花掘レというトリオバンドのワンマンライブに遊びに行ってきた。
代官山の山羊に聞く?という不思議な名前のカフェバーにて、お酒とおつまみを嗜みながら楽しませてもらった。

演劇×ライブのコンセプト「喜劇風味音楽ライヴ」の名を掲げて活動してきた、彼らの再演企画について。



花掘レは三兄弟で組んだ、ジャズやタンゴを主体とした楽曲を演奏する、ピアノトリオバンド。
「喜劇風味音楽ライヴ」と銘打って、毎回のライブで何かしらの演劇の要素や小道具を盛り込んで、一つのストーリーを作り出しているのが大きな特徴。
セットリストも含めて大きな流れが関わってくるので、毎回のセットリストが変わるように、毎回新しい喜劇を披露している。

今回のワンマンは、それの再演。
当日のアンケート用紙にコメントがあったので、それを少し引用させていただく。


普段から我々は「喜劇風味音楽ライヴ」と銘打って、映像・小道具・ストーリーを駆使した大変労力のかかるライヴをお送りしているのですが、その割には一度やった演目はそれっきり。(中略)
これだけ一生懸命用意してるのに一度しかやらないのは勿体ないなと、こないだ気付きました。


たしかに勿体ない!本当に趣向が凝らされていて、色んな人に見てほしい。
音楽的にだけじゃなく、演劇的にでも、こいつら面白いことやってんなーと思わされる部分があるはず。




第一部は「夢なら醒めてくレ」という演目。

彼らのテーマ曲「遅刻の早退」や、比較的最近の新曲「四種の接近遭遇」など、彼らの代表的な楽曲が散りばめられていた。

まず感じたのは、音が生き生きしている!という驚き。
ピアノのころころした音粒も然り、五弦ベースも演奏者の力を借りて言葉を発しているようだ。
ブラシとカホンの組み合わせで表現した、耳ざわりの良い音だったり、ひっくり返した一斗缶をたたく音はなんだかファニー。
とにかくどの音も可愛らしく、お茶目な印象を受けた。


演劇と音楽は完全に切り離されているわけでもない。演劇と入り混じった楽曲もあった。
「御手洗は開演前に済まされよ」という曲。
演奏が始まったかと思いきや、一人席を立つ。どうやらトイレらしい。
一人戻ってきたかと思ったら、また別の人物がトイレに。
おとぼけなストーリーを軸に、トリオバンドながら、常時二人のセッションとソロ回しが堪能できる楽曲となっているのが面白い。


せっかくなので、ここで第一部ラストの楽曲、タイトルにもなっている「夢なら醒めてくレ」のPVを。






第二部は「どわすれ」

楽譜を忘れたワンシーンが映像で流れ、そこから繋がるようにステージに現れる彼ら。
まぁなんとかなるでしょうと演奏を始めるが、演奏される楽曲は全く別の曲というもの。

「どわすれ」はこれまでやった楽曲をアレンジ違いで演奏するコンセプト。

第一部の流れに沿って演奏されていた。なんとも人を食ったようなセットリスト。
一曲目は「遅刻の早退」の忘れんぼうアレンジ「何とかの何とか」
二曲目は「四種の接近遭遇」の忘れんぼうアレンジ「三種のチーズ盛り」

なめてる…!と思った。
台本を忘れるギャグというのは本来タブーのはずだと思っていたけれど、そんな思いも束の間、演奏を聴いてすっかり忘れていた。

テンポや拍子ががらりと変わって、テーマはあれどもはや別の楽曲。
そんなアレンジの中から元となるテーマがしっかりと反芻できるのも、第一部の演奏自体がもはや伏線となっていたからであろう。
ワンマンならではのたっぷりとした時間のおかげで、「どわすれ」という演目自体の一番有意義な楽しみ方が提示されていた。


第二部中盤から登場したのは、ゲストボーカルの佐山花織さん。
劇団「moratorium pants」や小劇場アイドルユニット「38mmなぐりーず」に所属している方。

花掘レ唯一のオリジナルボーカル曲「カシマシ」を歌った彼女。
男と別れちゃったけど、余った豚肉を晩御飯として準備をしているうちになんだかどうでもよくなっちゃって、後腐れなくなってくるという一番の歌詞がなんだか可愛らしい。


一人のための部屋
ほっと一息つけば
私の勝ちね


これは二番の最後。
勝ちという言葉を持ち出して、それでもまだちょっと引きずっているような一面が見えたようで、個人的に好きな歌詞。

彼女の歌からは、演劇に身を置いているからこその、日本語の心地よさというものを感じた。
ライブ後、ツイッター上で、「日本語はなるべく、ちゃんとした日本語で歌うように心がけてます」とご本人からリプライをいただいて、そのあたりが腑に落ちた。
歌声と歌いながらの仕草から、歌手というよりはミュージカル女優のようだった。


ライブハウスで演劇交じりの演奏を行うというのは特異なことだけれど、決してイロモノで終わらない、演奏力。
こうしてゲストが入っても、ゲストの魅力が引き出されるのと共に、各個人しっかりおいしいところを持っていってる感じが、見ていてエキサイティングな部分であった。


ライブと演劇という要素で、もっともっと面白いことができそう。
どうやら今回はゲストボーカルの存在もあり、演劇繋がりで訪れた演劇ファンのお客さんも多かったみたい。演劇と音楽の架け橋、劇場とライブハウスの架け橋となる存在でいてほしい。


最後に。
実は以前、ピアノ・作曲を担当する、長男の吉田能(たかし)くんにインタビューをさせてもらったことがある。
今回再演された「どわすれ」について触れてるのと共に、そもそもの「喜劇風味音楽ライヴ」についてを語っていただいているので、合わせて読むと面白いと思う。ぜひぜひ。

http://hachibunme.doorblog.jp/preview/edit/930c2b0239ba0a465a699a5cbdf4e4d4




3/28 追記!
今回のライブのダイジェスト映像が配信されました!
ダイジェストとはいえなかなかのボリューム感。
後半の冒頭、カホンを叩き始めてから、そのテンポ感にじわじわ観客が笑っている感じはやはり前半の流れがあってこそ。