F.A.D yokohamaにて、the chef cooks me というバンドとPHONO TONESというバンドのツーマン。
ダブルレコ発、まことにおめでたい催しだということで、行ってきました。

好き勝手に音楽の楽しめる環境がそこにあった。きっと対バンマジックのような、バンド同士の雰囲気でしか成り立たない環境だったのでは。



9月4日にASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文プロデュースでアルバム「回転体」をリリースした、the chef cooks me。
個人的には今年のベストアルバムに間違いなく入れたい一枚で、最近はこればっかり聴いている。

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オリジナルメンバーはVo/KeyとGtとDrの三人編成なのだが、「回転体」ではその基礎となるバンドサウンドに、サポートとしてベース、キーボード、ホーン隊、ストリングスに女性コーラスまで加入した大編成での制作。
今回のライブはストリングスが抜けただけの大所帯で、総勢10人がステージに上がっていた。

しんと静まった場内で、Voシモリョーの指揮に合わせたメンバー全員のアカペラコーラスから始まる。アルバムラストに位置づけられた「まちに」という曲だった。コーラスが終わると、少しユルいリズム。気楽な感じで始まる彼らのライブは、肩肘張らなくても好きに楽しんでくれと言われた感じ。

たて続けにアルバム一曲めの「流転する世界」。派手にストリングスが入る部分をギターがカバーしていて、また違った味わいを見せていた。


その後のセットリストももちろん全て「回転体」から。
キーボードの弾き語りから始まって、しっとりと歌いあげた「うつくしいひと」は、身動きせずに聴き入ってる観客の姿が多く目に入った。ホーン隊が加わった編成で明るく賑やかな楽曲が多いなか、こういうスロウな曲は一際輝く。


終盤、「song of sick」の演奏中に、ステージから降りて歌っていたvo.シモリョー。音楽への愛を綴ったこの曲を、観客に囲まれながら歌っている姿から、歌詞どおりの愛を体現しているようであった。
結局フロアで歌いきったシモリョー。鳴りやまない拍手の中、メンバー全員がフロアに降りてきて、完全生音で再び「まちに」。
観客のハンドクラップに囲まれながら演奏する彼ら。メロディは歌とサックスくらいで、あとはタンバリンなどの打楽器と合唱であった。
間奏にサックスのソロを挟んでからシモリョーは、

「(直前にソロを演奏したサックスを指して)こういう風なのだけが楽器じゃなくて、手を叩くとか声を出すとか、そういうのも楽器だと思うので、それでみんなで楽しみたいんです!よろしく!」

というようなことをさぞ楽しそうに叫んでいたのがとても印象的だった。

どの曲でも、要所要所で観客にハンドクラップや合唱を求める意味が分かったような気がする。彼らの楽曲を一緒に演奏させてもらっていたのだ。


それにしても、アルバムラストの「まちに」から始まって、一曲目の「流転する世界」、最後はまた「まちに」。
「○」に始まりも終わりもないように、どの曲から聴いたとしても「回転体」だ。という、アルバム名を表現してみせたかのようなセットリストであった。




大合唱が巻き起こったのはやっぱりこの曲。初めて聴いたときはコーラスが入った瞬間になぜか涙を流してたのを今でも覚えている。余談だけど。




PHONO TONESは今回初めまして。「LOOSE CRUISE」というアルバムを8月にリリースしていた。
PVを何曲か見てインストバンドだと知ったのだけれど、どれを聴いてもノれるようなキャッチーなメロディで構成されていて、驚いた。外れがないぞこの人たち。と驚いたのが、この日ライブに行くキッカケの一つでもある。
メンバーにはアジカンプロデュースのDr.DOWNERのギターの人が加入していたり、ドラムに至ってはアジカンのメンバー。先ほどの the chef cooks me のプロデュースの件もあり、アジカン色の強い組み合わせだったのだと改めて調べてみて思う。


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このバンドのサウンド面での大きな特徴が、メインメロディを担当しているちょっと珍しい楽器。
「ペダルスティールギター」という楽器で、琴のように寝かせたギターのようなもの。左手で弦を押さえて右手のピックのようなもので弾く楽器のようだ。
音色はクリーンなエレキギターのようで、少しだけトロピカルな感じもする。そんな音色が今回のアルバムのジャケットにぴったりだった。ビジュアルも含めて特殊で面白く、それこそT-SQUAREでウインドシンセを初めて知ったような感覚を覚えた。

キーボードの音作りもいちいち可愛い。どんなに熱くシリアスな曲調でも、含みのある音色で爽やかさと親しみやすさを演出していた。
「Saturday 少林 Fever」「石川町ファイヤー」などがまさにそれにあたるかも。





サビ(?)のキャッチーさも聴き所だけれど、随所のギターが良い味だしてる。テンションの上がるところには確実にギターが良い感じのバッキングをやってたりして。ほんと余談だけど。



「Caribean Express」ではゲストボーカルとしてキムウリョンが参加。ここではボーカリストたっての希望でタイミングを合わせて曲中にジャンプ。
わんぱくなリズムと、わんぱくなボーカル。楽しく、荒々しく、宝を狙って目をギラつかせたような、まんま海賊の舟歌のような楽曲。ステージをあちらこちらに動き回りながらマイクを握るキムウリョンの姿が、そんな自由奔放な海賊に重なった。


「演奏していると、こんなところで拍手がもらえるんだとびっくりすることもあるけれど、シェフがああいうフリーキーなライブをやってくれたおかげだと思います」
というようなMCがあったように、この日の観客は年齢層も幅広く、それぞれがそれぞれの好きな立ち位置で自由に楽しんでいるようであった。

じっくりとアルコール片手に見る人もいれば、勝手に手を挙げて、勝手に雄叫びを上げているような人もいて、どちらも許容する音楽。もっと前に来いよ!とかそういうライブアプローチもあるけれど、結局のところ本来の音楽の楽しみかたってこっちじゃないかと思う。

初めましてではあったが、思う存分楽しませてもらって、まんまとアルバムを買って帰ってきた。
実際、どちらの物販にも長い列が出来ていたのを見ても、お互いがお互いを仕立てあげた大成功のレコ発だったのでは。めでたい!

僕はまんまとどちらのバンドも追いかけることにします。余談だけれども。