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必要最低限なサウンドと歌詞のゆるゆる感の異常なミスマッチ。
次やったら殴る…!けど殴れないやつの生き様。
いるよね、こういう人。と思うとともに、自分もこういう人であったと気付かされてしまった。


トリプルファイヤー
というかっちょいい名前のバンドのかっちょいい名前のアルバム。


リフ一発勝負で繰り広げられる、シンプルなサウンド。
言うなればタイト。でもある意味すっからかんでもあるようなそんな音に乗っかって、どうにもうだつの上がらないような男がなにかを叫ぶ。
リズムにはまってるんだかはまってないんだか、メロディとして成り立っているんだかどうだか。そんなふらふらしたようなボーカルがまた衝撃的。


草食系男子という言葉が頭を過ぎった。
恋愛に対して使われていた本来の意味から離れて、性格がどこか奥手な男子を形容するのに便利な言葉になっているが彼らの音楽にそんなニュアンスを感じられた。
言いたいことはあるけれど、うまく言えずに心の中にしまっちゃう。でも言いたかった気持ちは確固としてあるがゆえの悶々とした気持ち。





アルバムにも収録されている、「次やったら殴る」という曲のライブ動画。


何度も馬鹿にされて、コケにされて、それでもへらへらしてしまっている主人公。
許せるラインは超えてしまっているけれども許してしまっている現状を打破するために、固く誓った「次やったら殴る」
しかも「今回は本当に殴る」まできた。

重ね重ね繰り広げられるリフもぶつけようのない苛立ちに拍車をかける。
頑張れ、やっちまえと応援してしまう気持ちが蓄積されていくなか、最後には「今回は特別にやめとくけど 次やったら殴る」


挑戦する前にいろいろ言い訳をつけてやりたがらないようやつがグループに一人はいたはず。
そんなやつの気持ちを音楽で代弁している姿。こういうやついたいたと思い出してしまう。
どう転んでも情けないやつであることには変わりないが、音楽を通して清々しく開き直っているし、それが一つのスタイルになってしまっているのが何だかニクい。

そして、一方で共感してしまっている自分もいた。分かる分かる。自分はこんなもんじゃないんだって思いながら、結局平凡かそれ以下の日常を送ってしまう。
そんなやつらへの応援歌にも聞こえる。俺もこんなんだけど、音楽やってるよ。というメッセージ。馴れ合いに近いけど、そういうキズを舐め合う仲間もいてくれると嬉しいものだ。


実はこの前初めて彼らのライブを見た。
「次やったら殴る」では観客から「殴れー!」とコールがかかったり、歓声のなか情けない曲達を披露しているのを見て、いつの間にか彼らを応援してしまっている自分がいた。


「おばあちゃん」
という曲の中の一節。


俺の個性を生かせる受け皿が社会に用意されていない
おばあちゃん これからも迷惑かけるかもしれないけど
俺を否定しないでくれ



彼の個性を生かせる受け皿、確かに用意はされていないけれども、音楽を通じて作り上げつつあるんじゃないかなぁとふと思った。
ネガティブなベクトルからの創造力、彼らには有り余るほどみなぎっているのではないだろうか。
それはもうかっちょいい受け皿が出来そう。