大森靖子がどんどん大きくなっていく!


脅威のスピード感でリリースした、アルバム「絶対少女」
様々な媒体から注目され、ますます勢いを増すであろう彼女と彼女の新譜を、せっかくなのでいつもと違った書き方でレコメンドしたい。



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ついにアルバム「絶対少女」を発売した大森靖子であるけれど、それに関係した人物を挙げていけば、その規模がよく分かる。

ジャケット撮影は蜷川実花。
カーネーションの直枝政広がプロデュースの指揮をとり、レコーディング参加メンバーも豪華。
さらに先日公開されたPV「ミッドナイト清純異性交遊」には、「あまちゃん」で一躍した橋本愛、ミスiD2014グランプリ獲得の蒼波純がW主演。
監督は映画「アフロ田中」やクリープハイプのMVを手がけた松居大吾。

さらに、規模と言えば、アルバム発売に合わせて、発表されたワンマンライブの会場は恵比寿リキッドルーム。
5月、満員の渋谷クアトロも記憶に新しいまま、どんどん加速していくなぁという印象で、大森靖子という人間がこのままどこまで広く認知されていくのか、恐ろしくもあり楽しみでもあるところ。




そんな彼女のセカンドアルバム「絶対少女」。
この一枚に関してのディスクレビューはもはやあらゆる媒体から出ているだろうし、今更こんなちっぽけなブログで何が書けるのかとも思ったけど、書かずにはいられない!
というわけで、いつもと書き方を変えて、一問一答ならぬ、一曲一感で書いていこうと思う。

いつもよりややゆるめで。せっかくだから好きに書く。







① 絶対彼女
大森靖子はどっちだ。という気持ちをもって聴いた最初の一曲。
どっち。というのは、「アイドル」か「シンガーソングライター」か、だった。
前作「魔法が使えないなら死にたい」から、打ち込み主体の曲も収録されており、単なる「ギター一本のシンガーソングライター」というイメージをやすやすと塗り替えた。
だから、今作ではどう来るのか非常に気になったのだ

いきなりの打ち込みのこの曲はやはりアイドルっぽいアレンジ。
Tokyo Idol Festivalへの出演であったり、各アイドルとの共演も多い彼女は、アイドル方面からも認知されてきているが、このキュートなボイシングはアイドルっぽさ全開。


きみもかわいく生きててね

という言葉が可愛くも強く響く。わたしも可愛くあるように頑張るからという意思表示みたいで、この頑張りが彼女らしいなぁと思う。
公式HPの解説、「最大限かわいく生きていかなきゃセンス悪いと思う。」の言葉通り、頑張る姿勢に親近感を覚える。あぁ、彼女もやはり普通の女の子なのだなと。
女の子という存在、女の子であることを全肯定したこのアルバムのコンセプト通りの曲。

こんな応援歌なかったんじゃなかろうか。



② ミッドナイト清純異性交遊
ちょっとレトロでチープな打ち込みはひたすらキャッチー。
来来来チームとの共作よりもキーが下がって、アレンジもかけ離れて、もはや別の楽曲。

ツイッターにも書いたけど、サビの最後、「せっいーじゅーーん」の「せ」と「い」の間の空白がすごいアイドルっぽい。
可愛さを押し出す歌い方のレクチャーをつんく♂がしているのをテレビ番組で見たのだけれど、それを思い出した。ちょっとしたあざとさがむしろ心地いいやつだ。

サイリウムが振られるヴィジョンが明確に浮かび上がる。特に間奏後のAメロ。
BメロはPPPHでいいのかな。ぽんぽぽん、しゃんって感じで音が可愛い。

「アイドル」らしさ全開じゃないか!と思った。本人はアイドルになる気なんざさらさら無いような発言をしているが、二曲続けて打ち込みのアレンジ。


最後の最後まで道重愛に包まれた一曲。
誰にも分からない道重さゆみへの愛の隠喩がまだまだ存分に込められているのだろう。
愛の隠喩ってエロいな。



③ エンドレスダンス
声が近い!
これまでの打ち込み系から一転して、ゆるいバンドサウンドに、リラックスしたような歌声。声と耳の距離間が気持ちいい。

もう好きじゃなくなったのかな

諦めを達観したような。というか達観以前に、ただただ現状を眺めているかのような歌。
全体から漂う脱力感がいつものライブではまた聴けないところ。




④ あまい
あれ、こんないちゃいちゃした曲なのに。不穏なギターが入ってきて、ちょっと心がざわざわする。
シューゲイザーに仕立てあげられたこの楽曲からは、幸せなところで留まっておきたい気持ちのウラに、それが終わることを知っている、やだなぁみたいな気持ちだったり、幸せが一時的なものに過ぎない切なさみたいなものが漂う。
この曲、好きな歌詞がたくさんあるのだけれど、やっぱり冒頭。

いい感じのゲリラ豪雨

この情景がたまらない。
恋人と一緒に部屋でやばいねーっとか言いながらゲリラ豪雨を眺めるのも悪くない。

んでどうせすぐ飽きてセックスとかするんだろう。



⑤ over the party
きたきた。自分が勝手に思う「シンガーソングライター」な大森靖子が。
ライブと全く変わらない、弾き語りスタイルから始まったと思いきや、完璧なタイミングでノイジーなバンドサウンドとの合流。
この瞬間が最高すぎる!ぜひ生で聴きたいな。ここだけでも。
と思ったらワンマンはバンド編成だとか。夢が叶いそうです。

「アイドル」大森靖子のみを知っていた人はこの曲でなにを思うのだろう。
アコギをかき鳴らして乱れる彼女の姿が見てとれるような間奏の後、いつまでも後を引くようなエレキギター。

彼女のバンドスタイル、「大森靖子&THEピンクトカレフ」とも完全に差別化されたアレンジで、楽曲の持つ違った側面を体感する。



⑥ 少女3号

あなたがいればここは東京
悪い街でもいい

やっぱりこの歌詞が光る。
解説では、「好きな人がいるから東京にいたいみたいな馬鹿さを大事にしたい」と書いてあった。
好きな人に振り回されても、健気に着いてきちゃうみたいな、東京のスレた女性には無い純朴さ。
東京の女性はみんなスレてるみたいな見解になってしまった。誤解ですよもちろんなにをいうやら。

この辺まで聴いて思ったけれど、スネアの音もなんだか純朴な感じに聴こえる。こっちは九州男児のようなカタくもあるけど筋がしっかり通ってる感じ。程よく低いのかな。



⑦ 婦rick裸にて
可愛らしいメロディとお茶目な三拍子。茶化すようなティンパニの音。
大森靖子流に童謡がデフォルメされたみたいだ。
ファンタジーみたいな音楽にのっかる歌詞はやっぱり現実的で、このアンバランス具合が面白い。
というかこれ打楽器系含めて全部一人でやってるのか。自分でカウントして自分で叩くとか!かわゆい。
ぐらぐらする感じがおっちょこちょいな楽団って感じで、危ういけど見守りたくなる雰囲気。




⑧ PS

今日こそはという毎日を君も重ねてきたんでしょ

やっぱりこの一節。
歌詞もメロディも文句のつけようがない。

「魔法が使えないなら」
の、

狂っても狂ってもちゃんとやれる

の部分も、「KITTY'S BLUES」

ちょっと古いうたを聴いても
懐かしくならないで


の部分も、そう。
急にぐっと引き寄せられるメロディと歌詞を持ってくる瞬間がある。この感じ、例えようがなくて困ってる。ちゃんと伝わるかも自信がない。

消えそうで消えないような、すごい近い距離感で聴こえる歌は静かな場所でひっそりと自分のためだけに聴きたい。



⑨ hayatochiri
この曲はピンクトカレフでのバンド演奏がYouTubeで上がっているけど、こちらではシンプルな弾き語り中心の構成。
ピンクトカレフのアレンジから、攻撃的なイメージを持っていたのだけれど、時折重なる鍵盤やらグロッケンの音を聴いたりすると、楽曲の一側面しか聴いてなかったような気がしてきた。

夢のような、恨み節のような、高音で、

いつかざまあみろっていいたい


と歌う。これもいいアンバランスな感じがする。



⑩ W
「あなた」と「わたし」がぐるぐると回るサビ。ん、そもそもサビなのかこれ。
そもそも歌詞には「あなた」しかいない。大好きなぬいぐるみを歌ったということは、もはや彼女自身の分身のような存在でもあって、「あなた」であったり「わたし」であったりみたいなことなのだろうか。

ひらがなが多い歌詞にもうらんだり、ころしたり。物騒な言葉が並ぶ。

幸せはたぶんこれなのに
いそがしいからあとまわし

分かってるけどあとまわしにしてしまった後、ネガティブな言葉が並ぶのが、なんだかリアリティがあって、「でも○○しなきゃいけない」というような気持ちに共感させられる。



⑪ 展覧会の絵
アコギとドラムだけで歌の伴奏が続く。
合ってるような別々のようなアコギとドラムは、有刺鉄線の「こちら」と「向こう」みたい。

冒頭のハイハットのやけに細かい刻みから、有刺鉄線のトゲトゲ感、チリチリ感が匂う。

以前、高円寺の古着屋さんで大森靖子の絵を見たことがある。
人だったり物体だったり、遠目で見るとキラキラとした大きなモチーフを近づいて見てみると、ぐちゃぐちゃとした何かで構成されていて、女のコの内側ってこうなのかもしれない。とぞわぞわさせられた。
そのときの感情を呼び覚ますかのような、ちょっとSFっぽいスペーシーなエレキギターから、とにかく悶えるかのように演奏されるサックス。
これらは女子の内側だ。と勝手に思ってる。



⑫ 青い部屋
そうだった。大森靖子は元々ピアノ弾きだった。
一枚の音源に一曲はピアノ中心の楽曲が入っているが、アコギに比べると曲の印象ががらりと変わるのが面白い。
この楽曲では、皮肉混じりの歌詞と、ちょっとしたストーリー感が、ピアノによってより深刻さを増し、よりシリアスに聞こえてくる。

本人のブログで、「オナニーでいいなら青い部屋のような曲をずっとピアノで歌っていたい」と書いてあった。
それが表れたような、最後の延々と続くようなピアノソロでトリップさせられる。



⑬ あれそれ
やっぴー。
ライブをそのままパッケージングしたようなシンプルな弾き語りスタイル。でも、彼女のいいところが全部詰まっているような気がしていて、個人的にとても好きな録音。
気持ちがそのまま歌詞と一緒に放出される歌い方。これがこの曲は顕著。
喜怒哀楽に加えて、挑発、嘲笑、愛情まで、なんとも表現しがたい微妙な感情が歌詞とともに伝わってくる感じがたまらない。




⑭ 君と映画
ノイジーなバンドサウンドが多かった印象だけど、この曲はとにかく美しくまとまったアレンジ。
これを本編最後としたらなんてハッピーエンドな一曲だ!
この平和的な雰囲気を演出するのは鍵盤だ。間違いなく。

純粋に幸せそうな情景に幸せそうなアレンジがのっかるのはここにきて初めて。
いろいろあるけれど、こういう幸せな情景があるから女の子はやめられない!みたいな?
でも男に置き換えても全く同じことが言えるよね。彼女の一挙手一投足にハッピーになる瞬間。
いや、男がそれを歌ったら気持ち悪いかも知れないわ。

電車内で、眩しい夕暮れに目を細めてたらサビになって何気なく聞いていたのが引き戻される。という出来すぎた聴き方が出来たのがハイライト。
ひどく個人的な余談だ。でも曲がひときわ輝くのでおすすめ。エンディング感が半端じゃない。




⑮ I&YOU&I&YOU&I
ハロー!プロジェクトより、タンポポのカバー。
この曲を初めて聴いたのはそれこそ彼女の弾き語りからだった。タワレコでのインストアのサウンドチェックのときかな。なんだこの新曲は!と驚いた俺がバカだった。自分の無知が恥ずかしい。

カバーというのはマネでなく、全くの別物になって初めて価値のあるものだと思っているのだけれど、まさにそれを体現していた。
自分の歌声ですっかり自分のモノにしている感じがあって、楽曲自体の新たな側面を発見できるはず。
ハロヲタの人はどう聴くのだろう。


関係ないけど、スマイレージのみんな可愛いな!この曲を歌った動画を見たのだった。
これはいい罠にはまった。






何が一曲一感だ。
結局こんな感じになっちゃったけど、書いてて楽しかった。


ライブでは、「大森靖子」、「大森靖子&THEピンクトカレフ」と二足のわらじを履き、さらに最近では「大森靖子と来来来チーム」まで。そしてさらに今回の「絶対少女」のリリース。
どの体制でも方向性は確立されていて、全く被らない。これはすごいことだ。
メロディとコードとアレンジの面白さと奥深さは彼女を追っていればいやでも体感できるはず。
そういった音楽の持つ根源的な面白みを味わうことができる。




「アイドル」か「シンガーソングライター」かなんてナンセンスな聴き方をしようとしていた。
これは反省するべきだった。現に最初のほうだけしかそんなこと書いてない。

「もはや彼女はアイドルでもシンガーソングライターでもない、大森靖子は大森靖子だ。」なんて感じで安易に書いてしまいそうになって踏みとどまった。


彼女はもう既存のアーティストやジャンルに当てはまらない、新たな道を歩み始めていると思う。
つまり「○○っぽさ」が無くなっている。椎名林檎や戸川純を引き合いに出されることも少なくなっているのでは。
それは同時に自身のスタイル「大森靖子っぽさ」を確立しつつあるということだと思うのであるが、このオリジナリティを手に入れることすら本当は難しい。
アイドルっぽい曲を聴いても、シューゲイザーになっても、ギター一本の弾き語りでも、このアルバムからは大森靖子っぽさはブレずに表れていた。
歌だったり歌詞だったりメロディラインだったり、要因はたくさんあれど、それを全て生かしきった直枝氏のプロデュース力も注目すべき点であろう。

「大森靖子っぽさ」を手に入れても、人は彼女をサブカルだのなんだの呼ぶのだけれど、この加速度ではメインカルチャーになってしまう日も遠くないのでは。
サブカルって便利な言葉すぎてどうもアレだけど。

きゃりーぱみゅぱみゅがサブカルチャーをあそこの地位まで押し上げて、もはやきゃりーはメインカルチャーと言っても過言ではないほどになった。
同じようにサブカルだのなんだの言われ続けた大森靖子が、これからサブカルチャーという言葉をどう捻じ曲げていくか、これが彼女に期待する一つの要因である。

とかなんとか偉そうに書いてしまったけれど、純粋にこれからの大森靖子の楽曲も楽しみなだけでもあるのだった。


追記:2013年12月17日、絶対彼女MV公開!
せっかくなのでこちらにも添付させていただく。



ラストシーンのライブの後、ツイッターのTLがギターの話でもちきりだったのを覚えている。
その瞬間がこうして別の作品となって残っているというのが素敵な事実。
でも、パフォーマンスだけじゃないぞ、と精一杯音源について書かせてもらった。