あけましておめでとうございます。
本年も何卒よろしくお願いします。

と、言うわけで新年初更新は、このブログでは毎回書かせてもらっている、映像監督の佐藤敬氏の手がけるPV。
ヤーチャイカは2作目!

美麗な仕上がりは言うまでもなく、なんだか謎を含んだ映像に注目。




今回のレコメンドは、ヤーチャイカというバンドの「散ル散ル満チル」のPV。
昨年11月に2ndミニアルバム「ふぁるすふろむあばゔ」をリリースした彼ら。

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今回の映像もそこからの収録曲!早速、映像と音楽をどうぞ。

演奏もさることながら、映像の色合いがまず素晴らしいです。






今回のこの映像を手がけたのは、映像ディレクターの佐藤敬(さとうたかし)という人。
ヤーチャイカのPVは2作目で、前回の「めのう」のときにも映像について記事を書かせていただいた。


リフの重厚さ、それと反比例するかのような伸びやかなメロディライン、間奏の変拍子によるたたみ掛けなどなど、ヤーチャイカ節ともはや言ってもいいようなモチーフは保ちつつ、映像はガラリと様変わり。
ここには載せないけれども、ぜひ見比べてほしい。


「めのう」のPVでは、重なった影や、ホラー映画リスペクトの小ネタや彩りなど、様々なモチーフを使って、不安でアンバランスな感じを表現していたように感じたのだけれど、一番目についたのは、和室に洋テーブルを置いた世界観のアンバランスさだったのでは。


うって変わって今回の「散ル散ル満チル」は完璧に洋風。冒頭でもちらっと書いた色合いに関してもくっきりとしたモノトーン。
前回のアンバランスさとはうって変わって、一つの世界観に特化された。
そしてさらにこの世界観に、備わったのはストーリー性。

めちゃくちゃいい味を出してる老紳士と、どうやら亡くなってしまったらしい奥さん(だと思う)。
奥さんがいなくなってしまったのを知ってか知らずか、まるでそこに存在するかのように振舞う老紳士。
そこに絡んでいくヤーチャイカの面々にも気付かない様子。



そう言えばいかにも聞き覚えのあるタイトル。
元ネタはそのまま戯曲から童話になった「青い鳥」に出てくる主人公のチルチルとミチルであろう。


しあわせの青い鳥を求めて様々な国へ旅をするお話で、最初にチルチルとミチルが訪れるのは「思い出の国」。
とうの昔に亡くなったはずのおじいさんとおばあさんに会う二人は、

「もう会えないと思ったのに」


と話す。
それを聞いてにっこり微笑んだおじいさんとおばあさんは、

「生きているものが思い出してくれればいつでも会えるんだよ」


と言った。


ちょっと略したけれど、これまんまじゃないか!
老紳士の中でいつまでも生き続ける奥さん。


これだけだと本当に美しい物語で終わるのだけれど、気になる断片も多いのがもう一つ面白いところ。

紅茶を飲んでるときに亡くなってしまったらしい奥さん。
ラストシーンで指輪をはめてあげるシーンと、中盤、カップを落とすときに女性の手に指輪がはまっているシーンで、結びつくのだけれど、そもそもなんで死んじゃったのか。

老紳士からは全く存在していないかのようなヤーチャイカのメンバー。
唯一カメラを向けられたときに気付いたかのような表情。
心霊写真の存在もさることながら、カメラというのは死んだあとの世と繋がることの出来る道具だと聞いたことがある。
もしかしたらヤーチャイカのメンバーもこの世にいないのでは…。

なんて結局ホラーじみた考えになってしまって、してやられた感じ。


なんにせよ、情報量のすごい多い映像であり、それすなわち何度見ても楽しいのである。
その情報量の多さゆえにちょっと謎の残る感じがまたヤーチャイカのちょっと奇妙な音楽と合致していて、見ていて非常に心地いい。
ありとあらゆる余白のおかげで、この記事を書きながら、自分の考えも二転三転するのが我ながら面白かった。



先日、たまたま佐藤監督とお会いする機会があって、このPVの話になったのだが、現場の関係上、なんと僅か4時間のスピード撮影だったらしい。
めちゃくちゃ大変だった。頑張った。と書いておいてくれと言われたので、ここに記しておく。笑

個人的に好きなところは2:49の老紳士と、最後のダンスシーン。
前者はホラー映画でよく見る気がする手法だと思うのだけれど、なんか名前でもあるのだろうか。不気味だけどなんかカッコイイ。
後者は、楽曲展開上で結構重要な後半のサビまるまるワンフレーズをダンスシーンにあててしまう大胆さにやられました。
完全に余談だけれどね。