花掘レという三兄弟でライブ活動を行うインストバンドがいる。
以前、ライブに行った際にこちらの記事にも書いた。

「喜劇風味音楽ライヴ」と称して行う、演劇やギミックを交えた特異なライブスタイルについて、せっかくなので友人でもあるメンバーご本人にインタビューしてきた。

吉田 能(よしだ たかし)、花掘レのメンバー、吉田三兄弟の長男にして、ピアノと作曲を担当。
音楽活動以外にも、「PLAT-formance」というコントユニットや、「ペピン結構設計」という劇団にて、役者の顔を持つ。

新宿の小汚い居酒屋にて。

吉 吉田能(ちなみに写真左)
ふ ふじーよしたか(インタビュアー)



hana






-ジャズとかタンゴというものが市民権を得たいという思い-

ふ 早速、花掘レの音楽について聞きたいんだけど、あの音楽は全員の趣味なの?






吉 基礎になってるのは俺の趣味だね。将来的にはどうなるか分からないけど、今のところ俺がある程度形を作って持っていってる。でも最近はだんだん弟二人に相談するパートも増えてきた。


ふ でも相談って感じなんだね。


吉 そうだね。モチーフはもうすでにバッチリあって、その展開をどうしようかとか、ここのニュアンスはどっちがいいのかっていうのは相談してるね。最初はほんとにもう、俺が全部指示してた。


ふ 作曲者になってたんだ?


吉 そうそう。完全に最初から最後までピアノでまず弾いてみせて。でもそこで譜面を書かないところがものぐさなんだけど。笑 
当時俺が良いと思ってたわりと狭い範囲のもので最初は始まって、それがだんだん俺の趣味も広がってきたりとか、あるいはもうその感じのは作り尽くしたから次の感じに行きたいなとかしたときに、やっぱり知識量として弟二人のほうが俺よりあるし、そこで相談して作っていったりとか。ただ基本は俺だね。それはメロディにしてもコード進行にしろ、降ってきた感じ。特に何風にしようとかはないね。


ふ あ、ないんだ!意外。

吉 自分にとっての花掘レの曲っていうのは、なんか風景を見るとかピアノをひたすらいじってるなかで、フッと降りてきたパーツに対して、ジャズとかタンゴというものが市民権を得たいって思いとか、クラシックもやってたから、あの中にあるグッとくる進行とかいうものがもっとカッコいい場に出てきてほしいとか、そういう個人的な欲求も相まって、出来たりしてる。


ふ タンゴとかジャズとか、広めていきたいというか、耳なじみをよくしていきたい?


吉 それと、こういうジャンルをこういう場で弾くってことをあり得るようにしたい。


ふ こういう場でっていうのは、例えばどんなライブハウスとかでもっていう?


吉 そうそう。なんかシャンソンとかタンゴとかをね、ライブを見に行くっていうときに、なんか青い部屋だとか、地下に降りてみたいな、ちょっとこうアングラな雰囲気ありつつみたいな、それで年季の入ったシャンソン歌手が歌ってますっていうイメージがあると思うのよ。


ふ 笑


吉 それを二十代そこそこの三兄弟がインストでやればこういう形になるっていうことをやりたい。





-「このライブは何なの?」って言われたときに、ちゃんと答えられるように-



吉 やっぱりね、つくづく思うのは名曲っていっぱいあるじゃん?あらゆるジャンルにおいて名曲はいっぱいあって、名演奏家もいっぱいいて、なんなら俺が今更音楽をやらなくたっていいっちゃいいじゃん?


ふ まぁ誰も困らないもんね。


吉 ということはやっぱり、「芸術=前衛であれ」っていうとちょっとアレだけど、なんか発明をしないといけない。


ふ 誰もやってないことを。


吉 とか、何かしら残す意味があるものを作んなきゃいけないというような使命感はある。


ふ それがやっぱり一つのライブを演劇と交えてパッケージングするスタイルに繋がるわけだね。そう聞くと腑に落ちるなぁ。

吉 例えばドームでいっぱいビジョンを使ってとかそういう形で音楽以外の見た目の要素もあるけれど、より生の、呼吸が聞こえる範囲内でできることをやりたい。


ふ それは他の二人もそういう共通意識を持ってやってるのかな?


吉 そうね、ある程度そこは共有してるし、毎回奇をてらう必要はない。けど、なにか芯になるものが毎回欲しい。
それが今まで一番良いバランスでハマったのが「トレ」っていうライブなんだけど、これは吉田家三兄弟が十個のカップ麺を作って、一個三分だから三十分待てばいい。っていう勘違いをして、その三十分間の暇つぶしっていう体のライブ。
で、弾き終わると同時にステージに小道具として置いた目覚まし時計が鳴ると。実際はSEなんだけど、お客さんは生の音だと思って、「おぉーピッタリだすげー」ってなる。シメシメなわけですよ、こっちは。笑


吉 あとは例えば「どわすれ」っていうライブがあるんだけど、あれは今までやった曲のアレンジ違いをやりたかった。じゃあ全部ど忘れしちゃってアレンジが変わっちゃったことにしようと。








吉 そんなに難しいことじゃなくてもいいんだけど、「このライブは何なの?」って言われたときに、ちゃんと答えられるように芯を持ってやってる。


ふ あぁーそれはもう今のぬるい活動をしてるようなインディーズバンドみんなに聞かせてあげたいね!笑


吉 笑

吉 沢山やればやるほど、同じ人に何回も来てもらわないといけなくなるっていうジレンマがあるじゃない?聞きに行きたいけどそんなに沢山は行けないよってのもあったりして来てもらえないとか、沢山やればやるほどお客さん減っちゃうとかいう時に、花掘レの「喜劇風味音楽ライヴ」をやる前っていうのは、そこをなんとかしようとしてどんどんネタのハードルがあがっていったりだとか、がむしゃらに新曲を作るだとか、そういうことでだんだん潰れていっちゃった。
新曲も作ろうと思えば作れるけど、弾けば弾くほど一曲の完成度が上がるわけだからさ、繰り返しライブで弾いた方が良い曲になるから、あんまり回転率を上げたくなかった。それこそネタとか演劇の部分で奇をてらいだしたら止まんなくなっちゃう。次なにしたらいいの?っていう。だから変わってなくてもいい。ただ、なんなのかっていうのが分かるように。


ふ 最初は一つのテーマありきなんだ?次こういうことしたいなぁから、セットリストなりギミックなりが決まってくるわけ?


吉 それもあるし、逆に、場があって、次ここでやるってことが決まってるってときとかもある。渋谷Last Waltzでやったときは完全に場からで。タイミング的にはただ弾くだけのライブがしたい。ただ、初めてやる小屋だったから、ちょっと変わったことをしたほうがいいんじゃないかと。


ふ ちょっとひねくれ精神があるよね。基本的に。笑


吉 そうそう。笑 そんな中ででもあまり演劇じゃなく、自然に弾きたいね。っていうときに、「音楽を吸収するケーキを焼く」と。舞台上でホントにクッキングをしちゃうっていう。笑







ふ 笑 もうアイデアが出ちゃえば面白いことになるよね。でもそれに伴って一つのライブにかかる比重っていうのはそれはそれで大きくなるね?


吉 そうだね、だから一ヶ月に三本、四本っていうライブ本数じゃない。


ふ でもそのぶんライブとしての価値は上がるよね。花掘レがやるっていう。なんか前おもしろいことやってたけどまたなんかやるんだみたいな。期待の一因になる。






-ある種映画音楽を生でやってるようなニュアンス-


ふ 花掘レのライブ宣伝とこれからの展望をぜひ。


吉 渋谷Last Waltzで7月23日、花掘レ自主企画「もとい いっとくバンドのハナホジクル」をやります。

ふ その企画名決定なんだね。笑

吉 ただひたすら弾きますってときは、「贔屓の弾き倒し」で、ツーマンライブは「~のハナホジクル」でという企画名でやろうと。「ハナホジクル」って単純に変わってるってのと、相手バンドの名前が対等に入るっていう利点があるし、「ハナホジクル」って銘打ってやってるので、相手のバンドにちょっかいを出しますっていう前提が作れる。


ふ じゃあこの前の「鬼の右腕のハナホジクル」でやったセッション大会みたいなのも、「ハナホジクル」を構成する一因としてなるわけ?


吉 イメージとしてはまずゲストバンドの人に演奏してもらう。で花掘レはそのライブを聴いて帰ってきましたみたいな。だから前回は窓のモチーフをステージに写したんだよね。
そこに、「いやーすごかったねー」とか言いながら三人が帰ってきて、そこにピンポーンとかいってさっきのゲストが来てカラむと。


ふ ホーンとのセッションは面白くなりそう!







ふ そういえば音源があんまりないじゃない?そのへんはどうなの?ライブ重視な楽曲でもあるだろうけども。


吉 録音の出きる環境は整いつつあるので、これからどんどん録っていこうかなと。あんまりデカいところを目指すイメージはあんまりないんだけどね。


ふ いやーそれは楽しみです。表現の可能性が広がってるし、まだまだどうとでもいけちゃうのはやっぱりウリだよね。


吉 そうだね。ライブとしてもそうだし、例えば花掘レで映像作品をちゃんと作って出してみたいねー。


ふ せっかくライブをパッケージングしてるんだからね!


吉 俺自身風景からインスピレーションを受けて作曲するのが多いし、花掘レ自体が演劇仕立てでストーリーに沿って進んでいくのもあって、ここまで言っていいかどうか分かんないけど、ある種映画音楽を生でやってるみたいなニュアンスがあるといいな。
一つのアルバムがあって、それが俺たちの一つの映像作品に付くBGMとして、ショートムービーごと作っちゃうみたいな。


ふ 面白そうだねそれ!


吉 そういう形で「バンドが作る映像作品」というか。PVとしてじゃなくて、映像作品として出すと。


ふ そうだよね、すでにCMとして毎回映像作品は作ってるから、出来ないことはないよね。


吉 映像作家としての悠(perc.)を見せたいっていうのもある。なんかね、またライブとは違うコンテンツを作りたいなと。


ふ そんなんやってる人達がいないからこそやってほしい!


吉 そういう意味ではある種スピード感というか今のうちにやんないとねっていうのもあるね。



インタビューは以上になります。ここまで長々読んでいただき、ありがとうございます。

そんなわけで、これからの展望に期待大です。まだまだ彼らのやりたいことは尽きないし、それは必ずこちらを楽しませてくれるモノでしょう。そんなエンタメ精神のようなものも感じられたインタビューでした。
吉田くん、ご協力ありがとうございました!



最後に花掘レ次回ライブの宣伝を。


「もとい いっとくバンドのハナホジクル」
7月23日 渋谷Last Waltz

出演
♪もとい いっとくバンド
♪花掘レ

開場 18:00 開演 19:00
全席自由 前売¥2,000 当日¥2,500(税込み ドリンク別)