もはや8bitピコピコサウンドはレトロではない!
昔懐かしのあの音と、ほっこりする可愛いボーカルが合わさった、2.5次元的音楽。
新たなアプローチが詰まったフリーダウンロードアルバム。

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今回取り上げるのは、

「うさぎのへいたいは待機。」
というユニットのアルバム。

変わった名前だけど、サウンドも変わっている。
ベースとなるのはファミコンでおなじみのあのピコピコ音。8bitサウンドで構成されるトラックに可愛らしい女性ボーカルが彩りを添える。

このピコピコ音で構成される音楽をチップチューンとも言うが、それに女性ボーカルが乗っかる編成は「YMCK」という三人組のユニットがすでに確立している分野ではある。
しかし、うさぎのへいたいは待機。のメンバーが「YMCKさんは大好きです」(ユーストリームだっけかな?)と言いながらそこに飛び込んでいく姿勢が気にいって、アルバムを聴いてみた。

元々は、渋谷のライブハウスでたまたま見かけたのだが、可愛らしいライブパフォーマンスと共に、スタイルは同じでありながらYMCKとは全く違うサウンドアプローチが気になって仕方がなかった。
そんな彼らの音楽がコチラ。








アルテマレコーズというネットレーベルから無料で配信されたアルバム「架空的すみやか」
最近この配信(無料が多い)を主としたネットレーベルが熱いらしいが、このアルテマレコーズもなかなか面白いラインナップ。
それにしても気に入った音楽をすぐその場でアルバムごとダウンロード出来るというのはすごい時代になったものだ。音楽を愛する人間としてコレを利用しない手はない。
ふとつまみ食いをしてみていると、ひっそりとしたエレクトロニカや賑やかめなクラブミュージックのラインナップが目立つなか、やっぱり異色の存在を放つこのアルバム。



おもちゃ箱のように次々と色んな音が入り乱れる、可愛らしい行進曲から幕を開ける。
「半社会的パレード」と題された一曲目は、歌詞の中のちょっぴりした毒もよいスパイス。


そんなに かかるなんて 知らんかっただとか
捺印した後じゃ 遅いんだ!

お酒とタバコは二十歳からにしておくと 他の危険も離れるよ



歌詞の雰囲気の違いもあるけれど、サウンド面に関しては音数がとにかく多いのがYMCKと決定的に違う部分であると思う。
フレーズの合間を彩るようなSE的使い方で、スキの無いどっちゃどちゃの賑やかさを演出しているのは個性の一つ。

YMCKはどちらかというとスウィングジャズの要素が強く、構成もはっきりしていて、音を変えてさも色んな楽器が登場しているようなソロ回しを演奏したりしているが、うさぎのへいたいは待機。はポップという枠組みの中で色んなアプローチに挑戦しているようで、先人達とはまた違ったチップチューンの可能性を匂わせる。



二曲目「点と点をわるつ」でもそこかしこに色んな音が混在している。
もちろんSE的なものだけでなく、全体的に音が厚くボリューミー。これも個性の一つか。
シューゲイザーに似たノイズ感のようにも聴こえるところもあったり、決してすっきりしているわけではないんだけど、そのサウンドに女性ボーカルが映える。


順番が前後してしまうが、四曲目の「みなぞこ」はそのノイズ感とハーモニーの合間でゆらぐように歌われる、不思議なサウンドスケープ感が魅力。ドリーミーとも言うべきか。
二部構成のように一転して軽快なメロディになったかと思ったら、また元のひっそりした雰囲気に戻っていく様が鮮やか。


肝心のメロディもよいのです。
三曲目「ぶるー」はしっとりバラード。壮大なサウンドに反比例するように切なげに歌われるメロディ。
最後の曲である五曲目、「KisU」はキャッチーなビート感に分かりやすいメロディが乗っかる様は、さながら今のJ-Popシーンに一番近い曲であるように聴こえた。アルバム版と↑のYouTubeのサウンドクラウド版と異なるバージョンなので、聞き比べも面白い。



ファミコンからのゲーム音源は限られた容量の限られた音数で、やりくりされて生み出されてきたものであったが、そういった制限の無い現在において、改めて可能性が見直されてチップチューンが取り上げられるのは至極当然な流れであるだろう。
もはやレトロミュージックなどではなく、新しい楽器、演奏形態の一つなのでは。


うさぎのへいたいは待機。のこのアルバムにも、そうした可能性がたくさん詰まっており、チップチューンとインディーズシーンをひっくるめて新しい流れを起こしてくれることを楽しみにしている。

ライブではさらにVJも入るらしく、たまたま自分の見たライブでは見ることができず、残念。
きっと相性がよいことだろう。この不思議な世界を映像で咀嚼してくれると、また違った魅力が感じられるはず。
また今度見に行きたいと思う。

そしてなによりもこのアルバム、フリーでダウンロード出来るのだ。
無料であることを繰り返してしまったが、気軽にぜひ全曲聴いてみてほしい。