THEラブ人間というバンドがライブ盤を発売した。
メンバーの一人が脱退に伴った卒業ライブで、この編成では最後のワンマンライブとなったものだ。

まさかいなくなるなんて。と思っていた気持ちが、一枚のアルバムを通して、一つのライブを通して、変えさせられた。

キーワードは、「お楽しみはこれからだ」。


お楽しみはこれからだ


昨年はバンドの活動停止やメンバーの脱退が多く見受けられたのであるが、その中でもTHEラブ人間からの発表は一際大きなトピックスであったことであろう。


ベースとコーラスを担当していた、おかもとえみの脱退。
紅一点のメンバーだったこともあり、ボーカルパートを取って代わるような楽曲もあった。

女性目線の歌詞を歌う彼女の姿や、ニコニコと微笑んで歌詞を口ずさみながらベースを弾く姿はもはやTHEラブ人間に無くてはならない存在、というかもはやいなくなるということがどういうことかすら想像がつかなかった。


2013年12月23日、そんな彼女の卒業ライブが行われた。
場所は下北沢cave-beという、下北沢に数多くあるライブハウスの中でも、比較的こじんまりとしたところ。
メンバーが働いていた由縁もあり、THEラブ人間というバンド自体が生まれるキッカケとなった場所でもある。

そんな思い出深いライブハウスをソールドアウトさせて、パンパンの観客の前で演奏されたライブを収録した、CD・DVDが発売された。




「お楽しみはこれからだ」

そう題されたこの単独演奏会は、おかもとへの別れを惜しむものではなかった。

全ては代表曲「砂男」の前のMCに詰まっている。
それはもちろん購入した人のものであるし、MCについてわざわざ書かなくとも「お楽しみはこれからだ」という言葉と、アンコールに演奏された楽曲の歌詞から、この演奏会のテーマを感じ取れるであろう。



そしてまたオンボロのワゴンで
遠い遠い街へ出かけよう



【そしてまた】
という歌詞の意味深さが光る。切なさを経由したポジティブさを感じられないだろうか。



THEラブ人間のライブの魅力はやはりその場の熱量。
ライブを見ていて、本当に今の瞬間をパッケージングして持って帰りたいと思ったときが何度もあった。
この一枚にはそんな瞬間が余すところなく収録されている。



「アンカーソング」の高揚、「これはもう青春じゃないか」の合唱。
どれもライブでは定番となりながらも、同じ瞬間は一度もない。

「抱きしめて」から「東京」への鮮やかな転換。
さらに続けて歌われる、比較的新しめの楽曲「All Tomorrow's Tokyo」
ボーカル金田の見てきた東京。その景色が変わっていくのを、脳内から覗き見させてもらってるようだ。

そばにいる女の子との恋を歌ってきた彼が、東京を俯瞰して歌う。
一人の女性を歌っていた彼が、俺たちの東京を歌う。
東京という同じ舞台を描きながらも、内容やスケール感は全く異なっている。

アルバム「恋に似ている」から「SONGS」への間に訪れた転機、すなわち恋愛至上主義からただ生きるということについて歌うようになった変化と、このスケール感の変化も同じように感じる。
現在も間違いなく転機だ。メンバーの脱退とバンドの変化はこれから彼の歌に何をもたらすのだろう。








そして「砂男」で歌われるのは不器用な感謝。
改めてありがとうと伝えることの照れくささもひっくるめて、感謝の気持ちを告げることの美しさがライブではより際立つ。


このアルバムはDVDとCDのセットなのであるが、もちろん映像で見るべきである。
熱量があるのは演奏者だけではない。それを共有する観客の姿も一緒に見れるというのは重要な部分でもある。
時には激昂し、時には涙ぐむ。そんな姿を映像の端々から眺めながら見る演奏は説得力が違う。

どこかで書いたような覚えもあるのだけれども、ライブの魅力は生で演奏者が見られるというところだけではなく、生で観客が見られるというところもある。
観客の感情の動きに対応して、演奏の魅力が何倍にも膨れ上がる瞬間を何度も見てきた。

特にこの「砂男」は、観客の感情の揺れ動きがより顕著で、見ていてこちらも感情を共有させられてしまう。
この「させられてしまう」感じが、ライブの魅力の一つ。
おかもとの卒業ライブなんてすっかり忘れて楽しんでいたが、このラストで、彼女の卒業ライブだと不意に思い出して涙ぐんだ。しかし、これはいなくなってしまう悲しみにではなく、これまで楽しい思いをさせてくれたことへの感謝のような涙だった。

今日のことなんてすぐに忘れてくれ!
と金田は言った。
そう言いながらも、こうして一枚の記憶媒体として残っているところに彼らのライブへの自信と、おかもとへの感謝や労いのようなものも感じて胸にくるものがある。
これから彼らはどうなるのだろう。ライブの終わったあと、CDを聴き終わったあと、そんな浅はかな心配はすっかり無くなっていた。
「お楽しみはこれからだ」というメッセージに全ては凝縮されている。



現在THEラブ人間は新メンバーを迎えて、お披露目ツアーの真っ最中。

先日、ちょうどツアーの始まる前の金田さんとお会いして少しお話ししたことがあった。

「早くライブがやりたくて仕方ない。新しいラブ人間どうなるんだろー。だいじょうぶかなー。って心配してる奴らを驚かせてやりたい」

と笑顔で話していた姿がとても印象的であった。
文字通り、お楽しみはこれからだ。

それにしてもいいタイトルだなぁ。