吉祥寺で夢のようなツーマン。
こちらで取り上げさせてもらったバンドであったので、今回のライブの様子も書いてみることにする。

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4月8日、吉祥寺スターパインズカフェにて、
蒸気青月楽団Drakskipのツーマン。



Drakskip前回こちらで三枚目のアルバム「それでも舵を取る」をレコメンドさせてもらった。
京都を中心に活動していて、北欧音楽をベースに、メンバーのオリジナル作品から伝統曲のカバーまで幅広く取り上げる。



蒸気青月楽団はこのブログでは初めまして。
以前こちらでライブレポートを書かせてもらった花掘レというバンドのメンバーが参加しているところから知り、すっかりファンに。
主催のGt.和田の独自の世界感とインスピレーションから作曲される数々は、こちらもヨーロッパの民族音楽由来の匂いがある。


音楽性はどことなく似たところがある二組であるが、根源的な部分は全く異なっており、これがライブになるとどう響いてくるかが非常に気になったところ。




先手は蒸気青月楽団
ギター、ヴァイオリン、ウッドベースなどアコースティックな楽器が多いなか、シンセサイザーやエレキベース(ウッドベースと持ち換えていた)の姿も、さらに見たことのない楽器もいくつか。とにかく大量の機材でセッティングの段階で迫力が。

見たことのない楽器は、インド音楽にも縁のあるハルモニウム(手動オルガン)と、改良されたトルコの民族楽器、エレクトリックサズであった。
ライブ中盤、エレクトリックサズについて簡単に説明をした後、早速それを用いて即興のセッション。
サズの弦が切れてしまうハプニングもあったが、演奏しているGt.和田自身は終始楽しげで、まるで新しいおもちゃを手に入れた子どものようであった。きっと音楽とか好奇心に対して純粋な人なのであろう。

後半ではチェロもサポートで演奏に加わり、プチオーケストラのような贅沢な編成に。
ステージには総勢7人。アンサンブルを表現する瞬間の呼吸がたまらない。

変拍子をさらりと演奏する彼らはまるで異国の人々のようだった。
思えば異国という言葉がよく似合うバンド。
ここではないどこか。それでもってどこという具体的な場所も無いような異国感。

「水牛とパコダの町クルクタールへ」
という架空の町をテーマにした楽曲についてのMCで、
「この町には白い帽子を被った人たちがいて、みんなその帽子から湯気を出しているんです」
と言っていた和田に対して、
「え、それ初めて聞いたんですけど」
と答えるメンバー。笑いながらも和田の思い描く世界観の計り知れなさを感じられた。
妄想の域を超えて、もはやそこにその街の伝統すら感じる。もしかしたら架空の街もどんどん彼の頭の中でどんどん歴史を積み重ねているのかも知れない。







続いてDrakskipの登場。
蒸気青月楽団が大量の機材を持ち込んでいたのに対して、こじんまりしたドラムセットの前にマイクを三本立てたシンプルな編成。
ただ、メンバーが演奏する弦楽器はどれも全く見たことないもの。
ライブ中に楽器紹介をしてくれたのだが、12弦ギター、5弦ヴィオラに、ニッケルハルパというスウェーデンの伝統楽器。なんともマニアックな編成である。


単純にどの楽器も弦が多いため、チューニングに非常に時間がかかるのが難点か。しかし、そんな状況で鍛えられたのか、打楽器担当の渡辺のMCが非常に分かりやすく面白い。楽器紹介や曲に関するエピソード、聞き所などインストの楽曲の楽しみ方を示してくれていた。


いざ演奏が始まるとその独特な編成に違和感は無くなっていた。
ベースの代わりとなるものがいない中、低音弦を増やしているという12弦ギターの暖かく包み込むような低音が響いていたのが印象的であった。さながら広大な大地。

跳ねるように楽しげに演奏する姿もあり、ライブ感のあるバンド。特にアンコールでの「太陽を牽く馬」の盛り上がりはライブならでは。ヴィオラとフィドル(ニッケルハルパから持ち替え)の高速パッセージに、観客の手拍子も合わさって、この日最高潮の興奮で終わった。



(太陽を牽く馬は前回の記事に載せたので、今回は別の動画を。)





あらゆる出自の楽器が集まり、まさに日本でこんな音楽が鳴っていた。

冒頭で述べたように、どんな違いが見られるかと期待していたのだが、いざライブを見て違った発見があった。
演奏の趣向などバンドのベクトルこそ違えど、なんらかの伝統を尊重しつつ、さらにそれをぶち壊すような可能性を追求しているという面で全く同じエネルギーを持つ二組の姿を見ることができた。