ネガティブな気分のときは何を聴くか。
明るい曲を聴いて気分をあげる人もいるだろうし、テンポの速い曲を選んでテンションを上げる人もいるだろう。
逆にずっぷり低いところに浸かる選択をする人もいるかも知れない。

この人たちの楽曲を聴くという選択をしてみるのもいいかもしれない。



アパート




syrup16gやらTHE BACK HORNやらを筆頭に、築かれた邦楽鬱ロックというジャンル。
いや、正式名称でもなんでもないだけれど、そんな雰囲気も持ったバンドなので一例までに。


3markets(株)というスリーピースバンドの新譜をレコメンド。
以前、といっても相当前になるのだけれども、「売れないバンドマン」という曲のPVについても書かせていただいた。

キャッチコピーとなる「感情の株式会社」の言葉通り、注目したいのはその歌詞の世界観。

仕事を辞めてしまったり、彼女とうまくいかなかったりとネガティブな歌詞ばかり。
でも、そんなうまくいかないことを赤裸々に描く姿勢は、ただただ日常を記述しているようでいて、懺悔というか独白のようにも聞こえる。
それを音楽に乗せたときににじみ出る不器用さは歌詞の書き手そのものを映しているよう。

せっかくなのでここでアルバム収録曲からPVを。

ポエトリーな前半、雪崩落ちるような展開と、振り切った明るさも見える最後のコーラスが聴き所。たった2分半に凝縮されている!








「アパート」は2月5日にタワーレコード限定で発売された6曲入りのミニアルバム。
元々はライブ会場のみの発売だったらしいのであるが、その内容を評価されてタワレコにて緊急発売という展開に至ったのだろう。


前作のアルバム「何も聞こえない」にも収録されていたような、詩の朗読「102号室」から鮮やかにPVの「これはもう限界じゃないか」へと繋がる。
PVを聴いてもらえば分かるけれど、突き抜けるような「これはもう~」のイントロが「102号室」のスローなテンポ感との対比になって、効果大。

続く「いらない」は人の悪口をいらないものだと忌み嫌いつつ、そんないらないもので僕はできていると歌い上げる自虐的アッパーチューン。サビのいらないというリフレインがいつまでも耳に残る。



彼女との別れを描いた表題曲「アパート」。

わかってる わかってる
君のことなら全部


スローバラードな流れから勢いを増して歌われるサビが、がらんとなってしまったアパートの情景と重なり、空回りする物悲しさ。
「アパート」というタイトルのアルバムであるのに、外にいる女性のジャケットが、この曲通りアパートを出て行った描写に感じて、なんだか胸が痛い。


専門学校時代の友人についてを歌った、「専門学校の唄」。綿密に友人との関係を記述した歌詞はストーリー性のある救いのお話。感動的な物語なのでこれは実際に購入して、ストーリーを追いながら聴いてほしい。


アルバム最後の「東京メトロ九段下」は彼らなりの東京ソング。
様々なバンドマンが東京という曲を作ってきたけれど、3markets(株)が東京を歌うならまさにコレじゃないか。

地下鉄には乗らなくなった 離れた街で僕は生きていく
東京にはなんでもあるよ でもなんにもないよ

自分じゃなくてもいいような仕事を自分のために辞め、東京を離れるところでこの曲は終わる。
他のバンドが歌う「東京」の姿とは違ったリアリティが彼ららしい。




前半で歌詞について、ネガティブな歌詞ばかりだと記述した。でも、本当の意味ではちょっと違う。
諦める理由の底には憤りや「俺はもっと出来るはず」という希望が込められていて、それが楽曲にエネルギーを加える。

ゆとり世代だとかさとり世代だとか、カッコつけることがカッコ悪くなってしまった冷めた世代。
ただ諦めるだけでは、甘えてるようにしか感じないのであるが、彼らはそうじゃないと思う。

何かを諦めるのは、別の何かを諦めないため。
それは音楽活動だったり、大切な何かを守ったりすることだと思うのだけれど、そうした姿勢が楽曲とか歌詞の奥底から感じられ、やっぱりカッコいい音楽だと思う。

単なる鬱ロックには収まらない希望は彼ら独自の後味なのでは。



実は彼ら、先日活動休止を発表したばかり。4月に予定されているワンマンライブ以降、少しお休みとなる。

実情は公式HPを見てもらえば分かることなので詳しくはそれを見てもらうとして、そんな事情を踏まえても、こうして書かせてもらいたい音楽であることは間違いない。

帯コメントの「全部あきらめる ちょっと前」という言葉があらためて染みる。

音楽活動を休止することによって、何を守っていくのだろう。
公式HPでは音楽活動を止めてしまうわけではないと書かれているので、より良い音楽を諦めないための活動休止であって欲しいと切に願う。