚に包まれる。


その次の楽曲である「迷いの森」。このタイトルなのに、アスファルトという歌詞も出てくる。


憂いで 君はアスファルト踏みしめて歩いてくれ


今まではセンチメンタルに浸っても、あの頃はよかったよなぁだとか、ただそんな思いにふけってしまうばかりであったけれど、今作はなんだか応援歌のような意味合いを強く感じた。
比喩によって大人と子供の感情を行き来しているうちに、子供のころのような不思議なエネルギーが今湧いてくる。
あの頃キラキラしていたものをきっと今でも実現できるのでは。と思わされてしまう。


こんな比喩を聞いた後の「ど真ん中の海」もとても心に迫るものがある。

どこまで行っても誰もいない海 ど真ん中を駆け抜けてゆけ

海なのに駆け抜けるという言葉を用いるのも納得。


と、くどくどと並べてしまった。

今まで彼らの魅力は、少年のようなキラキラした歌詞やメロディであるとばかり思っていたけれど、どこか誤解していた部分があったかも知れない。
一歩引いた視点を兼ね備えた今作から、彼らの大人な部分を体感することができた。
作詞・作曲が完全にワンマンというわけではない活動スタイルも含めて、きっとまだまだ引き出しが表れてくるに違いない。







「男子中学生、絶賛。」というCDの帯のキャッチコピーがめちゃくちゃ良い。
今まさにキラキラしているやつらが聴いたら何を思うのだろう。
きっとすさまじいエネルギーに包まれるに違いない。

そんなエネルギーを羨みながら、負けじとこの記事を書かせてもらった。
自分もどこかエネルギーをもらったことは間違いないみたいだ!