一人の少女がクアトロを埋める。
キャパ800人のライブハウスがごったがえしていた。
ギターとキーボードだけで舞台に立つ女性を見に、たくさんの人が詰め掛けていた。
そんな魔法のような夜を粗ーい画素の写メと一緒にまとめてみました。

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開演時間は過ぎているが続々と増える観客。
赤色のカーテンに遮られたステージの前に集まる人々。

開演時間を大幅に遅らせた、19時50分ごろ、ついに真っ暗になった場内に「新宿」をサンプリングしたSEが流れる。
スタッフがカーテンを引きはがすと、キーボードとサブのギターが置かれたステージが現れ、その真ん中には大きなキティちゃんのぬいぐるみがイスに置かれていた。



SEに合わせて場内が靖子コールで盛り上がる。大森自身のアイドル好きもあって、ファンの熱量もどことなくアイドル的。その熱量の渦の中、「魔法が使えないなら死にたい」に収録されているエレクトロバージョンの「新宿」のイントロが。
CDとはまた違う環境で聴く、強化された四つ打ちのベースが非常に心地よいダンスミュージックのよう。


そんな中、大きなピンクのハットとふっくらとしたピンクのドレスに身を包んで颯爽と登場した大森。マイクを握り、楽しげに歌い始める。
実家から送ってもらっていたらしい、思い出のキティちゃんに見守られるような形で始まったが、曲間の間奏で、どことなく厳かに鎮座していたそのキティちゃんをあっさり投げ捨てていた姿が印象的。

可愛いぬいぐるみを投げ捨てる姿に、「アイドルになりたいと思ったことなんか一度もない」と書いていたワンマン直前のブログの言葉がどこか重なる。

キティちゃんの 白いところ 6Bで塗りつぶす

明るく楽しそうに「新宿」を歌い終わったあとの、ガラッと暗い雰囲気に変わった「KITTY'S BLUES」の最初の歌詞が鋭く響く。

そんな冒頭。


立て続けに数曲演奏したあと、アカペラで「さようなら」を歌い上げる。ライブの最後に演奏されることの多いこの曲がまだ始まって間もないワンマンの序盤で披露された。
一度舞台袖へ戻り、軽装になって出てきた彼女。「改めましてこんばんはー!大森靖子です!」一言挨拶をして、ギターを担ぐ。愛媛から母親を読んでいるというMCをしたあとに、「あれそれ」
ライブハウスにママは呼ばない というような歌詞があったかと思うが、母親はどんな気持ちであの曲達を聴いたのだろう。


新曲「over the party」は、「音楽を捨てよ、そして音楽へ」に通ずるラップ調の歌詞にメロディアスなサビを持つ。

over the party おばあさん
進化する豚

それぞれ同じメロディでこんな歌詞が歌われていた。美しく儚いメロディによって、トゲを持った言葉が余計に刺さる。


MCというMCはほとんどなく、曲間でチューニングをさっと済まし、矢継ぎ早に演奏していったような気がする。
前回のタワレコインストアの記事では一曲でも多く歌っていたいような印象を受けたが、それとは別に彼女の世界感を維持するのにも、効果的なスピード感であったと思う。
おかげで緊張感を保ったまま、本編最後まで実にあっと言う間だった。
興奮した観客の姿が見られたのは、それこそ最初くらいで、あとはすっかり彼女の世界観に呑まれているようで、ステージに一人で立つ彼女の全てを見逃すまいと、見つめると睨むの中間で視線を飛ばしていた。

静かな場内にアコースティックギターと歌は孤独に響き、

壊れた股ぐら赤い血晴れている

「私の好きな街の歌です」と言って始めた「高円寺」で本編終了。
ぎりぎりまで拍手が鳴らない。大森が頭をぺこりと下げるまで、観客は魅入られていたと思う。

アンコール。
ファンの有志が用意し、入場時観客に配られていたピンクのサイリウムが次々に灯る。ファンからの粋なサプライズ演出。
満員となった渋谷クアトロの大きなホールがピンク色に染まっていくなか、靖子コールふたたび。この場面だけ見るとやっぱりアイドルのようだ。
舞台袖から出てきて、初めてその光景を目の当たりにする大森。アンコールとサプライズに答えて、涙ぐみながらも気丈に歌ったのは「PINK」

激情派と呼ばれる所以にもなった一曲を、少しぐずぐずさせながら歌う彼女。
定まったテンポも特に無いようなこの曲に、ふらふらとサイリウムが揺れる。ファンの温かさと大森のこれまでの軌跡とが入り混じった状態に涙ぐむ観客も多かったように思える。

全ての人に 全ての愛に 全ての音楽に 全ての芸術に ありがとうって言いたい

ひとつひとつの言葉を噛み締めるように、「PINK」を含む三曲を歌いきった彼女。


大きなステージに、たった一人で立つことに決めた彼女。それを見に、クアトロを満員にした観客。
魔法が使えないなら死にたいツアーは、彼女と観客が一体になって、起こした魔法であった。クアトロの集客と、ピンクに染まった光景が何よりもの証拠であろう。


pks















そしてその後、新宿motionにてアフターパーティと称したライブが朝まで行われた。
大森靖子も自身のバンド形態「THEピンクトカレフ」で出演し、新曲「over the party」を含む(!)八曲を演奏した。
新曲についてバンドメンバーに話を聞いたところ、大森がこの日にバンドでやりたかったと言い、練習もそんなに出来ないまま、ほとんどぶっつけの状態で挑んでいたらしい。
そんなことも感じさせない、メンバーのポテンシャル。と同時にまだまだバンド形態でも化ける可能性のある新曲の楽しみが増した。


afp















ほのかに窓の外が明かるんできた4時40分過ぎ、大森靖子が歌う。
「魔法が使えないなら」の歌詞、 

音楽の魔法を 手に入れた西の魔女4:44 つまらん夜はもうやめた

に合わせて4:44に目掛けてこの曲を弾き語り。
そして最後にもう一曲、「パーティドレス」

パーティが始まるよ あの夜を越えて 私きれいかしら


アフターパーティーの幕開け、乾杯の挨拶で大森が「もっといろんなところに行きますんで、ついてきて下さい!」と話していた。
満員御礼で終わったワンマンが終わったあと、続けざまにバンドでの演奏を披露したアフターパーティー。次の段階に即移行し、前進し続ける彼女。
それを示すように、どんどんとライブスケジュールが更新されているのを見て、ワンマンもひとつの節目に過ぎなかったのだと感じた。

「将来は紅白に出たいです」とインタビューやらなにやらで語っていたが、クアトロなんかでは収まらない、いろんなところに連れて行ってもらえることは間違いないと、確信している。
彼女のパーティはまだまだ始まったばかり。