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ツアータイトルは正しくは、
「絶対少女が夢見るBBa'14ツアー」

またまたライブレポートとなっております。
それだけ印象的なものが立て続けだったのかと、今更ながらに驚いております。



前回、満員の渋谷クアトロでのワンマンライブの記憶も新しい中、また一段階スケールを広げた恵比寿リキッドルームでのワンマン。

会場は一段階上のスケールだけれど、集まったバンドメンバーやそこで演奏された楽曲群は、前回のワンマンから何段飛ばしのものだったのかもはや見当もつかない。
あっという間にレベルアップしてしまった、彼女のワンマンライブについて。


文章の都合上、敬称略させてもらっております。
いや、いつもそうなのですが、なんだか出演陣が大御所なので、改めて…。


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恵比寿リキッドルームには開場10分前くらいに到着した。
当日券も出せない完璧なソールドアウトを果たして、ラウンジはすでにパンパンであった。

1時間前の開場にも関わらず、開演時間を過ぎても客入りは続き、会場は人で完全に埋め尽くされていた。

そんなざわざわした場内も、客電が消えた途端に熱狂的な歓声に包まれた。


SEとして「ミッドナイト清純異性交遊」のイントロが流れ、それに合わせて前列からどんどんピンクのサイリウムが掲げられる。これは有志の方々が入場時に配布していたものだった。


前回、2013年5月の渋谷クアトロワンマンの際には、サプライズとして配布されたピンクのサイリウムがアンコールで満開となったのを思い出す。
いや待て、あれから10ヶ月しか経ってない。一年経たずしてこれか。
多くの観客に埋もれながら、規模の広がっていくスピード感と、年月とのギャップにくらくらした。

ステージの幕は下りたまま、ステージ下手からひょこっと現れた大森。そのまま歌いだす。
大きなウサギの耳を被って、ステージの幕の前、観客と文字通り触れ合いながら、ふとダイブするシーンも見られた。
アウトロの「ラララのピピピ」部分を、周りの人たちが男女問わず口ずさんでいたのがなんだか素敵な光景。
歌うわけでなく、ふとみんな口ずさんでしまっていたという感じ。YouTubeのPVでは最も再生回数を稼ぐ楽曲だけあって、どれだけこの曲が、大森靖子自身が、愛されているのかが滲み出てきたようだ。








大森がステージから姿を消し、再び暗転。ステージ横のスクリーンから映像が流れる。


大森靖子メジャーデビューの発表。これを最初の展開に持ってくるのがニクいところ。
数々のアーティストから祝福のコメントが流れて、ほぐれた雰囲気がまた一転する。



カウントの掛け声で始まった「絶対彼女」のイントロと共に、ついに開かれた幕。
アルバム「絶対少女」のジャケットの雰囲気を匂わす、キュートでグロテスクな飾り付けに囲まれたステージが露わになった。
ピンク色のクラゲのようなオブジェが天井から幾つもぶら下がっている。
よくよく見ると、数々の生地の切れ端や、下着、ぬいぐるみやポーチのようなものが、そこに宙ぶらりんになっていたり、


幸せなんてただの非日常よ

と言い放つ彼女の幸せな非日常が目の前で展開されていたようだった。



演奏者はカーネーションの直枝を始め、絶対少女レコーディングに携わった、凄まじい顔ぶれ。
ほとんどおじさんばかりじゃないか!唯一の若手はギターを弾いているH mountainsの畠山であった。








そんな夢のような面々で演奏された「over the party」が圧巻であった。
冒頭の弾き語りのピンと張り詰めた静寂から、

メアドが変だから好きじゃない

のフレーズで、直枝のカウントが叫ばれ、ノイジーなサウンドが叩きつけられる。一瞬にして大音量に包まれた。
音源と同じ流れだけれど、実際に体感するとぞわぞわっと涙腺までこみ上げてくるものがあった。

今まで様々なライブを見てきて、それぞれに印象的な瞬間というものがあったのだけれど、今夜のこの一瞬もまた忘れられない瞬間になると確信した。

三曲目から早速涙ぐんでいた。



途中、バンドメンバーが退場し、弾き語りにドラムを足しただけの編成となった。

ドラムの久下のプレイングが随所で光る。大森の変幻自在さに吸い付くようなテンポ感であったり、歌詞の世界観をより詳細に描くような効果音的な叩き方であったり。
全ての音に意味や意図がある気がしてならない。
「展覧会の絵」のチリチリとしたハイハットや、「魔法が使えないなら」でおもむろに強打されるスネアやタムなど、以前別の記事でも書いたけれども、展開の読めないドラミングは女子の気まぐれさと気難しさのようだ。


ドラムもいなくなり、完全な大森ソロで演奏されたのは、新曲「呪いは水色」
歌謡曲然とした大森独自のメロディセンスが詰め込まれた、どこを取っても心地良いメロディ。
作詞の際、ライブのスピード感でも引っかかるような言葉を選んでいるという話があったが、今回の「呪いは水色」ではそれの作曲版のような印象を受けた。
聞き流されないように、とにかく心に残る旋律を詰め込んだ感覚。
今までの刺激的な歌詞は少し影を潜め、次から次へと聴こえてくる美しいメロディ。これまでの彼女とまた違う一面が見れる。これがメジャー1stシングルとかなったら面白そう。


そう言えば渋谷クアトロで演奏された当時の新曲が「over the party」であった。
今ではこの曲は、弾き語り、「絶対少女」の音源、そしてバンド形態のTHEピンクトカレフでのバンドアレンジも含めて三種類のパターンを聴くことが出来るほどとなっている。この10ヶ月はこの楽曲にとっても濃密なものだったのでは。
すでに驚かされている「呪いは水色」もどのような進化を遂げるか非常に楽しみ。



ギターが二人ステージに戻ってきて、直江と畠山と大森の三人で演奏が再開された。
そこで演奏された「高円寺」。アルバム「魔法が使えないなら死にたい」での収録の際にも、畠山がノイズのようなエレキギターを弾いていた。
今回の演奏では、直枝も加わったことによってその濃度が増して、音源から純粋なアップデートを遂げたかのような印象を受けた。

大森もいつもよりもゆったりと歌い上げているようであった。最高に気持ちよさそう。


その後大森はステージを離れて、ギター二人での弾き合い。延々とノイズが会場を包む。
「この編成での音楽が気持ち良すぎて、ずっと終わらなければいいのにと思う」というようなコメントをどこかでしていたのを思い出す。
これも幸せな非日常か!



そのノイズ合戦の間にキーボードがステージの中央に置かれ、大森の弾き語りへと切り替わる。

ピアニストとしての側面も持つ彼女。こういう特別なステージじゃないとなかなかピアノの弾き語りなんて聴けない。

「キラキラ」「青い部屋」の乱雑にも見えながらもその不揃いさが美しいアルペジオが無節操にギターをかき鳴らす姿と重なる。楽器は違えど、表現する方法は同じなのだろう。

普段のギター一本のライブでは、セットリストを決めずにその場の雰囲気で楽曲を決めているスタイルをとっている彼女。一人でも多くの観客の心を掴むための手段であるのだろうけれども、ピアノにおいてもほとんど手元を見ずに観客の方を眺めながら弾く姿に、ワンマンライブの場でも観客の興味を惹かせようと努力しているような姿を感じた。
いや、というよりも一人でも多くの人に楽しんで帰ってほしいという純粋なエンターテイメント精神に近いのかも知れない。



バンドメンバーが全員集合して、いよいよ終盤。

ちょっとグルーヴィな「新宿」はTHEピンクトカレフとの明らかな差別化を図ったようなアレンジ。これはぜひまた聴きたい。ジャングル感のあるアレンジだったように記憶しているのだけれど、言葉選びも含めて自信がない。
うまいことDVD化なんてされないだろうか。



本編最後の曲は「音楽を捨てよ、そして音楽へ」
音楽は魔法じゃなければ、この一夜はなんだったのだろうと考える。
大音量でアンプから出てくる耳障りな雑音のようなものが心地よく感じる。
冒頭の「あまい」や「over the party」が自分にとっては特にそうであった。というよりもむしろ心地よさを通り越して、感動すらして涙ぐんでいた。
これは大森や直枝がこういったアレンジを好んだからこそである。好きな人が好きなものを好きになるというある種恋愛と同じ価値観の変化を体感した。恋愛と言ったけれど、これはもちろん同性でも当てはまるもの。
そんな恋愛みたいな一夜も魔法という言葉であてはまってしまう。
なんて便利な言葉なんだ。魔法。

でもこの音楽が良いと思わなかった人ももちろん中にはいるだろう。

音楽自体は魔法ではない。それを演奏したところで何にも起こらない。
でも聴く人によってはそんな音楽が気持ちを高揚させたり、人との繋がりを作ったり、なにもかもどうでもよくなっちゃったり、それこそ魔法みたいな様々な効果を与えるときがある。

音楽は魔法ではない でも音楽は

そんな解釈を今更。




アンコール、ライブのタイトル通り、「最終公演」を演奏。
そうか、この曲があったんだとすっかり意表を突かれてしまった。思い返せば本当にボリュームのある公演であった。
「デートはやめよう」は以前から弾き語りでやっていた新曲であるが、バンド編成では今回初めて聴いた。
サビの盛り上がりとともに、微笑みを浮かべながらギターを掲げて弾く大森の姿がいまでも蘇る。




ダブルアンコールに答えて、大森一人で登場。
「何やりましょうか…」という大森が演奏したのが「ハンドメイドホーム」

毎日は手作りだよね

本当に彼女自身とその周囲の数人の手だけで、手作りの毎日を積み上げて、今日に至ったのだ。
もはやメジャーデビューまで辿り着いた。これからは今までとは比べものにならないくらいの多くの人間が彼女に関わるのだろう。

「これまで私たちがやってきた面白いことを大人の人たちはやってくれるんですかねぇ」
というような毒をMCでちらりと吐いていたのを思い出す。

ただでさえ今回のリキッドルームよりも大きな舞台で演奏する機会が増えてきていた。
スケールの広がるスピードは今後ますます加速していくであろう。
「ハンドメイドホーム」演奏終了後、丁寧にお辞儀をして去って行った彼女の姿と、その後そそくさと観客の見送りに出てきた彼女の姿を見て、別に人間が変わるわけではないのだと気付かされた。メジャーってなんなんだ。

大森靖子がメジャーに行って面白くなるかつまらなくなるかは、何よりもまず大森靖子自身が厳しくジャッジをするであろう。
何よりも手作りでここまでやってきた重みを少しでも見ているからこそ、なんだか安心している。


素直にこれからを期待して待っていようと思う。
そうして彼女はそんな期待の斜め上をあっさり行くのだろう。



unnamed (3)

会場に展示されていた彼女の絵。いつか古着屋さんでこの絵を眺めたのを思い出した。
美術に比べて音楽は音速で伝わるから良いと言っていたことがあったけれども、もう絵は書かないのだろうか。そもそもそんな時間もなさそうだけれど、なんだかそれはそれで寂しい。



セットリスト

ミッドナイト清純異性交遊
絶対彼女
あまい
over the party
エンドレスダンス
あたし天使の堪忍袋
展覧会の絵
hayatochiri
PS
魔法が使えないなら
呪いは水色
婦rick裸にて
さようなら
愛のさざなみ(cover)
高円寺
キラキラ
青い部屋
KITTY'S BLUES
パーティドレス
少女3号
君と映画
新宿
音楽を捨てよ、そして音楽へ


アンコール

最終公演
デートはやめよう


ハンドメイドホーム