今一押しのシンガーソングライター!
見田村千晴という女性。

以前「始まり」という曲についてライブ動画と一緒に書かせてもらったのだが、先月末にミニアルバムが発売され、その新譜がまたとても素敵なものだったのでレコメンドしたい。


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「ビギナーズ・ラック」という一枚。
なんとこのCDでついにメジャーデビューを果たした。おめでたい!
タワーレコード主催のオーディションをきっかけに知ってから早数年。なんだか勝手に感慨深い。
記念すべきそんなアルバムに「ビギナーズ・ラック」というタイトルを付けるあたり、謙虚さとともに、メジャーという大舞台を一歩退いて眺める冷静さも感じる。


「悲しくなることばかりだ」
という曲がPVで出てるので、ぜひこちらから。







音数が増え、スケールを広げつつも、あくまでもアコースティックギターを前面に押し出したサウンド。一人の人間が鳴らす音楽。という範囲の中でアレンジされているような気がする。
それにのっかる歌声は、力強くもあるが、しなやか。
Twitterでも呟いたのだが、このしなやかさゆえの強弱の繊細はさながらバレエダンサーの筋肉みたいな印象を受けた。絶対音感を持っているらしく、伸びのある歌にばっちり音程がついてくるのはとっても気持ちがいい。

これがアルバム二曲目。




一曲目の「ラブソング」は土俗的な打楽器の刻みがどことなく異国の民族の匂いを感じさせる一曲。

アカペラのゆったりとした歌いだしは辛辣な歌詞。


自分探しに行く前に
鏡を見ればいいだろう
情けない顔 それがあなただ


歌詞を咀嚼して聴いていると、一曲目からなんという歌いだしだと驚く。

逃げないで 愛して
あなたは美しい

でもこうやって繋がって、そう言えばラブソングという曲だったとここまで聴いてあらためて気付かされる。


多くの聴き手に対して歌っているような歌詞は、どれも最終的に励ましてくれるような、少し背中を押してくれるようなものばかり。もちろん危うげで辛辣な歌詞も含みながら。このバランスが絶妙。
それは「悲しくなることばかりだ」のPVを見れば一目瞭然だろう。


だけど人間は面白いぜ 分かり合えないから面白いぜ
(悲しくなることばかりだ)


形のないものだからこそ 信じるから強くなれる
そうやって僕らはまた歩き出せる

(明日天気になりますように)



一方で聴き手を限定したようなとてもパーソナルな歌詞もならぶ。

シンプルなメロディにゆるやかなベースと簡素な打楽器がのっかる、「秘密」という曲や、アルバム唯一の完全弾き語りで歌った「私の良いとこ」がまさにそう。


一緒に暮らそう、なんて言わないでよ
平凡な私に きっと飽きてしまうよ

(秘密)

私の良いとこ 言ってみて
眠れるまで やめないで

(私の良いとこ)

この公私の振り幅が彼女の面白いところ。


アルバムラストを飾っているのは「普通」という曲。


普通ってなんだろう?と歌うサビ。
このアルバムをここまで通して聴いていて、いやいや、十分あなたは普通な人間じゃないか!と思った。
じゃあ改めて普通ってなんなんだ?


普通の定義は色々ある。
大多数と同じであることを普通と呼んだりもするし、この「普通」という楽曲の主人公もみんなと同じになりたいけれど…を歌っているような感じがしたけど、個人的に抱いたのはまた違う印象だった。
見境なく公私の振り幅を書き連ねたこの一枚を聴いて、きっとありのままの姿でいるということが普通であることなんじゃないかと感じていたのだった。
何にも飾らず、カッコつけず、まっさらな見田村千晴がそこにはあって、それが普通という言葉と繋がった。
それを象徴するかのように、アーティスト写真やジャケットの彼女の姿は、シンプルな白シャツにジーンズ。色も極力抑えたモノクロ。


一曲目の「ラブソング」の歌詞ではないけれど、身の丈にあった生き方をしなさいと諭されたような一枚。


そうして、飾らずカッコつけず生きることが普通なんじゃないだろうか。
そしてきっとそういう生き方が出来ている人はカッコいい。現に見田村千晴は相当カッコいい。