時には紡ぐように、時には叩きつけるように歌われる詩の中に、不思議な世界とちょっぴりの不気味さ。
さながら幻想小説のよう。


パンパンの塔というバンド。
2010年に東京で結成され、2011年にはロッキング・オン主催のコンテストで優勝を果たし、ジャパン・カウントダウンに出演。
アコースティックギター、エレキベース、ドラムという三人のシンプルな構成ゆえに、独特な詩の世界観、ナチュラルなメロディが光る。

パンパンの塔名義の音源はまだ無いらしく、今回は三曲詰まっているジャパン・カウントダウンのライブ動画。





深い呼吸から文字通りスパっと始まる一曲目 「空色」。
このバンドの音楽の特徴でもある、早口で歌われる歌詞にいきなり巻き込まれる。
怒涛のように流れてくる言葉を頭で処理しようとしていると、とぅとぅるるるるとぅるるるる
ふと聴こえてくるメロディがいやにキャッチー。
このバンドの魅力に襲われたのはこの瞬間と言っても過言ではない。
緩急自在、無音。音の間の美しさを感じさせるのは、ベースとドラムの一体感で成せる業なのだろう。


二曲目「まんまるお月様」。
こういうバンドありそう!っていうような青春ポップス。の中にも、なにかを含ませる歌詞。

まんまるお月様と熱で溶けた氷たちのダイイングメッセージ
瞬間が循環 瞬間が循環 瞬間が循環して、
僕は変わってくみたい

ボーカルまめはまんまるお月様に何を見たのだろう。


三曲目、「骨」。
今まで展開してきた雰囲気から一変して、何が起こるか分からないダークなコード感。
やはり早口であるが、伝えることに重きを置いていないようなそっけなさ。
ほとんどメロディの無いポエトリーリーディング調の曲である。

平坦に繰り広げられる弾き語りから、プラスかマイナスか?じわじわと力が溜まっていき、ベースとドラムを伴いプラスマイナスどちらにも針が振り切れたりする。
マイナス方向が爆発ならば、プラス方向は昇華とするほうがいいかも知れない。
よもや観客を置いてけぼりにさせかねない一方的な展開から、突然聴こえてくるプラス方向への昇華は本当に美しい。
意味深なバンド名がサビとなって出てくる部分には不思議な心地よさがあった。

最後にこの曲をもってきたのはなかなか挑戦的ではあったが、演奏終了後の独特の後味から、このステージにかける彼らの自信を感じた。



三曲それぞれカラーや展開が全く違っているのも、やはり実力のうちか。パンパンの塔という世界観がみっちり詰まったライブであった。
きっとまだまだ新たな世界観を構築しているに違いないが、12月にミニアルバムの発売が決定したようで、まずはその音源を楽しみにしたい。