力強さとユルさの共存。
そこから見えてきたような気がする、メッセージというものについて。

テツコというスリーピースガールズバンドの新しいミニアルバムをレコメンド!
表題曲のPVも見もの!


キャンディーギター



この度、1stミニアルバム「キャンディーギター」をリリースした、テツコというバンド。
京都を中心に活動するスリーピースのガールズバンドである。
以前までは彼女たちのキャッチコピーとして「スイートパンク」を謳っていたのだが、今作からがらりとイメージチェンジ。
ステージ衣装を、今まで採用していたお揃いの赤白ボーダーから、きらびやかなドレス姿へ変更。そして新たに「乙女ロック」というキャッチコピーを採用し、イメージの一新を図った彼女たち。


それでは果たして音楽は。気になったのでこのミニアルバムを買ってみた。


1曲目、いきなりの表題曲「キャンディーギター」で幕を開ける。
今までの「名曲」や「全壊」のような、力の限り弾いて叫んで、駆け抜けるような曲のイメージ(実際に演奏時間も短かったように感じる)とは明らかに異なる、切なく力強い一曲。
分かりやすく気持ちいいサビは必聴。全般的に厚みを増したコーラスが、力強さの中のユルさを醸し出している。
PVが作られているので合わせてどうぞ。





この映像は以前PVレコメンドの形でいくつか取り上げた、video:DTMの佐藤監督の作品。
視点の変化がゆったりしてるような雰囲気なのと、そこ映さなくても。というようなシュールな絵もあり、PVもなんだかユルい作り。ギターソロとキャンディーの共演が個人的に好み。
キャンディーというモチーフ、PVにもジャケットにも使われていて、可愛いアイコンのように思っていたけれど、まじまじと見るとそうでもなさそう。極彩色のグロテスクさ、奇妙さも感じられ、可愛いだけじゃない二面性みたいなものを感じられた。
二分割のPVだし。もちろんこじつけではあるけれど。


3曲目の「どこか遠い国みたいな青」にも触れておかねばならない。
今までのバンドサウンドを大きく覆す、テクノポップ風味。ちょっとレトロな香りも漂わせつつ、チープなサウンドに乗って重なるコーラスワーク(ここでも持ち味になるコーラス!)。
これは完全にテツコの新境地。
この曲に関しては元センチメンタルバスの鈴木秋則氏がトラックの制作まで携わっているので、テツコという材料を彼なりに料理した結果ということではあるのだが、この路線、なかなかアリだと思う。


もちろん今までのテツコらしさを感じさせる楽曲も健在。
これまでのパンクの精神を継ぐような「ろっこつ」や、ミドルテンポからサビで一気に開ける「黄昏」

最後の楽曲はいろんな国の言葉が入り混じる「哲学の果て」
歌詞を見ると小難しいのに、メロディはひたすらキャッチー。
他国の言語で羅列される単語から想像される、豊富な意味にうずまって、音に流されてついつい無心になってしまう。
るーせーるせるせ るーせーるせるせ
イタリア語(でいいのかな)で光を意味するluceという言葉が最後まで続き、目の前の景色をほんのちょっぴり照らしてくれるような爽快感に包まれて終わる。



「キャンディーギター」の部分でもちょっと触れたが、彼女たちの音楽の魅力は力強さとユルさの共存。これに尽きると思う。人によってはユルさを奇妙だとか異質な雰囲気のように感じて言い換えるかも知れない。

頑張れというメッセージ性の強い楽曲が急激に耳に入るようになってきて、その反動か、頑張らなくてもいいんだよという歌詞も多く見たりする。しかし、テツコの音楽はそのどちらでもないのでは。と考えた。
朝聴くとなんか元気が出るとか、夜しっとり聴くとなんか気持ちがいいとか、ただの日常を少しだけ彩ってくれるような、そんな音楽に仕上がっているようだ。


順番が前後したが、2曲目「MOODY SONG」という曲がまさにそれを物語っていた。

どこでもない世界のこと 歌おうよ
メッセージのない歌が必要


という歌詞もあるし、

I NEED A MOOD MOODだけの歌が必要

とも歌っている。



個人的に、パンクというものは明確な衝動だったりとかそこから産まれるメッセージが強く表れるジャンルのようなイメージをしていたので、乙女ロックという新たなキャッチフレーズの中で、こうした一歩引いたオトナの楽曲が聴けるのはとても面白い。
ひょっとしたらなにか彼女たちの中で心情の変化というものがあったのかも知れない。彼女たちはキャッチフレーズの作成には関わっていないらしいが、楽曲群やキャッチフレーズを通してそういう心情まで透けてみえそう。


最後に、、
ちょっぴり照らして とか 少しだけ彩って とかいう言葉を並べた。

力強すぎず、ユルすぎず。
明確なメッセージは取り払って、間接照明のようにやさしい光で明るくさせてくれる彼女たちの音楽は、きっと何かに疲れた現代の人々に優しくフィットするはず。
それはまさにMOOD、雰囲気。
メッセージの無い歌が必要。というメッセージはどうしても矛盾してしまうが、このCDを聴いたあとの「なんかすっきりした感じ」という雰囲気に包まれてから、矛盾を指摘すればよい。
そんなんどうでもいっか、となってしまえばテツコの勝ち!

結局自分は見事に負けて、これを書き始めていた。